東京パラリンピック 日本選手団の結団式 史上最多255選手

8月24日に開幕する東京パラリンピックに臨む日本選手団の結団式が都内で開かれ、主将を務める車いすテニスの国枝慎吾選手が「子どもたちに人間の無限の可能性を感じてもらいたい」と抱負を述べました。

東京パラリンピックは日本から史上最多の255人の選手が参加します。

結団式は、主将の国枝選手や副主将を務めるゴールボールの浦田理恵選手など一部の選手がマスクをつけて出席し、ほとんどの選手はオンラインでの参加となりました。

式では選手やコーチなどが競技ごとに紹介されたあと、旗手を務める卓球の岩渕幸洋選手とトライアスロンの谷真海選手に、河合純一団長から団旗となる国旗が手渡されました。

最後に国枝主将が「東京オリンピックでは日本代表選手のベストを尽くす姿に心震える場面が何度もあり、スポーツの持つ力を示してくれた。東京パラリンピックの日本選手団も勇気と覚悟を持って全力で戦い抜くことを誓う。障害のあるなしにかかわらず、日本のたくさんの子どもたちにパラスポーツを見てもらい、人間の無限の可能性を感じてもらえることを願う」と述べました。

東京パラリンピックは8月24日から9月5日までの日程で、およそ160の国と地域から4400人が参加して、22競技、539種目が行われます。

河合団長 学校連携の観戦「保護者や学校に理解いただき 応援を」

日本選手団の河合団長は結団式の中で「パラリンピアンのパフォーマンスはできないをできるに変える。人間の可能性に気づかせ、共生社会を実現する活力になる。日本選手団はもちろん、世界中のパラリンピアンへの熱い声援をお願いしたい」と呼びかけました。

このあとの記者会見で、学校連携での子どもたちの観戦が行われることについては「実際に行うかどうかは学校ごと、教育委員会ごとの判断になるので、コメントできないが、息遣いや音など五感をつくして感じられるのが生観戦のよさだ。保護者や学校に理解いただいて、応援してもらいたい」と述べました。

国枝主将「状況受け入れ100%の力を出すのみ」

結団式のあとの記者会見で国枝主将は、東京パラリンピックの原則無観客での開催が決まったことについて「ツアーで無観客も有観客も経験してきて、有観客のほうがという気持ちはもちろんあるが、この状況では致し方ないし、選手は状況を受け入れて100%の力を出すのみだという決意でいる。ひとりでも多くの人に車いすテニスのファン、パラリンピックのファンになってほしいという気持ちがとても強くあり、そのためには選手が見る人の想像を一歩二歩超えることがいちばんだと思っているので、そういう大会にしたい」と話しました。

また、子どもたちの観戦が一部認められたことについて「安全に観戦できる状況なら、ぜひ見に来てほしい。東京で行われるパラリンピックを直接経験できるのは、子どもたちの将来にとってとても有意義だと思うし、パラアスリートのすごさや夢を感じてほしい」と話していました。

浦田副主将「輝く結果を」

パラリンピック4大会連続出場で、副主将を務める浦田選手は記者会見で「国枝主将とともに、これまでの経験を生かし、この選手団のために輝く結果を出せるように頑張りたい。オリンピックではたくさんの感動と刺激をいただき、そのバトンを引き継いで、パラリンピックならではの人が持つ可能性と限界を超える力を、輝く結果とともに、応援してくれる人や支えてくれる人にお伝えしたい」と話していました。

そのうえで、学校連携での児童生徒の観戦が行われることについて「これからを担う子どもたちに私たちの活躍を見てもらえることは、教育的効果も大きいし、私たち自身も大きな力をいただけると思う。安全な状況で、少しでも多くの子どもたちにゴールボールの見えない音の世界を体感してもらいたい」と話していました。

旗手の岩渕「最高のパフォーマンスを」

旗手を務める岩渕選手は記者会見で「大役をいただいたことを競技に生かし、自身が掲げる『金メダル以上』という目標のもと、パラスポーツの魅力を多くの人に伝え、最高のパフォーマンスをできるように頑張りたい」と話しました。

そのうえで、学校連携の観戦をする子どもたちについて「大会の雰囲気を感じて、親や周囲の人に伝えてもらい、パラスポーツの輪が広がるきっかけになればうれしい」と話していました。

旗手の谷 震災10年「少しでも力を得る人がいたらうれしい」

結団式のあとの会見で、旗手を務める谷選手は「コロナ禍での開催という難しい大会になったが、開催国の選手としてパラリンピックを迎えられてうれしい。『スポーツの力』を大会誘致のプレゼンで語ったが、逆風の中でしばらく使うことをはばかられ、その価値を見失いそうになったこともあったが、オリンピックで『スポーツの力』を証明してもらったように思う。パラリンピック選手の競技する姿、肉体、表情には、工夫しだいでスポーツができるとか、何か困難があっても踏み出す力とか、生きていく中での大事なヒントが詰まっている」と話しました。

宮城県気仙沼市出身の谷選手は、復興への思いについて「1年延期で震災から10年という節目になった。一人ひとり、心境は違う中で、復興に結び付けることが正しいのかどうか正直わからないが、10年でもう一度思い出してもらうこと、心を向けてもらうことは、決してむだではないし、少しでも力を得る人がいたらうれしい」と話していました。

秋篠宮さま 結団式でのおことば全文

本日、東京2020パラリンピック競技大会日本代表選手団の結団式が開催され、大会に参加される選手および役員の皆さまに、WEB上ではありますが、ご挨拶できますことを誠に嬉しく思います。

本大会は、COVID-19の世界的な流行の影響で1年延期されました。

皆さまには、これまでの間、スポーツ選手として最良の状態を維持するため、多くの苦労と大変な努力をしてこられたことと思います。

皆さまには、そのような状況を乗り越えて、この度、日本代表になられたことをお慶び申しあげます。

東京で開催されるパラリンピック競技大会は、1964年大会に続き2回目となります。

今回は、新たにバドミントンとテコンドーが競技として加わり、22競技539種目が実施されると伺っております。

さて、今回は、通常のパラリンピック競技大会とは大きく異なる環境での開催となります。

参加される皆さまには、感染症への対応に十分留意され、そして競技の場に臨んでは、日々の成果を存分に発揮されることを願っております。

また、パンデミックが収束する兆しが見えない中においては参加者間の交流が難しいことと推察いたします。

そのような状況ではありますが、皆さまには、それぞれが可能な場においてスポーツを通じた国際親善に努めていただきたく思います。

終わりに皆さまのご活躍をお祈りし、結団式に寄せることばといたします。

菅首相がビデオメッセージ

菅総理大臣は、東京パラリンピックに臨む日本選手団の結団式にビデオメッセージを寄せ「新型コロナの中で、皆さんのきょうまでの道のりは大変なものだったと思う。これまでのご努力に心から敬意を表します」と述べました。

そして「1964年の東京大会は、初めてパラリンピックの名称が使われた大会であり、わが国で障害者のスポーツに光が当たる大きなきっかけとなった。それから半世紀を経て、再びここ東京でパラリンピックを開催することとなる」と述べました。

その上で、菅総理大臣は「スポーツには大きな力がある。選手の皆さんが限界に挑戦し、頑張ることで、壁を乗り越えていく、そうした姿に世界中の人々が感動し、勇気づけられることだろう」と述べました。

そして「皆さん、力を合わせて、さまざまな制約を乗り越え、大会を成功させよう。いよいよ本番だ。世界中のアスリート相手に、自分の力を思う存分発揮していただきたい。頑張ってください。皆さんを心から応援している」と激励しました。