「感染状況制御不能 災害レベルの猛威」都モニタリング会議

東京都のモニタリング会議で、専門家は「感染状況は制御不能で災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態が続いている」と指摘したうえで「新規陽性者が現状のまま継続しただけでも医療提供体制の限界を超え、救える命が救えない事態となる」と指摘し、先週に続いて極めて強い危機感を示しました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。
このうち感染状況は新規陽性者の7日間平均が18日時点でおよそ4631人と、3週連続で過去最多を更新しながら急増していると説明しました。
そのうえで専門家は「制御不能な状況が続いている。検査が必要な人に迅速に対応できていないおそれがあり、把握されていない多数の感染者が存在する可能性がある」と指摘しました。
そして「災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態が続いている。第4波までとは明らかに異なる速度や範囲での感染が爆発的に拡大している」と述べました。
また、専門家は、18日時点で入院患者が3815人となり増加が続いていることについて「自宅療養中に容体が悪化した人の救急搬送や入院の受け入れが困難になっている」と指摘しました。
そのうえで「新規陽性者が現状のまま継続しただけでも医療提供体制の限界を超え、救える命が救えない事態となる。この危機感を現実のものとして皆で共有する必要がある」と述べました。
特に、重症の患者は18日時点で275人と過去最多を大きく更新していて、専門家は「人工呼吸器やエクモが使用できる病床が不足し始めている」と指摘し、重症患者がさらに増えるとより深刻な事態になるとして、極めて強い危機感を示しました。

小池知事「最大の危機 デルタ株はすぐ隣にいる」

モニタリング会議のあと小池知事は記者会見で「現在、コロナとのたたかいの真っただ中であり、最大の危機を迎えている。都にとっても今以上に重要な時期はなく、まさに災害級で医療非常事態だ」と述べました。

そのうえで「都として死者や重症者を出さないことを最優先に考えて、医療提供体制の課題解決を進めてきた。今、このような状況にあって医療非常事態対応体制で、都庁の総力をあげて全庁一体となって取り組んでいく」と述べました。

また、小池知事は、繁華街の人流がお盆明けから下げ止まっていると専門家から指摘されたとしたうえで「デルタ株はもう皆さんのすぐ隣にいるという意識を持っていただくことが、全体として人流を下げたり夜の時間帯に気をつけたりという行動変容につながる。お盆明けのこの時期にどうやって抑え込んでいくかということと、人と人との接触を可能なかぎり減らしていけるかということを、ひと事ではなくて自分ごととして考えていただきたい。そのようにみんなで意識を共有していきたい」と呼びかけました。

中等症用の病床の一部を重症用に転換要請

また小池知事は、新型コロナウイルスに感染した重症患者の増加を受けて、18日、都内の医療機関に対して中等症用の病床の一部を重症用に転換するよう要請したことを明らかにしました。

そのうえで、「この現状に鑑み、医療機関の皆さんに重ねての協力をお願いした」と述べ、理解を求めました。

さらに病床の確保については「一気に増やすのはなかなか難しく、特に重症患者用ではそれだけ人員を寄せていかなければならない。医療に必要な人員の確保をしっかり進めていきたい」と述べました。

一方、田村厚生労働大臣が、自治体が公表している確保病床数よりも実際の入院患者数が少ないとして東京都などと実態調査を行う考えを示したことについて、小池知事は「医療機関にはぜひ大切な資源を提供いただきたい。できるだけこの困難な時期を短くすることが、結果としてほかの病状の方々を救うことにもなると思う。厚労省と連携しながら、コロナ対策という大きな観点から協力いただけるよう進めていきたい」と述べました。

入院調整 7割が翌日に繰り越し

都内では急速な感染拡大に伴って保健所から都の入院調整本部に入院先を探すよう求める依頼が増加しています。
依頼件数の7日間平均は18日時点で701件で、先週から93件増え、過去最多を更新しました。
およそ1か月前の先月14日時点の5.6倍となっています。
依頼が急増している影響で、入院先の調整が翌日以降に繰り越され患者が自宅待機を余儀なくされる事例が相次いでいます。
都によりますと、18日は依頼があった644人のうち7割余りにあたる461人が翌日に繰り越しになったということです。
専門家は「特に、重症患者のための病床がひっ迫していて、入院の調整が非常に困難になっている」と指摘しました。

モニタリング会議の分析結果

20日のモニタリング会議で示された、都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況 3週連続で最多更新

新たな感染の確認は、18日時点で7日間平均が4630.6人となりました。

前回、8月11日時点の3933.9人より、およそ697人増加し、3週連続で最多を更新しました。

増加比は、前の週のおよそ118%で、8週連続で100%を超えています。

専門家は「災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態が続いている。もはや災害時と同様に感染予防のための行動をとることで、自分の身は自分で守ることが必要だ」と指摘しました。

このほか、流行の主体となったインドで確認された「L452R」の変異があるウイルスは、陽性者の割合が前の週よりも、さらに上昇して89.1%になったことが報告されました。

8月16日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、
▽20代が30.8%と最も多く、7月以降、7週連続で30%を超えました。

次いで、
▽30代が20.7%
▽40代が16.5%
▽50代が11.8%
▽10代が9.3%
▽10歳未満が5.0%
▽60代が3.2%
▽70代が1.3%
▽80代が1.0%
▽90代以上が0.4%でした。

