政府主催の全国戦没者追悼式 およそ310万人の戦没者慰霊

終戦から76年を迎えた15日、およそ310万人の戦没者を慰霊する政府主催の全国戦没者追悼式が都内で行われました。

東京の日本武道館で開かれた式典には全国から遺族の代表などが参列しました。

ことしは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、22の府県が遺族代表の参列を断念し、参列者の数は185人とこれまでで最も少なくなりました。

式典では、天皇陛下が皇后さまとともに式壇に着かれたあと、国歌が演奏され、感染防止のため、ことしも斉唱は行われませんでした。

続いて菅総理大臣が「私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆さまの尊い(たっとい)命と、苦難の歴史の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れません。戦争の惨禍を二度と繰り返さない、この信念をこれからも貫いてまいります」と式辞を述べ、全員で1分間の黙とうをささげました。

そして天皇陛下が「私たちは今、新型コロナウイルス感染症の厳しい感染状況による新たな試練に直面していますが、私たち皆がなお一層心を一つにし、力を合わせてこの困難を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」とおことばを述べられました。

このあと遺族を代表して、昭和19年10月に中国で父親を亡くした兵庫県の柿原啓志さん(85)が「今日の平和と繁栄は尊い犠牲の上に築かれ、その犠牲として亡くなられた人々は、今の日本に暮らす人々と同じようにごく普通の生活をすごしていた方たちであったこと、確かな人生が、そのお一人おひとりにあったことにどうか気がついていただきたい」と追悼の辞を述べました。

そして、参列者が式壇に菊の花を手向け、戦争の犠牲になったおよそ310万人の霊を慰めました。

参列者 戦没者の妻は初めて1人もいなくなる

終戦から76年を迎え、参列者の高齢化も一層進んでいます。

70歳以上の人が全体の7割を超え、戦没者の妻は、ことし初めて1人もいなくなりました。

戦没者の遺族で、94歳の長屋昭次さんは、最年長の参列者として北海道から足を運びました。

兄の保さんは終戦から4か月後、肺結核のため中国で26歳で亡くなったということです。

長屋さんは「兄は非常に体が弱かったので、歩兵ではなく、物を運ぶしちょう兵として戦地にいきました。戦争に行ける体ではなかったのに、なぜあんな人を戦争に行かせなければならなかったのか、兄を思うと、いつも泣けてきます」と話していました。

また「私も陸軍の飛行兵でしたが、先輩は、18歳や19歳という若さで特攻で亡くなりました。非情な戦争の中で本人としては不本意だったと思います」と戦友たちの死を悼んでいました。

そのうえで「私は戦後、今日に至るまで絶対に戦争をしてはいけないということを考え続けてきました。私たち生きている者に何ができるかというと慰霊しかありません。ことしはコロナ禍で正直なところ参列することにためらいがありましたが、慰霊のために何度でも参列したいと思っています」と話していました。

10代の遺族4人が参列

参列者の高齢化が進む一方で、ことしは10代の遺族4人が全国から参列しました。

このうち東京都の高校3年生で17歳の栗山栞さんと隼輔さんの双子のきょうだいは、曽祖父の富田美喜雄さんが昭和20年6月に沖縄本島で戦死しています。

2人は親族に声をかけられ、戦争の記憶を受け継いでいこうと、今回、初めて参列しました。

式典の前に取材に応じた栞さんは「きょうは、曽祖父に『ありがとう。お疲れ様でした』と伝えに来ました。私たちの世代は、私を含めて戦争を直接知らず、身近な出来事として感じるのが難しいので、たくさんの人が国のために戦って命を落としたということを分かりやすく伝え続ける必要があると思います」と話していました。

隼輔さんは「きょうは戦争で亡くなった方々への感謝の気持ちを胸に、若い世代を代表して花を手向けようと思っています。家族や友人のために命をかけて戦場に向かってくれたその行為に、感謝の気持ちを抱き続けていかないといけないと思っています。これからもっと戦争を知らない人が増えていくと思うので、戦争を直接知らない世代の目線で、戦争について伝え続けていきたいと思っています」と話していました。

天皇陛下 戦没者追悼式でおことば

天皇陛下は、皇后さまとともに全国戦没者追悼式に臨み、厳しい感染状況にも触れながら、人々の幸せと平和を願うおことばを述べられました。

終戦から76年を迎えた15日、天皇皇后両陛下は、東京の日本武道館で行われた全国戦没者追悼式に臨まれました。

感染防止のため、去年と同様参列者が大幅に減らされる中、正午の時報とともに全員で黙とうをささげ、天皇陛下がおことばを述べられました。

天皇陛下は、はじめに「さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします」と述べられました。

そして「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」と結ばれました。

おことばには、去年に続いて新型コロナウイルスに触れる一文が加えられ、天皇陛下は、現在の厳しい感染状況を新たな試練と位置づけて「私たち皆がなお一層心を一つにし、力を合わせてこの困難を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います」と述べられました。

式典の会場では、参列した遺族の代表らが、天皇陛下のおことばにじっと耳を傾けていました。

天皇陛下のおことば【全文】

本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来七十六年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。

私たちは今、新型コロナウイルス感染症の厳しい感染状況による新たな試練に直面していますが、私たち皆がなお一層心を一つにし、力を合わせてこの困難を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。

ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

上皇ご夫妻や愛子さまも黙とう

宮内庁によりますと、上皇ご夫妻は、東京 港区にある仮住まい先の仙洞仮御所で、テレビの中継番組を通じて戦没者追悼式をご覧になりました。

そして、正午の時報とともに黙とうをささげられました。

また、天皇皇后両陛下の長女の愛子さまも、お住まいの赤坂御所で、正午の時報に合わせて黙とうをささげられたということです。

菅首相 「戦争の惨禍二度と繰り返さず」

菅総理大臣は、政府主催の全国戦没者追悼式の式辞で、戦争の惨禍を二度と繰り返さないという信念を貫くとともに、新型コロナウイルスを克服し、一日も早く安心な日常を取り戻したいという決意を示しました。

この中で、菅総理大臣は「私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い(たっとい)命と、苦難の歴史の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れない」と述べました。

そのうえで「わが国は、戦後一貫して、平和を重んじる国として歩み、世界の誰もが、平和で、心豊かに暮らせる世の中を実現するため、力の限りを尽くしている。戦争の惨禍を、二度と繰り返さない、この信念をこれからも貫いていく」と述べました。

そして、菅総理大臣は「積極的平和主義の旗の下、国際社会と力を合わせながら、世界が直面するさまざまな課題の解決に、全力で取り組んでいく。今なお、感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症を克服し、一日も早く安心と、にぎわいのある日常を取り戻し、この国の未来を切りひらいていく」と述べました。