ビジネス特集

デジタル庁 期待される民間の力

デジタル政策の司令塔となるデジタル庁が発足しました。
行政手続きのオンライン化など、国や地方自治体のデジタル化を加速させることが狙いですが、デジタル改革が進むかどうかは民間の力も大きなカギとなりそうです。
(経済部記者 永田真澄 / 猪俣英俊 / 加藤誠)

なぜデジタル庁?

なぜデジタル庁ができたのか?
きっかけは、新型コロナウイルスをめぐる対応でした。
新型コロナの給付金の申請手続きなどを巡って、デジタル化の遅れによる弊害が浮き彫りになったのです。

各省庁や自治体が、システムを別々に構築し、縦割りとなっているケースが多いことが背景にあります。

日本のデジタル化 待ったなし!

行政手続きのオンライン化や専門人材の配置といった状況から、各国の電子化の進捗を調べた国連の「電子政府ランキング」によると、日本の順位は14位。
日本のデジタル化は世界でも遅れをとっているのが現状です。
こうした状況を抜本的に変え、縦割りを打破しようと作られたのがデジタル庁です。

国や自治体のデジタル情勢に詳しい専門家は、日本のデジタル化は待ったなしの状況になっていると指摘しています。
日本総合研究所 野村敦子主任研究員
野村 主任研究員
「電子政府をやると言い始めたのは20年前でしたが、紙の書類で処理するのが当たり前で、手続きを根本から変える必要がありました。デジタル化は、効果がすぐに現れないと考えられていたため、あまり進みませんでした。この20年間を取り戻すために、民間の力をうまく活用しながら、ものすごいスピード感で取り組む必要があります」

デジタル化 暮らしが変わる?

600人体制でスタートしたデジタル庁。専門性の高いIT人材を確保するため、職員の3分の1にあたるおよそ200人を、IT企業など民間から登用しました。
民間の力も活用してバラバラだったシステムの仕様を標準化し、クラウド上で運用できる仕組みに作り変えることで、国と自治体の連携をスムーズにしシステムの維持管理費用を抑える計画です。
各市町村の負担が減り、税金や介護保険などの手続きでデジタル化が進めば、私たちが紙で申請していた児童手当や介護関連の申請もスマホからできるようになるといいます。
マイナンバーも活用し、銀行の口座情報などと連携させ給付金の支払いを迅速に行うことや、運転免許証との一体化を進め、マイナンバーカードでさまざまな手続きが行える社会を目指しています。

自治体のデジタル化 企業の支援も

私たちが住む自治体は、本当にデジタル化されるのでしょうか。
小規模な自治体では人材も乏しいことから、どう進めればいいのか分からないという声もあがっています。こうした声に応えようと取り組む企業があります。
大手複合機メーカーのコニカミノルタは、デジタルに関する先進的なノウハウを自治体どうしが共有できるシステムを開発しました。

自治体の行政手続きをおよそ4800通りに分類し、例えばある手続きをスマホによるオンライン申請ができるように変えたい場合、ほかの自治体がどのような手順で導入したのかを参考にできます。

この会社では、NECやソフトバンクなどと連携し、自治体のデジタル化を支援したいとしています。
コニカミノルタ 自治体DX推進部 別府幹雄部長
別府部長
「このシステムを通じて、自治体が抱えるデジタル化の課題なども発信していきたいです。住民サービスを向上させるため、スピード感を持って取り組んでいきます」

公共データ開放で新ビジネス

今後デジタル化が進めば、企業側にとってもビジネスの可能性が広がりそうです。期待されるのが、国や地方自治体の情報が使いやすいデータの形で公開されることです。
例えば、国土交通省ではモデル事業として、立体地図データを一般に公開しています。
これまで、役所内にとどまっていた地図データを、オープンデータにすることで、まちづくりのほか、アプリの開発など新たなビジネスに役立ててもらおうというのです。
ドローンの開発を手がける東京のベンチャー企業「A.L.I.Technologies」では、公開されている地図データを使って、都心などでドローンを使った物流サービスを実現しようと実験しています。
地図データが公開されたおかげで、現地に実際に行かなくても、ドローンの飛行ルートを作成することができ、運行に必要なコストや時間が大幅に削減できるといいます。

現在、公開されているのは全国の56都市ですが、デジタル庁の発足で公開データがさらに増えれば全国各地でサービスを展開できると期待しています。

また、飛行中に撮影したデータを地図にフィードバックし、最新の状態にアップデートすることも検討していて、官民が一体となってデータの価値を高める取り組みが行われる可能性もあります。

こうした取り組みが進めば、ドローンが縦横無尽に飛び交い、物流の主役となるような未来が実現するかもしれません。
「A.L.I.Technologies」 片野大輔社長
片野社長
「地図データがなければ、どこを飛ばすか飛行ルートを作るため、現地での調査に膨大なコストがかかります。信頼性が高い国のデジタルデータを使うことで飛行の安全性が増し、物流などで新しい価値の提供につながる可能性が高まります」

デジタルデータで新たな価値を

国や自治体は、このほかにも避難所や防火水槽といった防災関係のデータなどもすでに公開していて、デジタル庁の発足を機に、民間企業などによるデータの有効活用がさらに進むことが期待されています。
今後、デジタル庁は、法人や土地、インフラ、交通、気象といった分野で、国などが持っているデータについて、規格やルールなどを統一し、社会の基幹となるデータベースをつくる計画です。

「21世紀の石油」とも呼ばれるデジタルデータは、競争力や価値の源泉とされ、各国がしのぎを削っています。
データの利活用をいかに進めるかが私たちの暮らしや経済の活力に直結するだけに、デジタル化は待ったなしの状況です。

ただ、個人情報の保護や、サイバーセキュリティなどに対する懸念もあります。
また、民間の力を活用することから、システムを調達する際に所属していた企業に対して便宜供与が行われないかなど、公平性や透明性の確保も課題となります。
デジタル化の遅れを挽回するために、デジタル庁にはこうした懸念に対応しつつ、司令塔役として改革を断行する強力なリーダーシップが求められると専門家は指摘しています。
日本総合研究所 野村敦子主任研究員
「日本はデジタル化が遅れていますが、逆に世界の成功事例を取り入れやすい面もあります。デジタルデータは社会課題を解決したり、新しいサービスを生み出したりする大きな可能性があります。デジタル化は一丁目一番地の重要課題で、デジタル庁には旧態依然とした規制や慣行を打破する役割が求められていると思います」
経済部記者
永田 真澄
平成24年入局
秋田局や札幌局を経て
現所属
総務省や
情報通信業界を担当
経済部記者
猪俣 英俊
平成24年入局
函館局や富山局を経て
現所属
電機メーカーを担当
経済部記者
加藤 誠
平成21年入局
帯広放送局を経て
現所属
情報通信業界を担当

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