愛知 常滑 野外音楽フェスで“密” “酒提供” 批判相次ぐ

29日、愛知県の常滑市で開かれた野外の音楽フェスティバルで、新型コロナウイルスへの感染防止対策が徹底されず酒の提供も行われたとして、愛知県や地元の常滑市は、主催者に抗議することにしています。

29日、常滑市の中部空港の空港島内にある県の施設で、野外の音楽フェスティバル「NAMIMONOGATARI2021」が開かれました。

主催者側のホームページにあるガイドラインでは、会場内でマスクを着用し、グループ間で1メートルのソーシャルディスタンスを保つこと、さらに公演中は歓声や声援で大声を出さないことなどが掲げられていました。
しかし、出演したアーティストや会場にいた人がSNSに投稿した動画には多くの若者が密集し、マスクを外したり歓声をあげたりしている様子が映っています。
これについて、会場を管理する愛知県の大村知事は、感染防止対策を徹底することや酒の提供の自粛などを求めていたと説明しています。

そのうえで大村知事は「事前に強く要請したことが守られなかったのは極めて遺憾だ。主催者などには厳重に抗議の意を表したい」と述べ、今後、このイベントの主催者に県の施設などを利用させない考えを示すとともに、抗議文を出すことを明らかにしました。

抗議文では、今回の件を県民や医療従事者などの努力を踏みにじるものだとし、事前の県との協議内容や緊急事態宣言のもとで、順守すべき感染防止対策をないがしろにしたことに厳重に抗議するとしています。

そして、管理・運営体制が十分だったかなど事実確認を早急に行ったうえで、その内容を県に報告するとともに、広く公表するよう求めています。
また、地元の常滑市は「感染症対策に協力している市民はじめ、必死に医療現場で対応している医療従事者の努力を踏みにじるものであり、極めて遺憾である」とする抗議文を30日中に主催者に送付する予定です。

主催した会社「中止や延期 物理的にできなかった 深く反省」

「NAMIMONOGATARI2021」を主催した名古屋市の会社が、30日夜、イベントのホームページでコメントを発表しました。

この中では「イベントの開催にあたり、地域の皆様や音楽業界やイベント業界を支えてきていただいた皆様などに多大なご迷惑、ご心配をお掛けしてしまったことを深くおわび申し上げます」としています。

また、酒類を提供したことについては開催10日前に常滑市がまん延防止等重点措置の地域に指定され、自粛を求められたものの、キャンセルできない分を販売することを県に報告し、1人2杯までに制限して販売することにしたということです。

その後、イベント開催の前日に愛知県が緊急事態宣言の地域に指定されましたが、「すべての準備が終わっていたタイミングで、イベントを中止や延期にすることが物理的にできなかった」と説明しています。

さらに、会場では大型画面などを通じて感染防止対策を呼びかけ、司会者からも「マスクをしないとイベントが中断になる」などと促したとしたうえで、「結果として大規模な音楽イベントの感染予防対策に対する認識の甘さが全国の皆様に多大なご心配をかけてしまったことを心より深く反省いたしております」としています。

出演アーティストのZeebraさん陳謝

「NAMIMONOGATARI2021」に出演していたアーティストのZeebraさんは本人のツイッターで今回の出演について陳謝しました。

この中で「県のルールにのっとっていると聞いたので出演しましたが、開けてみたら会場は危険な状況でした。マスクの着用や消毒の徹底など自分からも注意を促しましたがそもそも出演するべきではなかったという意見ももっともだと思います」とコメントしています。

そのうえで「国民の皆さんに多大なご心配とご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした」と陳謝しました。

SNS上にも批判の声が相次ぐ

SNS上にも批判の声が相次いでいます。
ツイッター上に投稿されたコメントです。

「どうせ、またアメリカの動画だろうと思ったら、日本語が流れてきた絶望感」。

ツイッターにはこのほか、「子どもたちは運動会も修学旅行も我慢しているのに。こんなの子どもにみせられない」とか、「この1年半、アーティスト、音楽ファンがどんな思いで苦渋の決断をし、心を砕いてきたか。その思いを踏みにじる行為。本当に音楽を愛する人たちの行動とは思えない」といった批判の声が相次いでいます。

医療従事者とみられる人からも、「医療現場も大多数の国民も精いっぱいできることをやって、我慢に我慢を重ねている中、それを『今まで自粛していたから』のひと言で台なしにされては、たまったものではない」と怒りがにじむような投稿がされています。

一方、会場にいたという人の中には、「コロナ対策をちゃんとしていると思っていたから参加したけど、行ってみたらほとんどマスクもしていないし、ソーシャルディスタンスのソの字もない状況だった」とか、「アーティストも声出すように促しているし、来なきゃよかったな」などと、イベントに参加したことを後悔する気持ちを投稿している人もいました。