新型コロナ感染2万人超え 自宅療養者への往診は?代行支援は?

新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。

東京都は過去最多の5773人。全国でも初めて2万人を超え、1日の発表としては過去最多となりました。

自宅療養者も急増する中、往診に当たる診療所や買い物などの代行を行っている自治体は、対応に追われています。

13日は午後8時現在、全国で20365人の感染が発表されました。
5773人となった東京都のほか、神奈川県(2281人)、埼玉県(1696人)、千葉県(1089人)などでも過去最多を更新しました。

1週間平均で比較しても…

1週間平均での新規感染者数も全国で増え続けています。

NHKは各地の自治体で発表された感染者数をもとに、1週間平均での新規感染者数の傾向について前の週と比較しています。

8月12日までの1週間では、前の週と比べて1.24倍となり、前週比が1倍を超える「増加」が7週間続いています。

東京の自宅療養者 2万人超え

急速な感染拡大が続く東京都内では、自宅で療養する人が12日、初めて2万人を超えました。

1か月前の11.3倍に急増していて、入院の調整が難航し自宅での療養を余儀なくされる人も相次いでいます。

今回の第5波では、自宅で療養中に亡くなる人が都が把握しているだけでもすでに3人いて、体調の急変に保健所や都のフォローアップセンターの対応が追いつかないケースも出ています。

専門家は、都内の医療提供体制は「深刻な機能不全に陥っている」と指摘していて、救急患者の受け入れも困難となるなか、自宅療養者の体調の悪化を察知して、必要な医療を速やかに届けることが急務となっています。

訪問診療ならではの難しさも

自宅療養者への訪問診療を行っている医師は危機感を強めています。

東京・板橋区で在宅医療を行う「板橋区役所前診療所」は、都の依頼を受けて新型コロナウイルスの自宅療養者の往診も行っています。
ことし6月までの2か月間に対応したのは合わせて2件でしたが、先月の連休明けから一気に増え、今では多い日で1日10件にのぼるということです。

自宅療養者の急増に対応するため、ふだん診ている患者のうち状態が安定している人には薬の処方のみを行うなどして訪問数を半分程に制限せざるをえなくなっているということですが、それでも追いつかないほど依頼が相次いでいるということです。

診療所の鈴木陽一副院長は「感染が急拡大して自宅療養者が増えていくことは予想していたが、その渦中に入ってみるとかなり厳しい状況だ。通常の定期的な診療をある程度制限しないと自宅療養者を診ることができないが、なんとかしわ寄せが出ないようにしたい。在宅診療を20年近くやっているが、こぼれてしまう人がいるのではないかと心配している」と話しています。

さらには、在宅で診察する難しさも。
11日に保健所の依頼で訪問した患者のなかには、生後8か月の赤ちゃんがいました。

家族3人全員が感染したということで、赤ちゃんは高熱と下痢が続いていますが、血液中の酸素飽和度をはかるパルスオキシメーターは届いていませんでした。

医師は持ち合わせていたパルスオキシメーターを赤ちゃんの指にはめようとしましたがうまくいかず、測定することができませんでした。

幸い、聴診では異常はなく呼吸も安定していたため、引き続き在宅で様子を見ることになりました。
また、60代の男性は血中の酸素飽和度の値が低く、聴診したところ肺炎を起こしている可能性が高いことがわかりました。

糖尿病などの持病もあるため入院が必要だと判断して保健所に連絡しましたが、この日は受け入れ先が見つかりませんでした。

医師は急きょ、自宅で酸素を吸入できる機器を手配しようとしますが、在庫が少なく届けることができても夜間になると言われ、別の会社に依頼してなんとか対応することができました。

鈴木副院長は「肺の画像診断が行えないなど病院と同じようにはいかず、自分の判断が本当に正しいのか、難しいと感じる。入院していたら毎日定期的に脈拍や呼吸などの数値を確認するが、在宅では必ずしもそうではなく、急変した場合に誰が気付くのかという危うさがある」と指摘します。
さらに、自宅療養者の診察はそのつど新しい防護服を着て、診察が終わるとかばんや靴の裏まで消毒するなど感染対策を徹底しながら行います。

保健所への連絡や薬の処方なども含めると1件当たり通常の訪問診療の倍以上の時間がかかるということです。

鈴木副院長は「新型コロナはかぜとは違い、熱やせきも長く続くので自宅療養では不安があると思うし、そんななかで保健所に連絡がとりづらくなっていたり入院がしづらくなっていたりするので、なおさら不安になるのも理解できます。この暑さの中、体力は消耗するができるかぎり力を注いでいきたい」と話していました。

自治体の代行支援 希望者が急増

神奈川県海老名市では、市の職員が食料品を買い物したりゴミ出しを代行したりする支援を希望する人が急増しています。

神奈川県では1日に発表される新型コロナウイルスの感染者が13日まで17日連続で1000人を超え、12日の時点で自宅で療養しているのは1万1900人余りにのぼります。
こうした中、神奈川県海老名市は自宅で療養している人のうち、家族の支援が得られない人を対象に、市の職員が食料品や日用品の買い物、ゴミ出しの代行の支援を行っています。

12日は、自宅で療養している人から、飲み物の購入依頼が入り、担当者が市内のスーパーから牛乳などを届けていました。

対応職員増やし体制強化へ

海老名市は、県から提供されたリストをもとに6チーム、12人の職員が電話をかけていますが、支援の希望は増え続けているということです。

体調の悪化を訴える人が救急搬送されたケースもあるということで市は対応する職員を増やして支援体制を強化する方針です。
海老名市危機管理課の志村政憲係長は、「容体の急変をおそれて、毎日電話をかけてほしいと希望する人も増えていて消防とも連携している。市民に寄り添った生活支援をしたい」と話していました。

舘田教授「この1年半でいちばん厳しい状況になりつつある」

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は、医療体制について「第4波のときに大阪や関西で非常に厳しい状況になったのと同じようなことがいま首都圏で見られ、全国的に非常に厳しい状況に向かいつつある。東京都ではこれまでにない重症者数になっていて、入院もままならない中で、重症化あるいは亡くなる人も出てくる状況になっていることを認識する必要がある。また、沖縄県では医療の供給体制がぜい弱な部分があり、重症患者が次第に増えてきている状況を考えると、医療のひっ迫から崩壊につながらないよういま対策しなければならない」と強調しました。

そのうえで舘田教授は「とにかくこの1週間、2週間が非常に大事な時期になる。百貨店など大規模商業施設を含めて人が集まる場所に対して休業要請をするなどして人の動きを止めることを考えておかないといけない。この1年半でいちばん厳しい状況になりつつあるということを共有していただいて、お盆はできるだけ移動を控え、自宅の周りの近場で過ごしてほしい。マスクを適切に使うことはもちろん、換気や人と人との距離を取る、人と接触する時間を短くする、これらの感染対策を徹底することが重要だ」と訴えました。