待機児童 “過去最少” 感染不安からの利用控え影響か 厚労省

保育所などの空きを待つ「待機児童」はことし4月の時点で全国で5600人余りと去年より6000人以上減少しこれまでで最も少なくなったことがわかりました。
厚生労働省は保育の受け皿の拡大や新型コロナウイルスの感染への不安から保育所の利用を控える保護者が相次ぎ大幅に減少したとみています。

厚生労働省によりますと保育所などの空きを待つ「待機児童」はことし4月の時点で全国で5634人でした。

去年4月と比べて6805人減少し、これまでで最も少なくなりました。

待機児童が前の年より減ったのは4年連続で減少幅は今の方法で調査を始めた2002年以降で最も大きくなっています。

都道府県別でみると待機児童が最も多かったのは東京で969人(前年比-1374人)、次いで兵庫で769人(前年比-759人)、福岡で625人(前年比-564人)で、36の都道府県で前の年より減少しました。

一方、待機児童がいなかったのは青森、山形、栃木、新潟、富山、石川、福井、山梨、岐阜、鳥取、長崎、大分の12の県でした。

厚生労働省は「待機児童を減らすための保育の受け皿の拡大や新型コロナウイルスの感染への不安から保育所の利用を控える保護者が相次ぎ大幅な減少になった」とみています。

一方で、厚生労働省によりますと25歳から44歳までの女性の就業率はことしは上昇する傾向となっていて保育所などの利用の申し込みは再び増加する可能性があるということです。

厚生労働省は「待機児童の状況などを確認しながら必要な保育の受け皿の確保が進むように自治体の支援を行っていきたい」としています。

減少理由は?厚労省がアンケート調査

待機児童の数が大幅に減少した理由について、厚生労働省は新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているとみています。

厚生労働省は待機児童の数が去年4月と比べて10人以上減った全国180の自治体に、待機児童が減少した理由についてアンケート調査を行いました。

それによりますと待機児童が減少した理由を複数回答で聞いたところ「保育所の新設や利用定員の拡大」が87.6%と最も多く次いで「申込者数が想定ほど増えなかったや、想定以上に減少した」が43.3%となっています。

保育所の利用の申し込みが想定を下回ったと回答した自治体にその理由を聞いたところ「保育所での感染を懸念して利用を控える保護者の増加」が74%「育児休業を予定より長く取得する保護者の増加」が57.1%などとなりました。

厚生労働省によりますとことし4月の時点で保育所の利用を申し込んだ人は全国で282万8166人と去年4月より1万4042人減って集計を始めた2009年以降初めて減少しました。

0歳児から2歳児までの申し込みが減っていてとくに0歳児は159万384人と7346人少なくなり大幅に減少しています。

厚生労働省は新型コロナウイルスの感染への不安から保育所の利用を控えた保護者が多かったとしています。

加えて保育所を利用できるように競争率が低い低年齢のうちに利用の申し込みをする保護者がこれまでは多かったが待機児童の減少傾向をうけてそうした申し込みが減ってきたことが背景にあるのではないかとみています。

専門家「感染不安で保育控え広がる 質に注目して丁寧な整備を」

待機児童の現状に詳しい保護者などでつくる「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「受け皿の整備もあったと思うが感染拡大が続く中、小さな子どもを保育所に預けることに不安を感じて育児休業を延長したり仕事をやめたりした人も少なくないと思う。そうした結果、待機児童の大幅な減少となったのではないか」と話しています。

そのうえで「新型コロナウイルスの影響で子どもの面倒をみるために仕事を辞めた人は働くことができる状況になればすぐにでも働きたいという人が多い。そのニーズにすぐに対応できるようにしておくことが必要だ。保護者は安心して子どもを預けられる施設を利用したいと考えているので、もっと質に注目して丁寧な整備をしてもらいたい」と話していました。

また厚生労働省はこれまで公表を行ってきた10月時点の待機児童の数についてことしから公表しない方針を明らかにしました。

これについては「家庭や親の状況で年度の途中であっても保育が必要な状況は出てくる。いつでも安心して保育所を利用できるということが子育てにとってはいちばん大事なことなので、10月時点の待機児童が見えなくなるということは本当に困っている人の存在が見えにくくなってしまう」と懸念を示しました。