米 バイデン大統領 “アフガニスタン撤退後も人権重視し支援”

アメリカのバイデン大統領は、アフガニスタンの政権が崩壊したことを受けて演説し、軍の撤退方針に変更がないことを強調したうえで「アフガニスタンの人々の基本的な権利を守るために声を上げ続ける」と述べて国際社会から懸念が出ている女性の人権問題などについて支援を続ける考えを示しました。

バイデン大統領は16日、反政府武装勢力タリバンの進攻でアフガニスタンの政権が崩壊したあと初めて、ホワイトハウスで演説しました。

この中でバイデン大統領は、アメリカ軍の撤退方針に変わりはないと強調したうえで「われわれは女性などアフガニスタンの人々の基本的な権利を守るために声を上げ続ける。われわれの外交政策の中心に人権があることはこれまでも明確にしてきた。それは軍を派遣し続けることによってではなく、外交や経済的な手段、世界各国の協力を得て実現するものだ」と述べて、撤退後も人権を重視した支援を続ける考えを示しました。

さらに現地に暮らすアメリカ人や、アメリカ軍に通訳などとして協力してきた人たちについて「安全に、できるだけ早く退避させるため、集中して取り組む」と述べて国外への退避を急ぐ考えを示しました。

国際社会からは、タリバンが再びアフガニスタンを統治することになれば、女性などの権利が制限されるという懸念の声が出ています。

バイデン大統領としては、人権を重視した支援を続けると約束することでこうした懸念を払拭(ふっしょく)するとともに部隊の撤退を急いだなどとする批判をかわしたいねらいがあるものとみられます。

米国務省報道官「タリバンの行動次第」

アメリカ国務省のプライス報道官は16日の記者会見で、アフガニスタンの将来の政権との関係について「タリバンの行動次第だ。注意深く見守っている」と述べました。

そのうえで「将来の政権が女性を含む人々の基本的な権利を守り、テロリストをかくまうことがなければ、協力する用意がある」と述べ、アメリカ政府としてタリバンが参加する政権を承認する可能性を排除しませんでした。

プライス報道官は、アフガニスタンを担当するハリルザド特別代表が中東のカタールにとどまり、崩壊したアフガニスタン政府の関係者やタリバンの代表などと協議を続けているとしています。

米国防総省 “協力者の受け入れ 2万人以上に増やす”

アメリカ政府は、アフガニスタンで通訳などとしてアメリカ軍に協力してきた人たちが反政府武装勢力タリバンから報復を受けるおそれがあるとして、こうした人たちやその家族の退避を支援しています。

アメリカ国内の軍の施設を一時的な滞在先としていて、これまでにバージニア州にある陸軍の基地で、およそ2500人の受け入れを進めてきました。

これについてアメリカ国防総省は16日、新たにテキサス州とウィスコンシン州の軍の施設も活用することで、受け入れられる人数を2万人以上に増やすと明らかにしました。

ただ、アメリカ行きを希望している協力者は家族を含めて5万人を超えるとも言われていて国内外からさらなる対応を求める声が出ています。

米 ブッシュ元大統領が声明

アメリカのブッシュ元大統領は、アフガニスタンで政権が崩壊したことを受けて、16日に声明を発表しました。

この中で、ブッシュ元大統領は「妻と私はアフガニスタンで起きている悲劇的な出来事を深い悲しみを持って見ている。多くの苦しみを味わったアフガニスタンの人々と、多くの犠牲を払ってきたアメリカ人や、NATO=北大西洋条約機構の国々を思い、われわれの心は沈んでいる」としています。

そのうえで「アフガニスタンは心が強く、活力のある人たちで成り立っている。われわれはアメリカ人として、支援を提供するための準備ができている。アフガニスタンの人々の命を救い、祈るために団結しよう」と呼びかけています。

ブッシュ元大統領は、大統領就任1年目の2001年9月に起きた同時多発テロ事件をきっかけに「アメリカ史上、最も長い戦争」とも言われる、アフガニスタンでの軍事作戦に踏み切りました。

専門家「撤退のタイミングや手法 疑問や批判への答えなかった」

バイデン大統領がアフガニスタンの政権が崩壊したことを受けて行った演説について、アメリカ政治が専門の慶應義塾大学の中山俊宏教授は「必然的に『サイゴン陥落』のイメージが重なり、大統領が直接出てきて国民に説明しなければならない状況に追い込まれたのだろう」と述べ、ベトナム戦争でアメリカが支援する南ベトナムの首都サイゴンが陥落したことを思い起こさせる状況に陥り、国民向けに説明をせざるをえない状況になったと指摘しました。

そのうえで「問題は、なぜこのタイミング、この手法で撤退しなければならなかったのかという疑問や批判に対する答えがなかったことだ」と指摘しました。

そして「想定したよりも悪化のスピードが速かったと認めつつ、自分の判断が基本的には正しかったと国民に訴えかけようとしたわけだが『この20年はなんだったのか』という気持ちで演説を見た人が圧倒的に多かったのではないか」と述べました。

さらに、今回の事態はバイデン大統領の判断能力が問われる結果になったとし「この『バイデンチーム』は『トランプチーム』と比較し、経験を積んだプロだということを売りに政権運営をしてきたので、このずさんといってもいい結果は、プロ集団というイメージを大きく傷つけることになると思う」と話しています。

また、軍を撤退させる判断について「アメリカ全体として対外関与のバランスを見直す中、とりわけアフガニスタンはテロの問題と関わらないかぎり、アメリカの戦略的な利益に関わっている国ではないという判断をしたのだと思う」と指摘しました。

そのうえで、アメリカの対外関与について「問題のある国をつくりかえられるという、ある種のナイーブな理想主義に突き動かされているような楽観論みたいなものが蒸発していくような感覚を覚えた」と述べ、今後のアメリカの動向を見極めていくことが必要だと分析しています。