「患者、断らざるをえない」“搬送困難”過去2番目の多さに

「患者さんの受け入れを断らざるをえない」

新型コロナウイルスの患者が増えるスピードは、各地の病院が病床を増やす動きを上回り、受け入れられない事態が起きています。

救急患者が「搬送困難」になるケースは1週間に2897件に上り、調査を始めてから2番目の多さとなりました。

総務省消防庁は患者の搬送先が決まるまでに病院への照会が4回以上あったケースなどを「搬送が困難な事例」として、県庁所在地の消防本部など全国の52の消防機関の報告をもとに、毎週取りまとめています。

8月8日までの1週間では2897件と前の週から521件増え、5週連続の増加となりました。

比較調査を始めた去年4月以降では、最多となったことし1月中旬の3317件に次いで2番目の多さとなっています。
地域別にみますと、
▽東京消防庁管内が1532件(前週比+240件)
▽横浜市消防局が267件(前週比+107件)
▽千葉市消防局が115件(前週比+39件)
▽川崎市消防局が84件(前週比+37件)と、
首都圏で増加が目立ちます。

また、
▽札幌市消防局で121件(前週比+5件)
▽大阪市消防局が279件(前週比+44件)
▽福岡市消防局が45件(前週比+26件)
などとなっています。

このうち、体温が37度以上で呼吸困難の症状があるなど新型コロナウイルスの感染が疑われるケースも急増していて、今月8日までの1週間で1387件と前の週までの1週間(991件)のおよそ1.4倍となりました。

病院「受け入れ断らざるをえない」

病床がひっ迫する地域の一つ、神奈川県。

入院患者は11日の時点で、1344人と1か月前のおよそ2.7倍に増えています。

最初は軽症や無症状だった人が急激に悪化するケースも増えていて、すぐに使える病床の使用率は79%まで上がりました。

中でも重症患者はこれまでで最多の182人に上っていて、病床の使用率は97%とほぼ満床の状態です。

各地の病院では病床を増やしていますが、患者が増えるスピードがはるかに上回り、受け入れできない状態になっています。
横浜市鶴見区にある「済生会横浜市東部病院」では11日までに、コロナ用病床を救命救急センターなどに合わせて28床に増やしました。

しかし、受け入れを求める電話が朝から相次いで、増やした病床はすぐに埋まり、日中だけで11件の要請を断らなければなりませんでした。
影響は新型コロナ以外の救急医療にも及んでいます。

新型コロナの治療には人手がかかることから、センターで受け入れることができるコロナ以外の救急患者は通常の半分以下になっていて、交通事故や急病などの患者を受けられないケースも出ているということです。
清水正幸 救命救急センター長
「かなり患者さんの受け入れを断らざるをえない状況になっています。病院としては最大限病床を増やしていて、まだ感染拡大のピークが見えない中で、これから先どう対応するか頭を悩ませています」

「もう行くところがない」

神奈川県では新型コロナの患者について、地域で受け入れ先が見つからない場合や、自宅療養中に悪化した場合は、県庁に設置した24時間態勢の医療危機対策本部で県内全域で受け入れ先を探しています。

しかし、ホワイトボードに書かれた各病院の受け入れ可能な患者数の欄にはゼロが並んでいます。

特に重症用の病床はほぼ満床の状態で、11日は担当の医師が重症化した50代の男性を受け入れてくれる病院を探して、電話をかけ続けていました。

入院先がその日のうちに見つからない患者は、多い日は100人近くに上っていて、2か月前ならすぐに入院させていたような容体の人でも、できるだけ自宅療養を続けてもらっているといいます。

担当の医師
「重症患者はもう基本的に行くところがありません。1日に何度も電話して、たまたま空いたところになんとか受け入れてもらっているのが現状です。自宅で症状が悪化した人に、『もうちょっと自宅で頑張りましょう』と言わなければならないのがいちばんつらいです」