入院調整中に死亡した男性 姉が心境語る「医療にかかれたら」

新型コロナウイルスに感染し、沖縄県の自宅で入院調整中に亡くなった40代の男性の姉がNHKの取材に応じ、「きちんと医療にかかれていたら助かっていたと思います。ふびんでなりません」と心境を語りました。

取材に応じたのは、今月8日、那覇市で入院調整中に自宅で亡くなった40代の男性の姉です。

姉によりますと、男性は大阪出身で、13年前に沖縄県に移り住み、1人暮らしで那覇市内で居酒屋を営んでいました。

男性は先月27日に新型コロナの症状が出て、今月5日にPCR検査で陽性と確認されたものの、その後も沖縄県の医療体制が厳しい状態で入院ができず、治療を受けられないまま自宅で亡くなりました。

男性には糖尿病の持病があったということです。

姉が、警察から男性が亡くなったという連絡を受けたのは、自宅で見つかってから2日たった今月10日で、本人からは新型コロナに感染したことを知らされていなかったということです。

姉は「飲食店を経営していたので風評被害を恐れたのか、私に心配をかけたくなかったのか、本当のことは分かりません。ただ、誰にも言うことができず怖かっただろうな、つらかっただろうなと思います。ふびんでなりません。新型コロナに感染した人をここまで放置しておくのはありえないと思う。新型コロナの医療体制が厳しい沖縄で医療措置を一切受けられていなくても10日間は生きていたので、大阪にいれば医療を受けることができて、助かっていたのではないかと思います」と心境を語りました。

男性と最後に会ったのは亡くなった母の四十九日の法要があった、ことし6月だったということで「弟は『沖縄で商売を続けて骨を埋める』と話していました。志半ばだったと思います。いろいろなお客さんにおいしい料理を食べてもらいたかったと思うと無念です」と話しました。

そして「新型コロナに感染すると思っていない人や、他人に感染させると思っていない人もいると思う。コロナが自分の人生にも関わるということを知れば、もう少し危機感を持つことができるはずだ」と話し、同じようなことを繰り返して欲しくないと訴えました。

ひとり部屋のベッドで

男性と長年、親交のあった友人によりますと、1人暮らしだった男性は、ベッドに横になった状態で息を引き取り、そのかたわらには手付かずのコンビニ弁当が残されていたということです。

数日後、男性の部屋に入ると、備え付けの冷蔵庫にはサラダとお茶だけが入っていたということです。

友人の比嘉篤志さんは「たぶん、買い物に行けなかったのではないかと思います。電話をくれたら家も近いので何か準備をして持って行くこともできたので、切ないです」と話していました。

来月5日には部屋を引き払う予定だということで、遺品などは大阪に暮らす男性の姉に送ったということです。

亡くなった男性は新型コロナを発症後、友人に連絡することはなかったということで、比嘉さんは「優しい人だったので、みんなに気をつかって連絡しなかったのかもしれない。コロナにかかったと人に言えない現実もあると思うので、緊急の連絡先を登録するとか誰かが見守ってあげる形をとらないと同じようなことが起きるのではないか。1回きりの命なので救える環境を作ってほしい」と話していました。

亡くなった経緯と再発防止策

男性は、先月27日に新型コロナウイルスの症状が出て、8日後の今月4日にPCR検査を受け、翌5日、那覇市内の医療機関で陽性と確認されました。

病院から報告を受け、県は6日に男性の感染を把握したということです。

その日のうちに保健所が入院を調整するため、男性に連絡しましたがつながらず、翌7日に改めて電話をかけると今度は留守番電話になったということです。

8日になって、保健所の職員が自宅を訪ねましたが反応がなかったため、警察などと再び訪問し、自宅で亡くなっているのが確認されたということです。

通常、感染者と丸1日連絡が取れない場合、保健所の職員が訪問することになっていますが、沖縄県でこれまでにない規模で感染が拡大するなか、保健所の業務がひっ迫していたため、男性の自宅訪問は2日後になったということです。

連絡が取れないまま男性が亡くなった今回の事態を受けて、沖縄県は、すべての感染者を対象に本人以外の緊急連絡先を確認する再発防止策をとっています。