アフガニスタンから完全撤退 アメリカは今後どうする?【解説】

アメリカ軍がアフガニスタンから完全撤退し、「アメリカ史上、最も長い戦争」と言われる軍事作戦が終了しました。しかし、武装勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタンの混乱は続いたままです。

アメリカはなぜ撤退するのでしょうか?
そして、これからアフガニスタンとどう向き合うのでしょうか?

ワシントン支局の有岡記者が解説します。

Q アメリカの軍事作戦のきっかけは何だったのでしょうか?

20年前の2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件です。

当時のブッシュ政権は国際テロ組織アルカイダを率いるオサマ・ビンラディン容疑者を事件の首謀者と断定し、ビンラディン容疑者をかくまっていたアフガニスタンのタリバン政権に身柄の引き渡しを要求しました。

これをタリバン側が拒否したためブッシュ政権は軍事作戦に踏み切り、激しい空爆などを行って政権を崩壊させたのです。

Q なぜアメリカ軍はその後もアフガニスタンに残ったのですか?

治安維持のためです。

旧タリバン政権が崩壊したあと、タリバンの一部は隣国パキスタンとの国境地帯に潜伏するなどして勢力を盛り返し、テロや襲撃を繰り返すようになりました。

アメリカ軍は現地に展開する部隊の規模を増強して、ピーク時には10万人規模の部隊が駐留していました。

その後は、2011年にビンラディン容疑者を殺害したことや、戦費の削減を求めるアメリカ議会などの声を受け、現地部隊の規模縮小を段階的に進めます。

2014年末には、アメリカ軍を中心とする国際部隊が戦闘任務を終えて大部分が撤退し、活動の重点はアフガニスタン政府軍の訓練や支援に移っていきました。

アフガニスタンを安定した国にすることが、テロ対策にもつながるという考え方があったからです。

Q 撤退を決めたのはバイデン大統領なのですか?

撤退は、前のオバマ政権、トランプ政権からの既定路線でした。

トランプ大統領は、タリバンとの間でアメリカ軍などの完全撤退を盛り込んだ和平合意に署名し、バイデン政権もこの方針を引き継いで、撤退の時期を8月末とすることを発表していました。

Q 混乱のなか、なぜ予定どおり撤退したのでしょうか?

バイデン大統領は、これ以上、軍を駐留させ続けても、アメリカにとって負担に見合うだけの利益にはならないからだと説明しています。

国際テロ組織アルカイダの打倒など、アメリカ本土へのテロの脅威を取り除くという当初の目的はすでに達成されたとしています。

その一方、アメリカ国防総省によりますと、軍事作戦を開始した2001年10月からこれまでにアフガニスタンで死亡したアメリカ兵は2461人で、2万人以上がけがをしました。

また、この20年間で2兆ドルを超える戦費が投じられてきたと推計されています。それを1日当たりに置き換えると、毎日3億ドル、日本円でおよそ330億円が使われた計算になります。

こうした中、国民の間では「戦争疲れ」が広がり、撤退の方針そのものは支持されています。存在感を増し続ける中国への対抗などにより力を注ぎたいというねらいもあります。

Q アメリカ軍の完全撤退はどんな意味がありますか?

バイデン大統領は撤退完了後の演説で「ほかの国の再建のためにアメリカが大規模な軍事作戦を行う時代の終わりでもある」と述べました。

つまり、アメリカ軍の完全撤退は、これまでのように、アメリカが多大な戦費と人員を投じて外国の国づくりに関与することはもうしないという宣言とも言えます。

Q アメリカは今後アフガニスタンには関与しないのでしょうか?

バイデン政権は、今後は外交や経済支援などの手段を通じて、混乱が続くアフガニスタンの人たちの暮らしや人権が守られるように関与は続けるとしています。

また、国外への脱出を希望しながらも現地に残されたままのアメリカ人や、通訳としてアメリカ軍に協力したアフガニスタンの人たちなどの退避の支援にも引き続き取り組むとしています。

ただ、外交の拠点だった首都カブールの大使館も一時的に閉鎖されて国外に移されました。

アフガニスタン国内に軍も外交官もいない中で、どこまで有効な対応がとれるのか、疑問視する声も上がっています。

Q 権力を掌握したタリバンとはどう向き合うのでしょうか?

バイデン政権は今後、タリバンが発足させる見通しの政権を国の正式な政府として承認するのかどうかについて、「判断を急ぐ必要はない」として態度を明らかにしていません。

タリバンは女性の人権の保護や治安対策などに取り組むと表明していますが、これについてアメリカは「重要なのはそれを実行するかどうかだ」とくぎを刺しています。

アメリカとしては、ヨーロッパ諸国など各国と足並みをそろえながら、タリバンが望んでいる国際社会からの承認を交渉のカードとして使い、アフガニスタンで実際に女性などの人権が守られ、テロ組織とのつながりを断ち、治安が守られるようにしむけていきたい考えです。

Q 過激派組織ISの地域組織への対処は?

自爆テロを受けて、アメリカ軍は報復として無人機を使って幹部2人を殺害したと発表したのに続き、爆発物を積んでいたとみられる車両も空爆したとしています。

バイデン大統領は今後も報復は続けるとしていて、厳しく対応すると強調しています。

アメリカ軍兵士が現地に駐留して地上戦を行わなくても、攻撃は可能だともしています。

ただ、車両への空爆の際には、子どもを含む民間人が巻き添えになって死亡したとみられていて、課題も残ります。

現地に混乱を残してアフガニスタンから立ち去ったアメリカに対して「アフガニスタンを見捨てた」との批判も聞かれる中、今後アメリカが信頼の回復につながるような対応をとるのかに関心が集まっています。