【1からわかる】アフガニスタン“タリバン勝利宣言”

アフガニスタンでは、反政府武装勢力タリバンが首都カブールに進攻し、日本時間の16日朝早く、政府に対する勝利を宣言した一方、ガニ大統領は出国し、政権は事実上、崩壊しました。
今回のタリバン進攻の背景には、ことし4月末から始まったアメリカ軍の撤退が大きく関わっています。

今月に入って次々と州都を制圧

タリバンは今月に入って次々と州都を制圧していきました。

8月6日
南西部ニムルーズ州の州都ザランジを制圧。
4月末にアメリカ軍撤退が始まってから州都の制圧は初めて。

8月7~11日
クンドゥズ州、サレプル州、タハール州、バダフシャン州などの州都を制圧。

8月12日
西部の第3の都市、ヘラートを制圧。

8月13日
南部の第2の都市、カンダハルを制圧。
この日までに34の州都のうち半数を超える18の州都を制圧。
8月14日
北部の要衝マザリシャリフなどを制圧。

8月15日
東部ナンガルハル州など合わせて6つの州都を制圧。
9割余の31の州都を支配下に置き、首都カブールに進攻。

8月16日
政府に対する勝利宣言。

タリバン 米軍の軍事作戦で一度は政権崩壊

そもそもタリバンはどんな組織なのでしょうか。

タリバンは、旧ソビエト軍撤退後の内戦で国内が疲弊していたさなかの1994年にアフガニスタン南部で結成されました。

タリバンとは、イスラム教を学ぶ「神学生」という意味で、隣国パキスタンのイスラム神学校で教育を受けた学生たちが「真のイスラム国家の樹立」を掲げて結成しました。

勢力を急速に拡大しながら、2年後の1996年には、首都カブールを制圧して政権を樹立し、国土のほとんどを支配下に置きました。

イスラム教を極端に厳しく解釈した政策をとり、女性の就労や教育を制限したほか2001年には、「偶像崇拝はイスラム教の教えに反する」として、世界的な仏教遺跡であるバーミヤンの大仏を爆破し、国際的な批判を浴びました。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件では、首謀者である国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者の身柄の引き渡しを拒否したため、アメリカ軍などが、アフガニスタンへの軍事作戦に踏み切り、タリバン政権は崩壊しました。

4月末から米軍撤退 各地で攻勢を強める

しかし、タリバンは反攻の機会をうかがっていました。

政権崩壊後、タリバンの一部の勢力は拠点のあった南部カンダハルを中心に態勢を立て直したり、隣国パキスタンとの国境地帯に潜伏したりして戦闘能力を増強。

そして、2014年にアフガニスタンに駐留する国際部隊の大部分が撤退したのをきっかけに、その隙を突くように勢力を盛り返し、テロや襲撃を繰り返すようになりました。

その一方で、タリバンは2013年に、中東カタールの首都ドーハに対外的な窓口となる事務所を開設し、アフガニスタンの和平に向けて、当時のアメリカのオバマ政権と水面下で接触を続けたほか、2018年からはトランプ政権と和平交渉に向けた協議を行い、2020年2月、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍の完全撤退を含む和平合意に署名しました。

和平合意を受けてアメリカ軍がことし4月末から撤退を始める中、タリバンは、アフガニスタン各地で攻勢を強めて支配地域を拡大していきました。

米軍撤退の背景 対中国戦略と世論の“戦争疲れ”

では、どのようにアメリカ軍撤退は決まったのでしょうか。

アメリカ側は2011年にビンラディン容疑者を殺害したことや戦費の削減を求めるアメリカ議会などの声を受け、段階的に現地の部隊の規模縮小を進めます。

さらに2017年に就任したトランプ前大統領はアフガニスタンからの撤退を目指してタリバン側と和平交渉を続け、去年2月に初めての和平合意に署名しました。

アメリカ政府とタリバンの和平合意ではアフガニスタンに駐留するアメリカ軍などが合意から14か月以内に完全撤退することが盛り込まれ、ことし5月1日までという撤退の期限が示されました。

ただ現地では和平合意以降も戦闘やテロが相次ぎ、ことし1月に発足したバイデン政権は期限を4か月余り延期して同時多発テロから20年となることし9月11日までに完全撤退させると決めました。

さらに7月、バイデン政権は現地のアフガニスタン政府軍には十分な力が備わっているなどとして完全撤退の時期を8月末とする方針を発表しました。

バイデン政権の高官はアフガニスタンから部隊を完全撤退させる背景について軍事的な活動を活発化させる中国に対抗するため人員や資源を再配置する戦略の一環でもあるとの認識を示しています。

また戦闘の長期化によって戦費や派遣された兵士の数も積み上がりアメリカ国内の世論が「戦争疲れ」に傾いていったこともバイデン大統領の決定を後押ししたものとみられます。

米政府が共同声明“女性の人権確保など求める”

アメリカ政府は15日、日本やイギリスなど60か国余りと共同声明を発表しました。

声明では、タリバンを念頭に「アフガニスタン全土におよぶ権力を持つ者は、人命と財産を保護し、治安と秩序を速やかに回復させる責任がある」として、アフガニスタン人や外国人が国外に安全に退避できるよう求めています。

そのうえで「アフガニスタンの人たちは安全と尊厳が保たれた状態で生活ができなければならない」として、今後の政権運営にあたって、女性の人権の確保などを求めています。