虐待などで入院 治療後に退院できない子ども 全国で327人

虐待を受けるなどして入院し、治療の必要がなくなっても受け入れ先がないなどの理由で退院できずにいる子どもがおととし全国で327人にのぼったことが国の調査でわかりました。
専門家は「病院は子どもが育つ環境として好ましい場所ではなく、保護者への支援や受け皿づくりが必要だ」と指摘しています。

調査は厚生労働省の補助事業として医師などのグループが小児の病床がある全国943か所の医療機関を対象に行い、351か所から回答を得ました。

それによりますと、おととし虐待を受けるなどして入院した子どもは1901人で、このうち17%にあたる327人が治療の必要がなくなっても受け入れ先がないなどの理由で退院できない状態になっていたことがわかりました。

これは前回、3年前に初めて行った調査と比べて72人、率にして5ポイント減っていますが、依然として受け皿が不足する深刻な状況が続いています。

退院できなかった期間は
▽8日未満がもっとも多く54%だった一方
▽半年から1年未満が4%
▽1年以上が4%と、長期にわたるケースもありました。

2週間以上退院できなかった子どもを年齢別にみますと
▽0歳が52%
▽1歳以上3歳未満が11%
▽3歳以上6歳未満が12%で、6歳未満が全体の8割近くを占めています。

厚生労働省は「子どもの権利擁護の観点からも長期の入院は望ましくないと考えている。関係機関と連携して養育環境や受け皿の調整を進めたい」としています。

調査した医師「実態はもっと多い可能性」

調査を行った関西医科大学総合医療センターの石崎優子医師は「コロナ禍で前回の調査より回答した医療機関が減っており実態はもっと多い可能性がある。病院は子どもが情緒的な生活をできる場所ではなく生育には好ましくない。またコロナ禍で治療の必要の無い人が病床を埋めてしまうと救える命が救えないことにもなるため乳児院などの受け皿や保護者を支援するサービスの充実が必要だ」と話しています。

退院できず 1日のほとんどを1人でベッドで

虐待を受けた子どもたちを受け入れてきた大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センターの丸山朋子医師は、退院できない状態の子どもがゼロになった年はないとしたうえで、最近は家庭で面倒を見られる程度の症状の子が入院し続けるケースが増えていると話します。

丸山医師は「例えばちょっとしたケアであっても親の養育能力や家庭環境の問題で行うことが難しくて入院を継続するケースや、体重の増えが悪い、ミルクの飲みが悪いといった場合に親にネグレクトの傾向があり、工夫をしながら授乳をするというのが難しいといったケースが増えているように感じます」と話していました。

退院できない子どもたちは1日のほとんどを1人でベッドで過ごすといいます。

「ベッドやベッドの周囲しか自分の動ける環境がない。ベッドに閉じ込められているような状態。病院は床をハイハイして動き回れるような環境ではないので、いろんなものに興味をもってさわりにいくといったことができない。ほかのお子さんや大人と一緒に何かに取り組むとか、あるいはごはんを一緒に食べるということもありません」と話していました。

受け入れる病院「いつか破綻してしまう」

1つの医療機関で長期間引き受けることが難しく複数の医療機関に入院を繰り返すケースもあるということで、現場はぎりぎりの状態だと訴えます。

丸山医師は「子どもにとっていちばんよいことをしたいというのが、小児科医だけでなく子どもに関わる人みんなの思いだと思いますが、公立の病院などがなんとか頑張って引き受けてくれている状況ではいつか破綻してしまうんじゃないかと思っています」と話していました。