6月中旬以降、50代以下の割合が全体の90%以上を占めていて、今週は、
▽10代が0.7ポイント
▽10歳未満が0.5ポイント、それぞれ上昇しました。

専門家は「若年層を含めた、あらゆる世代が感染リスクがあるという意識を、より一層強く持つよう啓発する必要がある」と指摘しています。

一方、65歳以上の高齢者の感染者数は、今週は1078人で、956人だった前の週の1.1倍に増え、5週連続で増加しています。

専門家は「高齢者層は重症化リスクが高く、入院期間が長期化することもある。早期発見と早期受診により重症化を防ぐことが重要だ」としています。

感染経路がわかっている人では、
▽同居する人からの感染が64.4%と最も多く、
次いで、
▽職場が15.4%
▽保育園や学校、それに高齢者施設や病院といった施設での感染が5.5%
▽会食は3.0%でした。

特に、施設での感染は、10代や10歳未満が高い水準で推移していて、専門家は「夏休みのない保育園や学童クラブなどでの感染防止対策の徹底が必要だ」としています。
また、今週は幼稚園や保育園、部活動などでの感染事例が多数報告されているとして「引き続き若年層への感染拡大に警戒が必要だ。部活動や学校行事を含む学校生活や学習塾などで、基本的な感染防止対策を改めて徹底する必要がある」と呼びかけました。

さらに「多くの人が集まる新宿の複数の大規模商業施設で、数十人規模のクラスターが発生していて、第4波までとは明らかに異なる速度や範囲での感染が爆発的に拡大している」として、人と人との接触の機会を減らす対策を、抜本的に強化する必要があると説明しました。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は、18日時点で2877.0人で、前の週から、およそ392人増え、2か月以上連続して増加しています。

一方、増加比は、18日時点で115.8%と依然として100%を上回る水準で推移していて、専門家は「引き続き感染拡大に厳重な警戒が必要だ。さらなる拡大を防ぐためには、人流を徹底的に減少させる必要がある」と強く呼びかけました。

感染経路がわからない人の割合はおよそ62%で、前の週から横ばいでした。

感染経路がわからない人の割合は、20代から40代で60%を超え、特に、行動が活発な20代と30代では、およそ70%となっています。

医療提供体制

検査の陽性率の7日間平均は18日の時点で24%となり、前の週の今月11日時点の22.5%から上昇しました。

専門家は、検査が必要な人に迅速に対応できていないおそれがあり、潜在的な陽性者が増加している可能性があるとしたうえで、症状がある場合は早期に検査を受けるよう強く呼びかけました。

そのうえで、「都はPCRなどの検査能力を最大稼働時に一日9万7000件確保している。検査能力を最大限活用し、必要な都民が速やかに検査を受けられる体制整備が必要だ」と指摘しました。

入院患者は、18日の時点で3815人で、今月11日の時点より148人増加しました。

専門家は「緊急を要するけがや病気の患者の救急搬送、受け入れにも大きな支障が生じている」と指摘しました。

そのうえで「陽性患者の入院と退院時にはともに感染防御対策や消毒など通常の患者より多くの人手と労力、時間が必要で、煩雑な入院と退院の作業が繰り返されることも医療機関の負担の要因となっている」と指摘しました。

そのうえで「医療機関は疲弊しているなかでも、現状を『災害』ととらえ、それぞれが懸命に立ち向かっている」と述べました。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ85%と高い水準が続いていて、年代別では50代が最も多く全体のおよそ24%、次いで40代がおよそ21%となっています。

30代以下でもおよそ30%を占めていて、専門家は「若年、中年層を中心とした入院患者が急増している。遅れて、この年齢層の重症患者も急速に増加している」と指摘しました。

また、都の基準で集計したおととい時点の重症患者は今月11日時点の197人から78人増えて275人です。

男女別では、男性212人女性63人です。

年代別では、50代が最も多く111人、次いで60代が58人、40代が50人、70代が23人、30代が21人、80代が7人、20代が4人、10代が1人でした。

専門家は「40代と50代で重症患者全体の59%を占めている。この年代に対してワクチン接種は重症化の予防効果と死亡率の低下が期待されていることを啓発する必要がある」と指摘しています。

そのうえで「今週は10代と20代、30代でも新たな重症例が発生している。肥満や喫煙歴がある人は若年であっても重症化リスクが高い」と指摘しました。

このほか、人工呼吸器かECMO(エクモ)の治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人はおとといの時点で569人で、今月11日時点より108人増え、過去最多を更新しました。

18日の時点で陽性となった人の療養状況を今月11日時点と比べると、自宅で療養している人は2830人増えて2万2226人、都が確保したホテルなどで療養している人は42人増えて1807人でした。

また医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は1488人増えて1万2349人となりました。

入院患者を含めた「療養が必要な人」全体の数は4万197人で、今月11日時点より4508人増えました。

全療養者に占める入院患者の割合はおよそ9%、宿泊療養者の割合はおよそ4%でいずれも前回から1ポイント減り、専門家は「極めて低い水準に低下している」と指摘しています。

一方で、自宅療養者と、入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人が急増したと説明しました。

そのうえで、専門家は、今月16日までの1週間で自宅療養中の死亡が5人報告されたと説明し、「深刻な事態になっている」と述べ、自宅療養中の重症化を予防するため体制のさらなる強化が必要だと指摘しました。

一方、今月16日までの1週間で新型コロナウイルスに感染した26人が亡くなりました。

このうち17人は70代以上でした。