“本当にもうギリギリの状態” 医療従事者のメッセージ
「当庁のほぼ全救急隊が出動し、救急要請に応えられない状況と状況となっています」
新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し続けていた、8月10日。
そんな切迫した状況を伝える写真がSNSに投稿されました。
これを伝えることで、一人一人の命を守ることにつながってほしい。
医療現場からの訴えです。
(ネットワーク報道部記者 柳澤あゆみ)
新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し続けていた、8月10日。
そんな切迫した状況を伝える写真がSNSに投稿されました。
これを伝えることで、一人一人の命を守ることにつながってほしい。
医療現場からの訴えです。
(ネットワーク報道部記者 柳澤あゆみ)
「異例を超えて、もう異常事態」
投稿には、写真とともにこんなことばがつづられていました。
「長年、救急に携わってきましたが、こんなことは初めて。異例を超えて、もう異常事態としか言いようがありません」
大きな注目を集め、リツイートはこれまでに2万件近くに上っています。
「これが医療崩壊という地獄だ」
「絶望的な危機感を感じたツイート」
「あまりにも深刻で重たい事実。せめてその事実から目を背けないようにしよう」
「絶望的な危機感を感じたツイート」
「あまりにも深刻で重たい事実。せめてその事実から目を背けないようにしよう」
投稿した人に連絡を取ると、匿名を条件に取材に応じてくれました。
都内の医療機関で救急を担当する医療従事者です。
そして、撮影したのは、搬送先を探しやすくするために救急隊と病院が情報を共有する専用のシステムの画面だと教えてくれました。
長年、救急医療に携わっていますが、こうしたメッセージが送られたのは初めてだということです。
都内の医療機関で救急を担当する医療従事者です。
そして、撮影したのは、搬送先を探しやすくするために救急隊と病院が情報を共有する専用のシステムの画面だと教えてくれました。
長年、救急医療に携わっていますが、こうしたメッセージが送られたのは初めてだということです。
「今回の緊迫した文章を読んだ時は、かなり衝撃でした。それに、『状況と状況と』なんて重複した文章のまま送信するようなことは通常ありえませんから、それだけ消防庁内もパニックだったんだろうと容易に想像できました」
鳴りやまないホットライン
救急患者を受け入れる医療機関がすぐに決まらない「搬送困難」なケースは、8月15日までの1週間では全国で3361件と、総務省消防庁が調査を始めてから最も多くなりました。
投稿した日、この医療機関では救急患者を受け入れるためのホットラインが鳴りやまなかったといいます。
それなのに、10床余りあるコロナ患者の病床は満床で、受け入れたいのに受け入れることができない。
歯がゆい思いを抱えていました。
なかには、東京や埼玉の200以上の病院に断られ、救急搬送の待ち時間が10時間を超えるケースもあったといいますが、断らざるをえませんでした。
それなのに、10床余りあるコロナ患者の病床は満床で、受け入れたいのに受け入れることができない。
歯がゆい思いを抱えていました。
なかには、東京や埼玉の200以上の病院に断られ、救急搬送の待ち時間が10時間を超えるケースもあったといいますが、断らざるをえませんでした。
「当院の救急が完全に機能停止する。本当にギリギリの綱渡りの状態でした」
“命のメッセージ”
なぜ投稿したのか尋ねると返ってきたのは、次のような答えでした。
「業務上知り得た情報でもあるので、投稿すべきかどうか実はすごい葛藤がありました。撮影から数時間考えた末に投稿することを決めたんです。救急車を受け入れる側(病院)だけでなく、利用する側(一般の方々)も知るべき情報だと思いました。医療従事者として本当のリアルを伝えたいという気持ちと、公益性が高いと判断したことが投稿の最終的な決め手となりました」
「撮影した画面は、『助けてください』というメッセージのように感じました。でも、このままでは都民に伝わらない。投稿することで一人一人の命に直接関わる“命のメッセージ”だと多くの人に知ってもらいたいと思いました」
そして、反響の受け止めについてこう答えました。
「ここまで反響が大きくなるとは正直思っていませんでしたが、裏を返せば都内の救急の実情、本当のリアルを知らない人がこれだけいたということの証明だと思います」
命を救うため 頑張り続けるしかない
それからおよそ2週間。
感染拡大は止まらないまま、医療現場はさらに追い詰められているといいます。
感染拡大は止まらないまま、医療現場はさらに追い詰められているといいます。
「コロナ用ベッド満床。さらに、受け入れた患者が転院搬送できず、複数のコロナ患者をやむなく初療室奥の陰圧テントで管理中。これ以上コロナ患者を受け入れると、感染管理上の動線が確保できず通常の受入要請も断らざるを得なくなります。本当にもうギリギリの状態です」
(8月21日の投稿)
(8月21日の投稿)
それでも、医療現場は命を救うために頑張り続けるしかない。
その現実を知ってほしいといいます。
その現実を知ってほしいといいます。
「搬送先が何時間も決まらないのは、もはや『救急』とは呼べません。でもそれが全国的に起き始めているようですし、この1年半、政府が何をしていたのかと思うと残念でなりません」
「もはや『コロナ災害』と呼ぶべき国家の非常事態。医療従事者はとっくに限界を超えてます。救急隊の皆さんも保健所の皆さんも、みんな歯を食いしばって耐えてます。終わりの見えない戦いで、私たち医療従事者は最後の砦。耐え抜いてみせます」
「もはや『コロナ災害』と呼ぶべき国家の非常事態。医療従事者はとっくに限界を超えてます。救急隊の皆さんも保健所の皆さんも、みんな歯を食いしばって耐えてます。終わりの見えない戦いで、私たち医療従事者は最後の砦。耐え抜いてみせます」
ゴールは必ずあると信じて
そして、最後にメッセージを寄せてくれました。
「コロナとの戦いを終わらせるためには、皆さんの協力が不可欠です。自分だけでなく、大切な家族や友人、恋人を守っていく。ワクチンを打つ人が増えていけば、職場や地域社会、最終的には私たち医療者や救急隊、保健所を助けることにつながります。もちろんワクチンだけでなく、感染対策も重要です。RPGで例えるなら、自分の防御力を高めて敵の攻撃をかわすアイテムがワクチンであり、フィールド上で敵と遭遇しにくくする技が手洗い、マスク、3密回避(まとめて「三種の神技」)といったところでしょうか。
今は日本中がコロナの『被災地』です。復興のため、日常を取り戻すため、医療者としてこの戦いに負けるわけにはいきません。私たちが望んでいるのは、何度も出る緊急事態宣言ではなく、ただ一度の『勝利宣言』です。終わりの見えない戦いですが、ゴールは必ずあると信じています」
今は日本中がコロナの『被災地』です。復興のため、日常を取り戻すため、医療者としてこの戦いに負けるわけにはいきません。私たちが望んでいるのは、何度も出る緊急事態宣言ではなく、ただ一度の『勝利宣言』です。終わりの見えない戦いですが、ゴールは必ずあると信じています」