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”我が子からコロナに感染した” 母親が気付いたこと

「10代の行動力と拡散力を止められず。本当に死ぬかと思いました」

こうSNSに投稿したのは、高校生の娘から感染したという40代の母親です。
自宅療養中に高熱にうなされ続け、中等症まで症状が悪化して入院を余儀なくされました。
夏休みが明けて新学期が始まるこの時期に知ってほしい、子どもから大人に感染した家庭内感染の実情です。
(ネットワーク報道部記者 杉本宙矢 斉藤直哉 目見田健)

長女が感染 高校でも

横浜市で暮らすわが家が新型コロナウイルスに襲われたのは、先月下旬。

高校1年生の長女が「眼が痛い」と訴えたのが、始まりでした。

体温を測ると、39度の高熱。

翌日、最寄りの発熱外来で受診すると「陽性」だとわかりました。

「デルタ株」でした。

どこで感染したのか、詳しくはわかりません。

ただ、長女が通う都内の高校で感染が確認されたという連絡を受けました。

「娘が感染するなんて」

驚きと同時に、家族に感染を広げないようにしないと、という思いと不安に襲われました。
自治体から届いた食料品
インターネットで自宅療養の注意点を調べ、感染した娘と他の家族の部屋を分けることから始めました。

私たちはマンションの2階と3階部分に会社員の40代の夫と娘2人の4人で暮らしています。

まず、夫と小学6年生の次女を2階にうつしました。

長女は3階の部屋から極力出さないようにして、看病は私1人であたりました。

長女の部屋に入る時はマスクと手袋をつけて感染を広げないよう注意しました。

幸い長女は処方された解熱剤で熱が下がり、発症から3日目には症状が落ち着いたように見えました。

母親が「陽性」に

その日、恐れていたことが起きました。

濃厚接触者となった家族3人がPCR検査を受けたところ、私が「陽性」だとわかったのです。

それでも幸いだったのは、他の2人の家族が「陰性」だったことです。

溺れたような感じ 怖かった

私の陽性がわかった翌日、37度の微熱が出ましたが、まだそれほどつらいとは感じませんでした。

状況が一変したのは、発症から4日目です。

39度の高熱にうなされるようになりました。

けん怠感と頭痛に襲われ、立ち上がろうとすると、ひどいせきが続きます。

また、芳香剤などのにおいを感じなくなりました。

味覚はありましたが、甘さや塩辛さを強烈に感じるようになりました。
自治体から貸与されたパルスオキシメーターで測ると血液中の酸素の値は「中等症」の目安となる93%まで下がることもありました。
(40代の母親)
「一瞬寝たと思うとせきが止まらなくなって、溺れたような空気が吸えない感じで。もしかしたら、このまま寝たら死んじゃうんじゃないかという怖さがありました」

高熱1週間 症状悪化し入院

それから1週間ほど高熱が続いた後、症状が悪化し、入院することになりました。
中等症と診断され、点滴と酸素吸入の治療を受けると回復は早いものでした。
「全然治らなくて、自宅療養はとにかく不安でした。もしかしたら治るかもしれない、でも治らないかもしれないという不安がありましたが、入院できてすごくほっとしました」

未接種でも 学校始まる不安

ただ、回復した今も不安なことはあります。

それは長女の通う高校が来月から新学期が始まることです。

長女は都内まで電車通学するほか、部活動もあり、また感染してしまうのではないかと、とても心配です。

わが家では夫は職域接種で2回の接種を終えました。

でも、私と娘2人はできていません。

私の住む自治体では、今月中旬から40歳以上の住民を対象にしたワクチン接種の予約が始まったばかりで、予約はすぐに埋まってしまいました。

子どもの接種の予約は、今週始まったばかりです。
「特に、まだワクチン接種を終えていない人は、すぐ隣にコロナがあると思って行動した方がいいと思いました。知らず知らずのうちに家族にうつってしまう、それが一番怖いと思います。私たちと同じ40代の人でも生と死を分ける位、ひどくなる人もいます。感染対策を徹底してほしい」

