アフガン退避で自衛隊機を派遣 邦人や大使館外国人スタッフも

アフガニスタン情勢が悪化する中、現地に残る日本人に加え、大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを退避させるため、岸防衛大臣は自衛隊機による輸送を命令しました。

自衛隊法に基づく在外邦人などの輸送の任務で外国人を退避させるのはこれが初めてです。

武装勢力タリバンが権力を掌握し、アフガニスタン情勢が悪化する中、現地に残る国際機関の日本人職員、それに大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを国外に退避させるため、岸防衛大臣は23日、自衛隊機による輸送を命令しました。

派遣されるのは、鳥取県の航空自衛隊美保基地に所属するC2輸送機1機と愛知県の航空自衛隊小牧基地に所属するC130輸送機2機です。

このうちC2輸送機は、埼玉県の入間基地で現地に向かう陸上自衛隊の隊員を乗せたあと、給油などのため美保基地に向かい、午後7時半前に到着しました。

準備が整いしだい、周辺国に向けて出発するということです。

一方、C130輸送機2機は24日に現地に向けて出発する予定で、首都 カブールの空港と周辺国との間を往復し、退避を希望する人の輸送を行うということです。

治安情勢が悪化した海外での自衛隊法に基づく在外邦人などの輸送の任務は、これまでに4回行われていますが、外国人を退避させるのはこれが初めてです。

また、防衛省によりますと、今回は、航空自衛隊と陸上自衛隊から合わせて数百人規模の隊員が派遣され、自衛隊法に基づき、自身や他の隊員、輸送対象者などの身を守る場合に限って、武器の使用が認められています。

携行する武器の種類については、明らかにできないとしています。

自衛隊は、早ければ今週後半にも退避を希望する人の輸送を始めたいとしています。

加藤官房長官「人員輸送を妨害する動きは見られていない」

自衛隊機の派遣について加藤官房長官は、アフガニスタン情勢が流動化している中、出国を希望する人たちの安全な退避が国際社会にとって喫緊の課題になっていると指摘しました。

そして、加藤官房長官は「現在、カブール空港では、アメリカ軍が空港内と周辺の安全確保や、周辺区域での航空管制を行い、航空機の離着陸が正常に行われている。タリバンについても、カブール空港からの人員輸送を妨害する動きは見られていない」と述べ、現地での輸送の安全は確保されているという認識を示しました。

また「政府としては、運用上も国際法上も問題が生じないよう、関係しうる当事者の同意を得るための意思疎通を図っている。ただ、緊急的措置として人道上の必要性から安全が確保されている状況で自国民などの退避のために輸送を行うものであり、仮に明確な同意がとれていないとしても、国際法上、問題ないと考えている」と述べました。

一方、加藤官房長官は、輸送を行う対象について「今回は、邦人、大使館の職員などをはじめとした関係者や家族の輸送を念頭に進めている。実際、そうした皆さんが、どこまで空港に結集して来られるのか、不確実なところがある。また、場合によっては、他の国から、いろいろな意味での要請が来る場合もあるかと思う」と述べました。

また、輸送する人数については「機微な話なので、現時点ではコメントは差し控えたい」と述べるにとどめました。

海外での自衛隊による輸送 これまでに4回

今回のように、治安情勢が悪化した海外で日本人の安全を確保するため、自衛隊法に基づき、自衛隊が輸送を行ったケースは、これまでに4回あります。

初めて実施されたのは平成16年で、自衛隊が派遣されていたイラクで情勢が悪化したことから、現地で取材活動にあたっていた日本の報道関係者10人を航空自衛隊の輸送機で隣国のクウェートまで退避させました。

また、平成25年にアルジェリアで起きた人質事件の際には、政府専用機を派遣し、無事だった7人と、亡くなった9人を日本に運びました。

平成28年には7月に2度行われ、バングラデシュの首都、ダッカで起きた襲撃事件では、死亡した7人と家族を日本まで運んだほか、その翌週には、政府軍と反政府勢力の間の武力衝突で治安が悪化した南スーダンから、航空自衛隊の輸送機を使って大使館職員4人を退避させました。

