社会

新型コロナ 都内で自宅療養急増「こぼれてしまう人いるかも」

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大するなか、東京都内では自宅で療養する人たちが急増し、訪問診療を行う診療所には往診の依頼が相次いでいます。通常の診療を制限して対応していて、医師は「こぼれてしまう人がいるのではないか」と危機感を強めています。
東京 板橋区で在宅医療を行う「板橋区役所前診療所」は、都の依頼を受けて新型コロナウイルスの自宅療養者の往診も行っています。

ことし6月までの2か月間に対応したのは合わせて2件でしたが、先月の連休明けから一気に増え、今では多い日で一日10件に上るということです。
11日は、ふだんから訪問診療を行っている認知症や慢性疾患などの患者に加え、医師2人で新型コロナの患者合わせて10人を往診しました。

このうち60代の男性は糖尿病などの持病があり、血液中の酸素飽和度は入院が必要な値でしたが、保健所に連絡したところ「きょうは厳しい」と言われ、医師は自宅で酸素を吸入できる機器を手配していました。

自宅療養者の急増に対応するため、ふだん診ている患者のうち状態が安定している人には薬の処方のみを行うなどして、訪問数を半分ほどに制限せざるをえなくなっているということですが、それでも追いつかないほど依頼が相次いでいるということです。

この日も、移動中もひっきりなしに保健所から電話が入り、そのたびに車を止めて本人の症状を聞き取っては訪問する順番を決め直していました。

板橋区役所前診療所の鈴木陽一副院長は「感染が急拡大して自宅療養者が増えていくことは予想していたが、その渦中に入ってみると、かなり厳しい状況だ。通常の定期的な診療をある程度制限しないと自宅療養者を診ることができないが、なんとかしわ寄せが出ないようにしたい。また、新型コロナ特有の肺の異常を画像診断もなく聴診だけで見極めることは難しく、急変した場合に誰が気付けるのかという危うさがあると思う。在宅診療を20年近くやっているが、こぼれてしまう人がいるのではないかと心配している」と話しています。

訪問診療の医師「急変したら誰が気付くのか」

訪問診療を行っている医師は新型コロナウイルスの感染者を在宅で診察する難しさを指摘します。

11日、保健所の依頼で訪問した患者の中には、生後8か月の赤ちゃんがいました。

家族3人全員が感染したということで、赤ちゃんは高熱と下痢が続いていますが、血液中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターは届いていませんでした。

医師は持ち合わせていたパルスオキシメーターを赤ちゃんの指にはめようとしましたがうまくいかず、測定することができませんでした。

幸い、聴診では異常はなく呼吸も安定していたため、引き続き在宅で様子をみることになりました。

また、60代の男性は血中の酸素飽和度の値が低く、聴診したところ肺炎を起こしている可能性が高いことがわかりました。

糖尿病などの持病もあるため入院が必要だと判断して保健所に連絡しましたが、この日は受け入れ先が見つかりませんでした。

医師は急きょ、自宅で酸素を吸入できる機器を手配しようとしますが、在庫が少なく、届けることができても夜間になると言われ、別の会社に依頼してなんとか対応することができました。
板橋区役所前診療所の鈴木陽一副院長は「肺の画像診断が行えないなど病院と同じようにはいかず、自分の判断が本当に正しいのか難しいと感じる。入院していたら毎日定期的に脈拍や呼吸などの数値を確認するが、在宅では必ずしもそうではなく、急変した場合に誰が気付くのかという危うさがある」と指摘します。

さらに、自宅療養者の診察は、そのつど新しい防護服を着て診察が終わるとかばんや靴の裏まで消毒するなど感染対策を徹底しながら行います。

保健所への連絡や薬の処方なども含めると、1件当たり通常の訪問診療の倍以上の時間がかかるということです。

鈴木副院長は「ものすごいスピードで防護服がなくなっていきます。新型コロナはかぜとは違い、熱やせきも長く続くので自宅療養では不安があると思うし、そんな中で保健所に連絡がとりづらくなっていたり入院がしづらくなっていたりするので、なおさら不安になるのも理解できます。この暑さの中、体力は消耗するが、できるかぎり力を注いでいきたい」と話していました。

新型コロナ以外の診療に影響

感染拡大で新型コロナウイルス以外の診療にも影響が出始めているということです。

板橋区役所前診療所では慢性疾患の患者の在宅医療も行っていますが、今月2日、呼吸不全の疾患がある60代の女性の容体が急変しました。

医師は救急車を呼びましたが板橋区内で受け入れ先が見つからず、女性は一時、心停止の状態になりました。

医師が呼吸を介助する機器で救命しながら受け入れ先を探し、1時間近くたってようやく新宿区の病院に搬送され、一命をとりとめたということです。

また、新たに訪問診療を希望する患者も増えています。

入院すると感染対策で面会できなくなったり、みとりに立ち会えなかったするため、自宅で過ごしたいという末期のがん患者や、新型コロナの専用病床を確保するために入院が延期された人たちだということです。

新規の依頼は去年までは1か月におよそ30件でしたが、ことしに入り40件から50件に増えているということです。

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