東京都 大規模接種用ワクチン 約3分の2を自治体に融通する方針

「ワクチン不足で、国の目標通りに接種が進められない」という東京都内の自治体からの声を受けて、都は大規模接種のために確保しているワクチンを融通する方針を決めました。それでも杉並区などでは、ワクチン不足解消の見通しが立たないとして接種予約の制限などを続けることにしています。

国は、10月から11月のできるだけ早い時期に希望する12歳以上のすべての人に接種を終えることを目指していて、対象の8割が2回接種するのに必要な量を10月上旬までに都道府県に配送する計画です。

東京都内には今月末から10月上旬までに、合わせて2114箱=247万3000回分のファイザーのワクチンが配分される予定で、10日、都が区市町村の接種率などを踏まえて、割り当てを示しました。

しかし、杉並区や世田谷区、中野区など複数の自治体から「予定していた量には足りず、国の目標を達成するために作った計画どおりに接種が進められない」などという声が出ていました。

これを受けて東京都は飲食店関係者などを対象にした大規模接種のために確保している800箱=93万6000回分のうち、3分の2程度を希望する区市町村に融通する方針を決めました。

これまで都は大規模接種用のワクチンを融通することに慎重な姿勢を見せていましたが、爆発的な感染拡大に歯止めがかからず、50代以下への接種も思うように進んでいないことから自治体での接種を円滑に進める必要があると判断したということです。

ただ、杉並区や中野区など一部の自治体では、それでも希望する量に足りず、接種予約の制限などを続けることにしていて、ワクチン不足の解消には至っていません。

「ワクチンの融通 区市町村からの強い要望」東京都

東京都は、ことし6月からワクチンの大規模接種をはじめ、現在は16の会場で飲食店の関係者や学校の教職員、それに福祉サービスに関わる人などを対象に実施しています。今月17日までに45万回余りの接種が行われ、2回目まで終えた人は15万5470人です。

今回、大規模接種用に確保したワクチンを、区市町村に融通することになった理由について、都は「接種の体制が整っている区市町村からの強い要望があり、都内全体で接種を促進させていくため」と説明しています。

都は当初、大規模接種では、国の方針に従ってモデルナのワクチンを使う予定でした。しかし、モデルナの配送が追いついかず、国からはファイザーが供給されています。

一方、そのファイザーを使っている区市町村からは、足りないという声が多くあります。市長会からは、都の大規模接種分のファイザーのワクチンを、可能なかぎり融通するよう要望が出ていました。

都の担当者は「当初の計画どおり、ファイザーではなく、モデルナのワクチンで都の大規模接種が行われていれば、区市町村の接種計画にも大きな影響を及ぼさなかったのではないか。都としてもファイザーを使っていることは本意ではなく、できればモデルナを供給してほしかった」と話しています。

国「必要な量は送っている 足りないとは信じがたい」

国は「都道府県単位で見ると、モデルナのワクチンを含めれば、必要な量は送っているはずで、足りないということは信じがたい。都道府県がうまく配分すれば、自治体に十分なワクチンが届くはずだ」としています。

杉並区 接種の完了 年末にずれ込むおそれも

今月10日に東京都が示した計画によりますと、杉並区では、今月30日から10月10日にかけて、合わせて78箱=9万1260回分のファイザーのワクチンが割り当てられることになっていました。その後、都から、さらに10箱=1万1700回分を融通すると連絡を受けたということです。

それでも、区が希望していた量には届いていません。区によりますと、接種対象となる人のうち2回の接種を終えたのは、今月16日の時点で、3割に当たるおよそ15万5200人で、対象者の7割が接種を希望すると見込んで、来月末までに接種を完了する予定でした。

区では、1週間当たりおよそ4万回の接種をできる体制をとっていましたが、都から配送されるワクチンは、およそ1万7000回分にとどまり、接種予約の枠を引き続き制限しているということです。この結果、接種の完了は、年末にずれ込むおそれがあるとしています。

区の公式ツイッターには「このままワクチン打てないとコロナになって、国と区役所のせいで死んじゃうんだろうなぁ」とか「いつになったら接種できるのでしょうか…」「全然打てない。コレでコロナに注意とか言われても無理だ」などといった投稿が寄せられています。

杉並区の田中良区長は「相当数のワクチンが不足し、予約が取りにくいというお叱りを区民からも受けている。そんな思いをさせないようワクチンさえ供給されれば、接種できる体制をとってきただけに、悔しいという気持ちがある」と話しています。