“日本人の安全確保” 5年前の安保関連法施行で拡大

海外で自衛隊が行うことのできる日本人の安全を確保する任務は、5年前の安全保障関連法の施行によって拡大されましたが、今回の派遣は従来の自衛隊法に基づくもので新たに可能になった任務は行われません。

従来は、自衛隊法に基づいて部隊が行えるのは、国外退避のための日本人の「輸送」とされていました。

しかし、平成25年にアルジェリアで起きた日本人の人質事件を受けて、空港や港に航空機や艦艇を派遣して輸送する従来の任務に加え、車両による陸上での輸送ができるようになりました。

さらに、安全保障関連法の施行によって、輸送だけでなく、日本人の救出や警護も可能になりました。

これに伴って自衛隊の武器使用が認められる範囲も拡大され、自分の身を守る場合だけでなく妨害行為を排除するなど、「任務遂行のための武器使用」も可能になりました。

安全保障関連法に基づく救出や警護の任務は、これまでに実施されたことはなく、今回も行われません。

C130輸送機とは

C130輸送機は、愛知県にある航空自衛隊の小牧基地に16機配備されています。

全長はおよそ30メートル、主翼を含めた幅はおよそ40メートルで、乗員を除いて最大で92人を輸送できます。

また、5トンの人や荷物を載せた状態でおよそ4000キロ飛行する能力があるということです。

自衛隊がこれまで行ってきた国連のPKO=平和維持活動や、イラク派遣、それに国際緊急援助活動など、海外での任務にもたびたび派遣され、物資や人員の輸送にあたってきました。

また、自衛隊法に基づく海外での日本人輸送でも活用されていて、平成16年にはイラクから日本の報道関係者10人を隣国のクウェートまで退避させたほか、平成28年には、政府軍と反政府勢力の間の武力衝突で治安が悪化した南スーダンから、日本大使館の職員4人を輸送しました。

C2輸送機とは

C2輸送機は最新鋭の国産輸送機で、乗員を除いて最大で110人を輸送することができます。

現在、鳥取県にある航空自衛隊美保基地に10機、埼玉県にある航空自衛隊入間基地に1機の、合わせて11機が配備されているということです。

海外への部隊の派遣や物資の輸送といった任務に対応するため、従来の輸送機より大型化し、航続距離も長くなっていて、最大で36トンの人や荷物を載せられるほか、20トンを搭載した状態でおよそ7600キロ飛行することができます。

これまでに、UAE=アラブ首長国連邦やオーストラリアなど、海外への運航訓練を重ねてきたほか、去年6月には、海賊対策からの帰国中に不具合を起こした海上自衛隊の哨戒機の整備を支援するため、整備要員や機材をベトナムまで輸送しました。

各国の退避状況

アフガニスタンでは、各国が自国民やアフガニスタン人の協力者を航空機で退避させる作戦を続けています。

アメリカのバイデン大統領は22日の会見で、今月14日以降の1週間余りでアメリカ人のほか、軍の通訳などアフガニスタン人の協力者合わせて約2万8000人を軍用機で退避させたことを明らかにしています。

また、イギリス国防省は22日、今月13日以降、イギリス人やイギリス政府に協力したアフガニスタン人などおよそ4000人を退避させたと発表しました。

さらに、ドイツは今月16日以降、ドイツ人や地元の協力者およそ1800人を退避させたほか、フランスも16日以降、フランス人と協力者合わせて500人を退避させたということです。

シンガポール 大型輸送機を派遣の意向

シンガポールのリー・シェンロン首相は23日、アフガニスタンからアメリカ人や通訳などの協力者を退避させる活動を支援するため、シンガポール空軍が保有する大型輸送機を派遣する意向を示しました。

これはリー首相が、シンガポールを訪問したアメリカのハリス副大統領との共同会見の中で明らかにしました。

これに対してハリス副大統領は「アメリカの退避活動に対するとても寛大な支援に感謝する」と述べるとともに「アメリカにとって最優先事項だ」として、引き続き退避を急ぐ考えを強調しました。