パラリンピック 14歳山田美幸 自分と向き合いつかんだ銀メダル

東京パラリンピック、日本に最初のメダルとなる銀メダルをもたらしたのは14歳の中学3年生でした。競泳女子100メートル背泳ぎの運動機能障害のクラスで銀メダルを獲得した山田美幸選手。決勝のあと見せた笑顔の奥には、目標を達成するため自分自身と貪欲に向き合う芯の強さがあります。

転機は“クラス分け”

生まれた時から両腕がなく、両足にも障害がある山田選手。取材ではいつも独特の表現で素直な思いを話してくれます。

「わかめのように泳ぐ。私はどちらかというと昆布派なんですけどね」
「メダルをとったらたぶん飛び跳ねますね。頭のネジが1、2本は外れちゃうと思います」
競技を離れれば明るくユーモラスな山田選手ですが、去年大きな転機がありました。障害の程度を決めるクラス分けで、より障害が重いクラスになったのです。

それまでは自由形を専門としていましたが、新たなクラスにはパラリンピックの種目が背泳ぎしかないため、本格的に背泳ぎの練習を始めました。

それからわずかの時間で急成長。ことし3月には100メートル背泳ぎで、自身の記録を8秒余り縮めて日本記録を更新。この時のタイムは2019年の世界選手権で銀メダルに相当するタイムをマークで、東京パラリンピックのメダル候補に躍り出ました。

「無欲は怠惰の基である」

なぜそこまで急成長することができたのか。
座右の銘としていることばに、ヒントがありました。
そのことばは「無欲は怠惰の基である」という渋沢栄一のことばです。

「無欲というのは本気でやっていないからだと思う。私だったら『メダルを取りたい』という思いがあって、何事も本気でやって自分の願いに素直に向かっていきたい」

そう話した時の表情は、14歳という年齢を感じさせないアスリートの顔でした。

中学3年生で高校受験を控える中、勉強との両立をしながら毎日1時間半の練習を繰り返してきたのです。

笑顔で楽しんだ決勝

迎えた東京パラリンピック。
午前の予選は「緊張しすぎて水の中で震えてしまった」と話しながらも、全体3位のタイムで決勝進出を決めました。

そして「開き直って笑顔で楽しもう」と臨んだ決勝。
強化してきたスタートで一気にトップに立ち、優勝したシンガポールの選手とトップを争いました。
後半、差をつけられたものの2位を譲らず、自己ベストに0秒80に迫る好タイムで銀メダルを獲得しました。

「泳いでいるとどうしても高ぶってしまうが、冷静に、冷静に、今まででいちばん頭を使った」

笑顔があふれているのがマスク越しでもわかりました。

山田選手は今大会、本命の50メートル背泳ぎを残しています。

「次は自己ベストを更新して、ちょっと恥ずかしいけど、金メダルをとりたいと思っています」