“デルタ株”感染拡大 世界でワクチン追加接種の動き相次ぐ

世界各国で変異ウイルスの「デルタ株」の感染拡大が続く中、ワクチンの接種が進んでいるアメリカやヨーロッパ、それに中東の国などでワクチン接種が完了した人を対象に、追加の接種を行う動きが相次いでいます。

【イスラエル】
このうち、16歳以上の8割以上が2回のワクチン接種を終えているイスラエルでは、一時は1日の新規感染者が1桁にまで減りましたが、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の拡大に伴って、再び感染者が増えたため、8月から50歳以上の人を対象に3回目の接種を始めています。

【イギリス】
また、イギリスでは、北半球の冬を前に「ワクチンの効果を保つため」として、ことし9月から3回目となる追加の接種を始める計画を明らかにしています。

対象となるのは、まず、
▽高齢者施設の入居者や、
▽70歳以上の高齢者、
▽医療従事者など感染や、重症化のリスクが高いとされる人たちで、
その後、
▽50歳以上のすべての人や、
▽16歳から49歳までのうち、重症化のリスクが高いとされる人たちなどが予定されています。
【アメリカ】
一方、アメリカは18日に、ファイザーや、モデルナのワクチンの2回目の接種から8か月がたった人を対象に9月から3回目の接種を行う方針を示しました。

その理由として、
▽ワクチン接種から時間がたつと、感染や発症を防ぐ効果が低下し、
▽中でもデルタ株に対して、そうした効果が低下するとみられること、
▽また、3回目の接種により、ウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値が大きく上昇するという研究結果が得られていることなどをあげています。

3回目の接種は、医療従事者や高齢者など、感染や重症化のリスクが高い人から始める見通しで、今後、接種の許可や推奨を行うFDA=食品医薬品局や、CDC=疾病対策センターの専門家の委員会で、最終的に追加接種を行うべきかどうか判断することにしています。
【欧州】
このほか、ドイツや、フランス、スウェーデンでも、2回のワクチン接種を終えた高齢者などを対象に秋以降、追加でワクチン接種を行うことを決めているほか、

【南米・中東】
南米のチリやウルグアイ、中東のバーレーンやアラブ首長国連邦でも、追加の接種を始めています。

【WHO】
こうした動きについて、WHO=世界保健機関は、発展途上国へのワクチンの供給が進んでいない中で、先進国が3回目の接種を始めると、ワクチン供給に影響が出るとして、9月末までは追加の接種を行わないよう求めていて、世界的な供給への懸念も議論となっています。

追加接種の意義

新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種から8か月が経過した人を対象に、追加の接種を行う理由について、CDCのワレンスキー所長は、時間の経過とともにワクチンの効果が低下していく可能性をあげています。

CDCによりますと、ニューヨーク州の保健当局がワクチン接種を完了した、およそ1000万人を対象に調べたところ、ワクチンが新型コロナウイルスの感染を防ぐ効果は、ことし5月上旬から7月中旬の間に91.7%から79.8%に低下したということです。

また、ワレンスキー所長は、感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」に対して、ワクチンの効果が低下している可能性を指摘しています。
一方、アメリカ政府の首席医療顧問をつとめるファウチ博士は、ワクチンの追加接種で得られる効果について、
▽ウイルスの働きを抑える中和抗体の値が上昇し、効果を持続させること、
▽これによって、デルタ株に対しても感染や発症を防ぐ効果が高まるとする見方を示し、追加接種の意義を強調しています。

ただ一方でCDCは、ワクチンが「重症化」や「死亡」を防ぐ効果については、現時点では保たれているとして、まだワクチンを接種していない人に対し、強く接種を呼びかけています。