医療危機 危険な状態の患者の受け入れ先見つからず 自宅で処置

新型コロナウイルスの感染拡大で医療体制が危機的な状況となる中、先週から今週にかけて、患者が危険な状態でも受け入れ先が見つからず、自宅で処置せざるをえない事態が相次いでいます。

東京 大田区の「ひなた在宅クリニック山王」は、保健所の依頼を受けて、新型コロナウイルスに感染した「中等症2」の患者を中心に往診を行っています。

「中等症2」は血液中の酸素の値が93%以下で自力での呼吸が難しく酸素投与が必要で、入院はもちろん高度な医療を行える施設への転院を検討するとされている状態ですが、23日時点でおよそ30人の中等症2の患者を在宅で診ているということです。

このクリニックでは先週から今週にかけて患者が危険な状態でも受け入れ先が見つからず、自宅で処置せざるをえない事態が相次いでいます。

先週の19日、感染して自宅療養を続けていた50代の男性が何らかの原因で重いアレルギー反応のアナフィラキシーショックを起こしましたが、救急隊が3時間かけて50か所の病院をあたっても搬送先が見つかりませんでした。

22日は基礎疾患のない30代の男性が、酸素吸入を行っても血液中の酸素の値が80%台にとどまりました。

救急隊が60か所以上病院をあたりましたが見つからず、ようやく23日になって保健所の調整で入院できたということです。
「ひなた在宅クリニック山王」の田代和馬院長は「ここ数日で深刻な症状の患者が急激に増えていて、感染拡大前であれば直ちに病院に搬送していた患者が入院できなくなっています。在宅では十分な治療ができず、私自身も悔しさと戸惑いを感じています。われわれの熱意だけではもうどうにもならなくなってきています。なんとかしてこの感染拡大を止めなければならないし、積極的な施策を求めたい」と話していました。

“アナフィラキシーショック”でも 搬送先見つからず

1人暮らしで自宅療養をしている50代の男性は、重いアレルギー反応のアナフィラキシーショックを起こしましたが、搬送先が見つからず、今も自宅療養を余儀なくされています。

今月16日に感染が確認された男性は、19日に息苦しさを感じるとして自分で119番通報しました。

救急隊が駆けつけたとき血液中の酸素の値は80%まで下がっていたということです。

救急隊が酸素を投与しながら受け入れ先を探しましたが、見つからなかったことから、保健所の依頼で医師が往診しました。

医師によりますと、男性の背中や足などにじんましんが見られ、血圧も低下していたということで、何らかの原因でアレルギーの重い症状、アナフィラキシーショックを起こしていた可能性が高いということです。

救急隊は3時間にわたって50か所の病院にあたり続けましたが、受け入れ先は見つかりませんでした。

医師がアレルギー反応を抑える薬を投与して、男性の症状は少し落ち着きましたが、本来であれば高度な医療が受けられる病院に入院するのが望ましい状況だということです。

男性は23日の時点でも入院先が決まっておらず、酸素濃縮装置2台で酸素吸入しながら自宅療養を続けていますが、血液中の酸素の値は92%にとどまっているということです。

血液中の酸素の値が90%切っていても

血液中の酸素の値が90%を切っていても搬送先が見つからないケースもありました。

30代の1人暮らしの男性は今月11日に新型コロナウイルスへの感染がわかり、自宅療養を続けていましたが、22日午後、息苦しさを感じて119番通報しました。

救急隊が駆けつけたときには血液中の酸素の値が90%を切っていたということで、搬送先を探しましたが見つからず、午後6時ごろに保健所の要請でクリニックの医師が駆けつけました。

医師によりますと、救急隊は60か所以上の病院にあたったと話していたということです。

医師は酸素濃縮装置で最大量の酸素を投与しましたが、男性の酸素の値は83%と非常に低い状態でした。

男性に基礎疾患はないということです。

その後、保健所の調整で入院先が決まり、保健所が男性に連絡しましたが、電話に出なかったことから、23日午前0時半ごろ医師は再び男性の部屋を訪れました。

インターフォンを10回以上鳴らして、ようやく男性はオートロックを開けたということです。

医師に対して男性は「寝ていたのかもしれない」と話したということですが、血液中の酸素の値は82%だったことから意識がもうろうとしていた可能性もあるとみています。

男性は23日未明、高度な医療が受けられる病院に搬送されたということです。