子どもの感染 症状訴え増加

「子どもは感染しにくいと思っている人も多いが、デルタ株の感染力は強くこれまでの認識を改めて感染対策を徹底してほしい」
こう呼びかけるのは、横浜市にある「ときえだ小児科クリニック」の時枝啓介院長です。
このクリニックで、状況が変わったのは、先月中旬ごろ。

診察前に行うPCR検査で陽性になった子どもの患者のウイルスを調べると、感染力が強いデルタ株がおよそ半数を占めるようになりました。

これまで症状を訴えるケースはほとんどありませんでしたが、最近は、高熱や息苦しさの症状、それに頭痛やけん怠感などを訴える子どもが増えているといいます。
(ときえだ小児科クリニック 時枝啓介院長)
「これまでは子どもは無症状のケースが多く、発熱を訴えるとむしろ『症状があるから新型コロナではないな』と安心していたのですが、最近は39度近くまで発熱した子どもも出てきてもう安心できないなと思いました」

感染は子どもから大人へ!?

子どもの感染の増加とともに、感染の傾向も変わってきているのでしょうか。

子どもの感染症が専門で長崎大学病院の森内浩幸教授に話を聞きました。
森内教授は、従来は少なかった子どもから大人への感染や、子どもどうしの感染も見られるようになっているといいます。
「『デルタ株』はイギリスで確認された変異ウイルスの『アルファ株』に比べて2倍以上、何もしなければ1人が5~9人に感染させるほどのいわば『水ぼうそう』に匹敵する位の強い感染力を持っています。このデルタ株の影響でワクチンの接種が進む65歳以上を除く、ほぼすべての年代層で感染者が増えて全体が底上げされています」
「こうした中で、大人どうしの感染が圧倒的に起こりやすく、大人から子どもへの感染が起こりやすいというこれまでの傾向は変わりません。まだ十分なデータはあまり無いものの、あちこちで観察されていることを考えると、これはこれまであまりなかったことですけれども、子どもから大人への感染も前に比べると結構出てきました。また、子どもどうしの感染も起こっている。子どもどうしの感染が広がってきたというのはこれまでにない特徴だろうと思います」

学校閉鎖は 同時に大人の“ロックダウン”も

夏休みが明けて新学期が始まるこの時期。

森内教授は感染の状況によっては地域や時期を限定したうえで、「学校閉鎖」の対応も検討する必要があるとしています。
「戦況が完全に変わった今、一定期間、2学期の開始を遅らせるなどの対策も考慮すべきだと思います。ただし、学校閉鎖は子どもに大きな影響を与え、心と体の健康に悪影響を及ぼすと思います。大きな弊害を与えることを考えると、安易にスタートすべきではありません」
「親が仕事を休めなかった場合に、子どもは学童保育などに預けないといけなくなりますが、小学校に比べると感染予防対策はそこまできっちりできていないことが多い。学校閉鎖は子どもの“ロックダウン”に相当しますが、そうした状況でも親が子どもの面倒を見ながら自宅で仕事ができる形が望ましいのであって、学校閉鎖を必要とする場合は、大人も“ロックダウン”することがセットになっていなければ意味はないと思います」

子どもが納得することばで

感染の拡大を受けて、夏休み延長を決める地域も出始めましたが、多くはまもなく新学期が始まります。

こうした中で、子どもたちに感染させないためには、そして自宅で広げないために、いま、私たちにできることは何なのでしょうか。
「以前に比べて感染力の強いデルタ株が猛威をふるっている時期ですので、どうしてマスクの着用が必要なのか、子どもたちが納得できるよう、また、感染拡大を防ぐために大人と一緒に努力しようということを納得できるようなことばで教えることが必要だと思います。基礎疾患がない限り、子どもは感染しても大多数は症状がないか、軽症で済むことが多い。ですが、子どもからの感染で、大人が重症化しないためにも、基本的な感染対策をしっかりとおさえていく。その地道な努力を決してまたかと思わず、頑張って続けていただきたいと思います」

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