異物混入問題 見合わせワクチン接種の2人死亡 因果関係は不明

今月モデルナの新型コロナウイルスワクチンの一部に異物が混入した問題で、厚生労働省は接種を見合わせたワクチンの接種を今月、受けていた男性2人が死亡していたと公表しました。死因や接種との因果関係は不明で厚生労働省が詳しく調べています。

今月中旬以降、全国の複数の接種会場で、モデルナのワクチンの未開封の容器の一部に粒子状の金属とみられる異物が混入しているのが見つかり、厚生労働省は混入した可能性が否定できない163万回分のワクチンの接種を見合わせています。

厚生労働省は28日、使用を見合わせたワクチンをすでに接種されていた30代の男性2人が死亡していたと公表しました。

このうち、38歳の男性は今月15日に、30歳の男性は今月22日に接種を受け、いずれも3日後に死亡しているのが見つかりました。

2人に基礎疾患はなく、死因は分かっていないということで、現時点で接種との因果関係は不明だとしています。

2人が接種を受けたのは、同じ時期に同じ工場で製造されたために使用を見合わせているロット番号のワクチンで、実際に異物の混入が確認されたロット番号ではないということです。

厚生労働省は死因などを詳しく調べていて、専門家でつくる部会で接種との因果関係を評価することにしています。

厚労省「透明性確保の観点で公表」

厚生労働省は「異物の混入が原因で死亡したことを現時点で示す情報はない。接種後の死亡が偶発的だった可能性もあるが、透明性を確保する観点で公表した。今後、死因などについて情報を収集したうえで専門家による評価をしていきたい」としています。

専門家「慎重に評価行う必要」

厚生労働省の専門家部会で部会長をつとめる東京医科歯科大学の森尾友宏教授は、「死亡例が偶然に生じた可能性もあり、現時点では接種との関係は不明だ。今後、症例に関する情報や、混入した異物の性質、身体への影響の可能性などについて情報を収集したうえで慎重に評価を行う必要がある」と話しています。

また、調査会長を務める埼玉県立小児医療センターの岡明病院長は、「因果関係は現時点では不明だが、今後、十分な情報を集めたあとに因果関係を専門家で検討する必要がある。異物の混入が確認されたロットについても副反応が疑われる症状の報告を慎重に見守る必要がある」と話しています。

モデルナ「透明性もって誠実に調査行う」

アメリカの製薬会社モデルナは、日本での流通を手がける武田薬品工業と連名でコメントを発表しました。

この中で「お二人がお亡くなりになった事実を非常に深刻に受け止め、ご冥福を心よりお祈りするとともに、ご遺族に心よりお悔やみを申し上げます。今後、接種との因果関係について、厚生労働省と協力しながら緊急性かつ透明性をもって誠実に調査を行っていきます」としています。

また、27日の時点で、2人が接種を受けたものと同じロット番号のワクチンに粒子状の異物が混入したという報告はないとしたうえで「分析のため検査機関に検体を送付しており、検査結果の速報は来週前半に判明する予定です。結果がわかりしだい、速やかな情報の開示に努めます」などとコメントしています。

武田薬品工業「厚労省と協力しながら調査行う」

国内でモデルナのワクチンの供給を担う武田薬品工業は「モデルナ社とともに厚生労働省と協力しながら調査を行ってまいります」とコメントしています。

また、ワクチンの異物混入については「現在、モデルナ社による調査が継続中であり、結果がわかり次第、両社は速やかな情報の開示に努めます」としていて、その結果の速報は来週前半に判明する予定だとしています。

今回の件以前に 接種後死亡が確認された人は

厚生労働省によりますと、2人のほかに、新型コロナウイルスのワクチン接種後に死亡が確認された人は、今月8日の時点で1002人でした。

▽ファイザーが100万人あたり19.6人
▽モデルナが100万人あたり1.2人で、
「接種と因果関係がある」と結論づけられた人はいなかったということです。

厚生労働省は、現時点で接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとして引き続き接種を進めることにしています。