千葉県 東京パラリンピックの「学校連携観戦」中止を決定

千葉県は、現在実施している東京パラリンピックの「学校連携観戦」チケットによる子どもたちの観戦について、一転して中止する方針を決めました。
熊谷知事は「直前のキャンセルが多く、多くの保護者が安心して送り出せない以上、実施にこだわるべきではない」と説明しています。

東京パラリンピックの会場で、児童・生徒などが競技を見る「学校連携観戦」について、千葉県からは大会開催前の時点で県内の小・中・高など合わせて198校の2万3100人余りが参加する見通しで、千葉県の熊谷知事は「共生社会に理解を深めるうえで、教育的意義が大きく感染防止対策を徹底したうえで行うべきだ」という考えを示していました。

しかし、直前に辞退するケースが相次いだうえ、29日千葉市の市立中学校で今月25日に観戦の引率をしていた教諭2人が検査で陽性となったことが発表されたことを受けて、30日、一転して子どもたちの観戦を中止する方針を決めました。

8月31日以降は、千葉市立の学校と県立学校のみが観戦する予定だったため、千葉市の神谷俊一市長と協議のうえ、中止を決定したということです。

熊谷知事は臨時の記者会見を開き、「2人の教諭は、競技の観戦前に感染していたと考えられるが、直前のキャンセルが多い。保護者や先生方に安心していただくために、事前のPCR検査などのさらなる策を講じることが必要だと考えるが負担が大きく、あす以降すべて中止することとした」と述べました。

そのうえで、「保護者の理解が大前提で多くの保護者が安心して送り出せない以上、実施にこだわるべきではない。楽しみにしていた子どもや保護者には申し訳ない」と述べました。

県庁に196件の苦情

千葉県によりますと、千葉市の「幕張メッセ」で開催される4競技の「学校連携観戦」に参加する見通しだったのは、大会開催前の時点の取りまとめで8月25日から9月3日までの10日間で、県内の小中学校や高校など合わせて198校の2万3100人余りです。

しかし、直前のキャンセルが相次ぎ、29日までの6日間では予定を大幅に下回る3292人の観戦にとどまっていました。

31日からの4日間では、大会開催前の時点で千葉市立の小中学校と高校、特別支援学校の1万5800人と千葉県立の高校の760人の合わせておよそ1万6560人が参加する予定だったということです。

千葉県によりますと、8月6日から30日の夕方までに千葉県庁にも「感染者が増えているのに実施するべきではない」とか、「感染した場合、誰が責任をとるのか」、「テレビで見られるのになぜ行くのか」などといった意見が、電話や郵便などで合わせて196件寄せられたということです。

千葉県は緊急事態宣言の期間中、教育活動に参加する児童生徒、引率者などのPCR検査の費用を全額負担して支援する事業を行っていますが、「学校連携観戦」に参加した学校のうち利用したのは県内の小学校1校のみでした。

千葉市も「観戦中止」を発表

千葉市の神谷俊一市長は、千葉市の市立中学校で「学校連携観戦」を引率した教諭2人が新型コロナウイルスに感染したことを受けて、31日以降子どもたちの観戦を中止すると発表しました。

千葉市によりますと、市役所には大会開始以降子どもたちのパラリンピック観戦について、不安を訴える保護者からの電話などがおよそ400件寄せられているということです。

そして今回、市立中学校で引率をした教諭2人の感染が判明したことを受けて、31日以降予定していた子どもたちの観戦を中止することを決めました。

神谷市長は「学校連携観戦に関しては、アスリートの姿を直接目にできて、教育的効果が高いうえ、部活動などのほかの学校活動と比べて感染リスクは高くなく、実施可能だと判断していて、こうした安全性に対しての考えは変わりません。ただ、保護者の不安を完全に払拭(ふっしょく)することは難しく不安の中で子どもたちに観戦させることになると考えた。会場での観戦を楽しみにしていた児童生徒や不安を感じさせてしまった保護者におわびしたい」と話していました。

さらに、夏休み明けの教育活動についても保護者から不安が寄せられているとして、市立学校のすべての教職員にPCR検査を行う意向を明らかにしました。