デジタル庁発足の背景 省庁や自治体間でデータやりとり行えず

デジタル庁が発足した背景には日本の省庁や自治体が、これまで個別に情報システムを構築してきたために、それぞれのデータのやりとりがスムーズに行えず、サービス利用者にとっても使い勝手が悪く、結果的にデジタル化が進んでいない現状があります。

世界各国の行政のデジタル化に関してOECD=経済協力開発機構が3年前に行った調査では、1年間に国の行政手続きをオンラインで行ったことがあると答えた人の割合は7.3%で、回答した30か国で最下位となっていて、利用者から見たデジタル化は世界に大きく遅れを取っています。

この背景には、日本では省庁や自治体がそれぞれ独自の情報システムを構築してきたことがあると指摘されています。

システムの構築や管理は「ベンダー」と呼ばれる、大手電機メーカーやIT企業が担ってきましたが、使用するソフトウエアからサーバーまでその組織にあった様式で作り込んできたため、その後のシステムの保守・管理もずっと同じ業者が担い続けることで他社が参入しにくくなりシステムが硬直化する「ベンダー・ロックイン」と呼ばれる状況が生じていました。

こうした中で、行政システムの使い勝手は高まらず、省庁や自治体にまたがるデータもうまく活用出来ない状況が続いていて、新型コロナウイルスで緊急の対策が必要となった去年は、国と地方自治体のシステムのフォーマットが合わないことなどから、給付金や助成金の手続きが遅れました。

また、陽性者の報告について、当初、保健所と役所でオンラインの共通フォーマットがなくファックスでやりとりしていたために感染拡大の把握が遅れました。

また、行政サービスの向上を目的に始まったマイナンバー制度も、利用できる手続きや行政サービスが限られていることなどから、カードの普及率が、交付から5年半あまりたった今月30日時点でも、37.5%にとどまるなど課題が指摘されていました。

デジタル庁のねらいは

デジタル庁は、省庁や自治体が、これまで個別に管理してきた行政データを統一的に運用する基盤を作り、国民が行政サービスを使いやすくするとともに、行政サービスの質を高め、コスト削減や迅速化も目指します。
具体的には、政府や省庁、自治体が共同で使う、「ガバメントクラウド」と呼ばれる情報システム基盤を構築し、インターネット経由でデータの保存やソフトウエアの運用を統一的に行えるようにします。

自治体などは、この「ガバメントクラウド」の上で、IT企業などが作ったアプリを使ってさまざまな行政サービスを提供します。

デジタル庁では、IT企業などがアプリを作るにあたって、住民基本台帳や、税金、介護保険など、重要な17の業務を担うのにふさわしい、標準の仕様を決めることにしています。

令和7年度までに原則として、すべての自治体に「ガバメントクラウド」を利用してもらいたいとしていて、データを一元管理することで、サイバーセキュリティー対策もより集中して、高度に行えるようになると期待されています。

また、デジタル庁が優先的に進めようとしているのが、「マイナンバー」の活用の拡大です。

これまで各省庁にまたがってきたマイナンバー業務をデジタル庁に一本化し、医療情報や、金融機関の口座情報などとの連携を図り、ワクチンの接種や、給付金の支払いなどの緊急の行政サービスをスムーズに行えるようにするほか、ふだんの行政手続きもカード1枚でスムーズにできることを目指すとしています。

新たな取り組みは、行政のデータを従来のような書面ではなく、デジタルデータとして扱うもので、業務や手続きの流れそのものを、デジタルに合ったものに変えていく発想の転換が求められます。

デジタル庁では、こうした変化を促すため、職員600人ほどのうち、およそ200人を民間から採用しました。

いっぽう、既存のシステムを作り替えることになるため、省庁などの反発も予想され、いかに強いリーダーシップで改革を進めていけるかが、問われています。

専門家「わかりやすい具体的な事例を」

デジタル政策に詳しい、野村総合研究所制度戦略研究室の梅屋真一郎室長は、「国民の視点から見たときに、どのように利便性を向上させ、効率化するかという観点で、各行政システムを一本に束ねて全体としての方向性をきちんと示すという意味でのデジタル庁の意義は大きい」と話しています。

いっぽうで、デジタル庁が行う改革を巡っては既存のシステムを運用する省庁などから、抵抗も予想されることから、改革には強いリーダーシップと、国民の後押しが必要だと指摘していて、「どのような形で行政の仕組みを変えていくのか生活を変えていくのか、大きな方向性を示して、その手段としてデジタル化があるということを国民に伝えていく必要がある。例えば、給付の手続きを便利にするとか、コロナの感染が広がってもリモートでも学校の授業を受けられるとか、分かりやすい具体的な事例でひとつひとつ丁寧に説明し、デジタル化によって、便利で安心できる社会が実現すると理解してもらい、自分たちにメリットがあると認識してもらうことが重要ではないか」と話していました。