人工呼吸器使用 全国900人超 第3、4波のピーク大きく上回る

新型コロナウイルスへの感染が確認された人のうち重症者は2075人になり、18日連続で過去最多となりました。こうした中、人工呼吸器を使った治療を受けている患者の数は全国で900人を超え、第3波や第4波のピークを大きく上回っていることがわかりました。

厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスへの感染が確認された人で人工呼吸器や集中治療室などで治療を受けるなどしている重症者は30日時点で2075人となり、29日から5人増加して18日連続で過去最多となりました。

人工呼吸器使用の患者907人 過去最多

こうした中、人工呼吸器を使った治療を受けている患者の数が全国で900人を超え、過去最多となっていることが分かりました。
新型コロナウイルスの重症患者の治療についてまとめている「日本ECMOnet」によりますと、人工呼吸器を使った治療を受けている人は、人工心肺装置=ECMOでの治療を受けている人も含めて29日時点で全国で907人に上っています。
これは
▽感染の第4波のピークだったことし5月14日の764人や
▽第3波のことし1月20日の630人を
大きく上回り、過去最多になっています。
特に首都圏で増加が顕著で、いずれも第3波のピーク時と比べて29日の時点で
▽東京都は246人で2.3倍
▽神奈川県は78人で1.8倍
▽千葉県は74人で1.4倍
▽埼玉県は50人で1.4倍となっています。
「日本ECMOnet」理事で都立多摩総合医療センターで重症患者の治療に当たっている清水敬樹 救命救急センター長は「東京都内では専門外の医師が人工呼吸器を扱わざるをえない状況になっている。高い救命率を維持するためにはこれ以上、感染者を増やさないことが大事だ」と話しています。

ECMO・人工呼吸器治療に詳しい医師 都内病院に派遣

人工呼吸器が必要な患者が増えているのを受けて「日本ECMOnet」では、厚生労働省の委託を受けて人工心肺装置=ECMOや人工呼吸器を使った治療に詳しい医師を重症患者が入院している東京都内の病院に派遣して支援しています。

30日は東京都内でECMOを使った治療の拠点となっている東京 府中市の「都立多摩総合医療センター」に全国各地から派遣された医師8人が集まり、支援に入る病院の患者の状態などを聞いたあとそれぞれの病院に向かいました。
支援を受ける病院の1つ、東京 文京区の都立駒込病院には旭川医科大学の高氏修平 医師ら3人が派遣されました。

この病院では現在、主に中等症の患者およそ150人が入院していて、今回の感染拡大では中等症の患者が重症化して人工呼吸器での治療が必要になるケースが相次いでいるということです。

病院では、これまでの感染拡大では人工呼吸器が必要な患者は1人から2人ほどでしたが、今回の感染拡大では10人前後と増えているため別の診療科からの医師や看護師の応援を増やして対応しています。

また、高度な治療ができる治療室がいっぱいになっているため、重症化したうちの3人については中等症患者用の病棟で治療せざるを得ず、人工呼吸器を持ち込んで対応しているということです。

支援に入った高氏医師たちは実際に人工呼吸器を装着する手順や、データを見ながら患者の呼吸状態を確かめる手順などを一つ一つ伝えていました。
都立駒込病院で新型コロナの患者の診療を統括している今村顕史 感染症科部長は「人工呼吸器の管理は十分な経験がないと判断できないケースも多く、専門の医師たちが応援に入ってくれたことで治療の質が上がっている。研修会も開いてくれて学ぶことができているので大変ありがたい」と話していました。
高氏医師は「重症患者が急増し助かるはずだった患者が助けられないような状況に陥りつつあると思うが、われわれの活動で治療の質を落とさず救命率を維持できることにつながればうれしい」と話していました。

「日本ECMOnet」は重症者に対する治療の支援を今後2週間程度続けることにしています。

症状重い中等症患者も多い 病床約2倍に増やす病院も

一方、第5波では酸素の投与が必要な症状の重い中等症の患者も多くなる中、都内の大学病院では病床を大幅に増やし対応しようとしています。
東京 文京区の東京医科歯科大学附属病院では29日時点で
▽重症の12床
▽中等症の25床は
ほぼ満床の状態となっています。
このため外科などの患者が入院する一般の病床をコロナ患者用に作り替え、中等症の病床を新たに24床増やし合わせて49床としました。第5波では重症と同じように酸素の投与が必要な症状の重い中等症の患者も多いことから、それに対応できるよう病床を増やしました。

こうした患者の中には重症化するスピードが早いケースも相次いでいて、院内にある
▽人工心肺装置=ECMO10台
▽人工呼吸器80台を
活用しながら、重症と中等症の病床を行き来してもらうなど弾力的に運用することで、重症と中等症の間で揺れ動く患者の状態の急変に対応しようとしています。

一方、コロナ患者の病床を増やすには一般診療を制限せざるをえない現状もあります。各診療科ごとに多いところで3割ほど入院患者を減らし、スタッフをコロナ病床に振り分けているということです。
植木穣 病院長補佐は「中等症、重症の行き場を失ったコロナ患者が都内にあふれている状況になっている。さらに重症、中等症では分けられない中間くらいの患者もかなり出てきている。重症、中等症の行き来をしないといけない方々をわれわれが受けることで重症系の治療にシフトし、対応していきたい」と話しています。

早期退院促す取り組み“病床の回転あげるのも大事”

また、東京医科歯科大学附属病院ではコロナの治療とともに衰えた筋力を回復させ早期退院を促す取り組みを進めています。

病院で力を入れているのがリハビリテーションです。リハビリ専門のスタッフが防護服を着て病棟に入り、酸素の投与を行っている患者に対してベッドに寝たまま自転車をこぐ運動をするなどリハビリを行っていました。
リハビリテーション部の酒井朋子医師は「患者が社会復帰するために必要なことでもありますが、現状ではなるべく早く病床をあけて新しい患者を受け入れるという任務もありますので、リハビリテーションで患者に回復してもらい病床の回転をあげるというのも大事な仕事の1つになっている」と話しています。