帰還困難区域 2020年代に避難指示解除の取り組み進める方針

東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う帰還困難区域のうち、避難指示の解除の見通しが立っていない地域について、政府は、2020年代に希望する人が帰還できるよう必要な箇所を除染し、解除の取り組みを進める方針を決定しました。

政府は31日、総理大臣官邸で、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会議を開きました。

そして、東京電力福島第一原発の事故に伴う帰還困難区域のうち、避難指示の解除の見通しが立っていない地域について、2020年代に希望する人が帰還できるよう、住民の意向を個別に丁寧に把握したうえで必要な箇所を除染し、解除の取り組みを進めるとした方針を決定しました。

会議で、菅総理大臣は「東日本大震災から11年目に入り、被災地の方々のご努力により、復興は着実に進展している一方で、原子力災害からの復興・再生には、今後も中長期的な対応が必要だ」と指摘しました。

そのうえで、地元と十分に議論し、帰還に必要な生活環境の放射線量を低減するため除染を行うほか、処理水を海に放出する方針をめぐっては、丁寧な情報発信によって風評被害を未然に防止すると強調しました。

そして「福島の復興・再生に向けて、政府一体となって、必要なことはすべて実行していく。引き続き『閣僚全員が復興大臣』との認識のもと、被災地の復興に全力を尽くしていただきたい」と述べました。

平沢復興相「避難指示解除に向けた施策具体化へ全力」

平沢復興大臣は、記者会見で「復興庁としても、避難指示の解除に向けた施策の具体化に向けて、地元の意向を踏まえながら全力で取り組む。帰還の意向がない土地や家屋の扱いも引き続き重要な課題で、地元の皆さんと話し合いながら決めていきたい」と述べました。

また、東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から10年以上がたっていることについて「私個人とすれば、もうちょっと早く方向性を出せなかったかという感じはする。まずは『特定復興再生拠点区域』の除染などをずっとやっていたので、なかなか手が回らなかったということもある」と述べました。

福島県知事「重い決断を評価」

福島県の内堀知事は「2020年代において避難指示を解除し、希望者全員が帰還できる環境を整えるというのは、政府として重い決断をしたと評価している」と述べました。

そのうえで「帰還の意向の確認方法や除染範囲、帰還する意向がない住民の土地や家屋の取り扱いなどは、これからの議論として残されており、自治体の考えを丁寧に聞きながら、今後の具体的な方向性を示し、住民に対しても複数回、丁寧に意向を聞きながら、対応を考えてほしい」と求めました。

福島 浪江町長「住民の意見や要望に寄り添って対応を」

帰還困難区域を抱える自治体のうち南相馬市と飯舘村を除く5町村でつくる協議会の会長も務めている、福島県浪江町の吉田数博町長は「帰りたいと思う住民がひとり残らず帰還できるよう取り組むという方針が示されたのは、一歩前進したと受け止めている。今回の方針は面として除染・解除を行ってきたこれまでの方式と異なるため、地元自治体とより丁寧な調整が必要となる。今後は住民の意見や要望に寄り添いながら対応してほしい」というコメントを出しました。

福島 双葉町長「避難指示解除に向けた歩み前進と期待」

福島県双葉町の伊澤史朗町長は「この方針により、町内の帰還困難区域全域の避難指示解除に向けた歩みが大きく前進することになると期待している。町としては、全域の解除を国に引き続き求めていくが、希望するすべての住民の帰還が早期に実施されるよう、除染の手法や範囲、スケジュールなどについて協議に応じていく」というコメントを発表しました。

福島 大熊町長 “希望する住民の帰還 取り組み加速を”

福島県大熊町の吉田淳町長は「解除の見通しがたっていなかった、いわゆる白地地区の取り扱いについて、方向性を示していただいたことは評価したい。国においては、被害を受けた住民の意見をこれまで以上に丁寧に伺い、一人ひとりに寄り添った対応をしてほしい。そのうえで、希望する住民が速やかに帰ることができるよう、取り組みを加速していただくとともに、将来的にはすべての土地の避難指示を解除し、復興・再生を果たすことができるよう、責任を持って対応していただきたい」とするコメントを発表しました。

福島 富岡町長「一歩前進したものと捉えている」

福島県富岡町の山本育男町長は「この10年間、町内全域の避難指示の早期解除を目指し、国にさまざまな支援を求めてきた。今回の政府方針は、そのすべてを満たすものではないが、拠点区域外の対応方針が初めて示されたことは、一歩前進したものと捉えている。帰還の時期について、できるかぎり早期の実現を求めるとともに、引き続き町内全域の徹底した除染と地域住民に寄り添った対応を重ねて求めていきたい」とするコメントを発表しました。

帰還困難区域の現状

福島県では、南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、飯舘村、それに葛尾村の7市町村の一部が「帰還困難区域」に指定され、今も避難指示が続いています。

面積は合わせて337平方キロメートルに上り、このうち8%にあたる地域については「特定復興再生拠点区域」として国が除染やインフラ整備を行い、2年後までに避難指示を解除する計画です。

一方、残りの92%の地域は解除の見通しが示されず、いつしか住民たちから「白地地区」と呼ばれるようになりました。

政府は去年12月、自治体の強い意向がある場合、除染しなくても避難指示を解除できる新たな仕組みを決めましたが、そうした地域は住民が日常的な生活を営むことは想定されていませんでした。

このため「帰還困難区域」を抱える自治体のうち、南相馬市と飯舘村を除く5つの町村でつくる協議会は「除染なしでの避難指示解除はありえない」として、国に対し住民の帰還や居住を前提とする全面的な除染と避難指示の解除を求めていました。

住民への帰還意向の調査結果は

復興庁などが昨年度、大熊町と双葉町、富岡町、浪江町の住民に帰還意向などを聞いた調査では、避難指示解除の見通しが示されていなかった地域に元の自宅があった住民のうち1488世帯が回答し、
▽「戻りたい」と答えたのは200世帯で13.4%、
▽「まだ判断がつかない」が354世帯で23.8%、
▽「戻らない」が840世帯で56.5%でした。

また富岡町では、独自に設けた「戻りたいけど戻ることができない」という選択肢を選んだのは48世帯でした。