コロナ発生源 動物感染か研究所流出か 結論に至らず 米報告書

アメリカの情報機関は、新型コロナウイルスの発生源をめぐり、動物からの感染や中国・武漢のウイルス研究所から流出したとする仮説について妥当性があるという見方で一致したものの、裏付けに十分な情報がなく結論には至らなかったと明らかにしました。これを受けてバイデン大統領は「中国が情報を隠し続けている」と批判しました。

アメリカの情報機関は27日、バイデン大統領が指示していた新型コロナウイルスの発生源をめぐる再調査の報告書の要旨を公表しました。

それによりますと、ウイルスの発生源については▽感染した動物との接触によるものか▽中国・武漢のウイルス研究所から流出したという2つの仮説について、妥当性があるという見方で一致しているということです。

このうち動物からヒトに感染した可能性が高いとみている機関は5つあり、研究所から流出した可能性が高いとみている機関も1つあるということですが、いずれも裏付けに十分な情報がなく、結論には至らなかったとしています。

一方で報告書は、ウイルスは生物兵器として開発されたものではないと判断したとしていて、遺伝子操作が行われた可能性も低いとしています。

そのうえで「結論を出すためには中国の協力が必要だ」と指摘しています。

報告書を受けてバイデン大統領は声明を出し「中国は透明性を求める声を拒否し情報を隠し続けている」と批判したうえで「十分に情報を提供するよう各国とともに圧力をかけていく」と強調しました。

中国 アメリカ施設の調査要求

中国政府は、アメリカ政府や議会が武漢の研究所からの流出の可能性を指摘することに強く反発してきました。

スイスのジュネーブにある中国政府代表部の陳旭大使は24日、アメリカ政府が報告書を公表するのに先立ち、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長に文書を送りました。

中国国営の新華社通信によりますと文書ではアメリカのメリーランド州にある陸軍の研究施設とノースカロライナ大学でもコロナウイルスに関する研究が行われていたと指摘しているということです。

そのうえで「ウイルスが武漢の研究所から流出したということが排除できないのであれば、公正・公平の原則に基づいてこの2か所についても調査すべきだ」と主張しています。

中国大使館「報告書は科学性と信頼性 少しもない」

アメリカの情報機関による報告書の要旨の公表について、ワシントンにある中国大使館は28日、声明を発表し「中国に圧力をかけるためのもので、強く非難する」と反発しました。

そのうえで「報告書はアメリカの情報機関が主導してでっち上げたもので、科学性と信頼性は少しもない」として全面的に否定するなど、中国側が再調査に神経をとがらせていることをうかがわせています。

また、バイデン大統領が声明で「中国は透明性を求める声を拒否し、情報を隠し続けている」と批判したことを念頭に「WHO=世界保健機関の専門家は武漢に来て、行きたい場所に行き、会いたい人に会い、読みたい資料を読んだ」として、中国側の対応に問題はなかったと主張しています。