自宅療養中に早産で新生児死亡 かかりつけ医が心情明らかに

新型コロナウイルスに感染し、千葉県で自宅療養中の妊婦が入院先が見つからず自宅で出産し赤ちゃんが亡くなったことについて、かかりつけの医師がNHKの取材に文書で答えました。

「感染した妊婦の場合、直接診察できず電話でのやり取りでしか状況を推測できないことが難しいと感じる。助けられる可能性のあった子を死なせてしまった状況に、悲しみしかありません」と心情を明らかにしました。

今月17日、千葉県柏市で自宅療養していた妊娠8か月の女性について、県や保健所などが入院先を探したものの見つからず自宅で早産となり、赤ちゃんが亡くなりました。

女性が健診を受けていた診療所の医師がNHKの取材に文書で応じ「本当に残念で仕方ありません」と心情を明らかにしました。

当日の経緯について、午前中に保健所から連絡を受けて受け入れ先を探したものの見つからず、まだ陣痛はなかったことから本人の治療を優先してほしいとして「産科のない病院でもいいので搬送先を探してほしい」と保健所などに依頼したということです。

感染した妊婦への対応について「感染した妊婦が自宅療養をしている場合、直接診察できず電話でのやり取りでしか状況を推測できないことが難しいと感じる。今回も診察していれば陣痛につながりそうだと推測できたかもしれないと思っています」と記しています。

難航した入院調整については「妊婦でなくても搬送先が見つかりにくい現状では、妊婦はさらに見つからない、これがいちばん難しい」としたうえで「助けられる可能性のあった子を機会のないまま死なせてしまった状況に悲しみしかありません。妊婦の集中治療室のある病院で、感染症も診ることができる専用の病床を利用できるようにするなど、何か対策はとれないかと考えます」とつづっています。

そして「今回の件は本当に残念、このひと言に尽きます。救える命を救えるように医療を整えてほしいと願います」と述べています。

【今回の経緯】対応できる医療機関見つからず

文書の中で、かかりつけ医は今回の経緯を説明しています。

今月2日、診療所で女性の妊婦健診が行われましたが、この時は特に問題はなかったということです。

しかし今月8日から女性に発熱などの症状が出て、11日には新型コロナウイルスの検査で陽性になったと診療所に連絡がありました。

その後、15日から2日間、保健所などで入院調整が行われたものの、受け入れ先は見つかりませんでしたが、この間診療所の医師が関わることはありませんでした。

診療所の医師に保健所から連絡が入ったのは17日の午前中。

女性に少量の出血などがあり、産科として搬送先を探してほしいという依頼だったということです。

ふだん搬送先として協力してもらっている病院に相談をしましたが、早産には対応ができないのでほかをあたってほしいと言われたということです。

そこで産科の搬送先が見つからない場合に広域で搬送調整を行う県のコーディネーターに依頼をしました。

しかし対応できる医療機関が見つからないまま、午後になって保健所から連絡があり「妊婦に対する薬の投与の相談を行うなど、かかりつけ医自身がバックアップを行う形で産科のない施設と受け入れの交渉をしてもいいか」と聞かれたため「本人の治療優先でそれでもかまわない」と返事をしたということです。

この時点で医師は「子宮の収縮はあったものの痛みはない」という認識だったと答えています。

その後、保健所から「陣痛になっているようだ」と連絡があり、受け入れ先を探したものの見つからず、今回の事態になったということです。

医師は「皆様が必死になって搬送先を探してくださったのですが、残念ながら見つからなかった。本当に残念で仕方ありません」とつづっています。