アフガン タリバン戦闘員がドイツのジャーナリストの家族殺害

アフガニスタンの武装勢力タリバンが、ドイツの放送局に所属するジャーナリストの家族を殺害したことが明らかになりました。タリバンは、一定の条件のもとでの取材活動を認める考えを示していましたが、今後、国際的な非難の声が上がることも予想されます。

ドイツの放送局「ドイチェ・ヴェレ」は19日、所属するジャーナリストの家族1人が前日、タリバンの戦闘員の銃撃によって殺害され、もう1人の家族も重傷を負ったことを明らかにしました。

このジャーナリストは現在、ドイツにいるということですが、タリバンは一軒一軒、住宅を訪問してジャーナリストを探していたということです。

ドイチェ・ヴェレはアフガニスタン報道に力を入れてきたメディアの1つで、今回の殺害について「想像を絶する悲劇だ」として抗議する声明を出しました。

そのうえで「タリバンが首都カブールやほかの地域でジャーナリストの組織的な捜索を行っているのは明らかだ。残された時間はない」として、ほかのドイツメディアとともに、ドイツ政府に対し、アフガニスタン人ジャーナリストやその関係者の出国に向けた緊急のビザを発給するよう求めています。

タリバンの報道官は、17日の記者会見でジャーナリストの活動について「すべてのメディアには取材活動を続けてほしい。ただ、イスラムの価値観と矛盾せず、公正で国益に反しないことが条件となる」と述べ、一定の条件のもとでの取材活動を認める考えを示していましたが、今後、国際的な非難の声が上がることも予想されます。

広告の女性の顔が黒塗りに

アフガニスタンの首都カブールでは、広告にある女性の顔が黒塗りにされる様子が確認され、タリバンによる締めつけを恐れた動きとみられます。

地元の通信社が18日に撮影した映像には、店頭に掲げられた広告の女性の顔の部分に、男性がスプレーを吹きつけ、真っ黒に塗りつぶしていく様子が映っています。

塗りつぶした理由は分かっていませんが、かつて女性の権利を制限するなど抑圧的と指摘された統治を行っていたタリバンが、再び権力を掌握したことから、住民がタリバンによる締めつけを恐れたことが背景にあるものとみられます。

「1年半から3年以内にテロの脅威につながる可能性」

タリバンと密接な関係にあるとされてきたのが、2001年のアメリカ同時多発テロ事件を首謀したオサマ・ビンラディン容疑者が率いていた国際テロ組織アルカイダです。

アルカイダは、1988年に結成され、96年に当時タリバンが勢力を拡大していたアフガニスタンに本格的に拠点を移し、メンバーへの軍事訓練を積み重ねました。

このころ、タリバンとアルカイダは合同で軍事訓練を行うなどしていたとされ、アメリカはアフガニスタンが「テロの温床」になっていたと指摘していました。

アルカイダは、1998年にはケニアとタンザニアでアメリカ大使館を同時に爆破するテロを起こし、合わせて200人以上が死亡したほか、2000年には中東イエメンの港に停泊するアメリカ軍の駆逐艦「コール」に、爆発物を積んだボートが突っ込む自爆テロを行い、17人が死亡するなど、各地でテロを起こしました。

2001年9月11日には、ハイジャックした4機の旅客機をニューヨークの世界貿易センタービルなどに激突させる同時多発テロ事件を起こし、日本人24人を含むおよそ3000人が犠牲となりました。

アメリカはアフガニスタンの当時のタリバン政権に対し、事件の首謀者であるビンラディン容疑者らの引き渡しを求めましたが、タリバン側が拒否したことから軍事作戦に踏み切りました。

その結果、タリバン政権は崩壊し、2011年には隣国パキスタンに潜伏していたビンラディン容疑者をアメリカ軍の特殊部隊が殺害しました。

ビンラディン容疑者の後を継いだザワヒリ容疑者は、アフガニスタンとパキスタンの国境付近に潜伏しているとみられています。

また、アメリカのトランプ前大統領は、おととし、将来的な後継者と目されていたビンラディン容疑者の息子のハムザ容疑者を、対テロ作戦で殺害したことを明らかにしています。

こうしたことからアフガニスタン国内のテロ組織は弱体化したと一時、指摘されていましたが、2014年にアメリカ軍を中心とする国際部隊の大部分が撤退したのをきっかけに、タリバンが再び勢力を盛り返したほか、当時、中東や北アフリカで影響力を拡大していた過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織も台頭し、テロ活動が活発化しました。

ISの前身の武装組織の指導者だったザルカウィ容疑者も、アフガニスタンで軍事訓練を受けた経験があるとされています。

タリバンは、依然としてアルカイダと密接なつながりを維持していると指摘されていて、タリバンの戦闘員の1人はことし2月、NHKの取材に対し「われわれはアルカイダの戦闘員に武器や弾薬を提供し、彼らはわれわれの戦闘に協力してくれる。アルカイダの戦闘員は軍事訓練も行ってくれる」と証言し、アルカイダと日常的に連携していることを明らかにしています。

アメリカのアフガニスタン政策で中心的な役割を果たしてきた外交官や有力議員がことし2月、超党派でまとめた報告書では、アメリカ軍の撤退について「拙速な撤退はアルカイダなどのテロ組織を復活させ、1年半から3年以内にアメリカ本土へのテロの脅威につながる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。