“自由で開かれたインド太平洋 実現を” 島しょ国の国際会議

太平洋の島しょ国の国防相らによる国際会議がオンラインで行われ、岸防衛大臣は、太平洋地域は権威主義との競争など新たな挑戦に直面していると指摘し「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて各国と連携を強化する考えを示しました。

防衛省の呼びかけで初めて開催されたこの会議には、海上交通で重要な航路にある太平洋の島しょ国のパプアニューギニアやフィジー、トンガなど13か国の国防相らが出席しました。

会議の冒頭、岸防衛大臣は「太平洋地域は、新型コロナウイルスによる社会経済の影響、気候変動や自然災害の脅威、権威主義との競争など、新たな挑戦に直面している」と指摘しました。

そのうえで、海洋進出を強める中国を念頭に「私たちは、これまでになく絆を強くしていくことが求められている。太平洋島しょ国との関係強化に大きな弾みをつけ『自由で開かれたインド太平洋』の維持強化のため、積極的に貢献していく決意だ」と述べました。

会議では、自衛隊の艦艇の各国への寄港など防衛協力を推進することや、島しょ国が気候変動の影響を大きく受ける可能性があることを踏まえ、自然災害への人道支援や救援活動の対応でも連携していくことを確認しました。

専門家 “互いの課題重視した連携で 双方に利益”

太平洋の島しょ国が安全保障面で日本と連携を強化することについて、現地の情勢に詳しいオーストラリアのシンクタンク「ローウィー研究所」のジョナサン・プライク氏は「日本やアメリカ、それにオーストラリアは、太平洋地域で中国が軍事的な影響力を拡大させることを懸念している。一方、各島しょ国は、軍事的な問題よりも、漁船の違法操業や違法薬物の取り引きなどを、より深刻な安全保障上の課題としてとらえている。日本と島しょ国の戦略的な関心は異なるが、今回のような会合を通してお互いの一致点を見つけることが重要だ」と指摘しています。

太平洋の島しょ国14か国のうち、軍隊を保有しているのはパプアニューギニアとフィジー、それにトンガの3か国のみで、そのほかの国はオーストラリアやニュージーランド、それにアメリカに国土の防衛を委ねています。

一方、太平洋地域では近年、中国が巨額の支援によって影響力を強めていて、中国が複数の島しょ国で進める港湾施設や空港といったインフラ整備が軍事目的に転用されるのではないかとの懸念も出ています。

プライク氏は、島しょ国で中国の軍事施設が建設される可能性は、現時点では低いとしたうえで「島しょ国が重視する漁船の違法操業や違法薬物の取締りを日本が支援すれば、歓迎されるだろう。日本はこうした分野での連携を通して、地域で存在感を高めることで、中国に対抗することができる」と述べ、島しょ国と日本それぞれが抱える課題を重視した連携を進めることで、双方に利益をもたらすことができると分析しています。