急増する自宅療養者 もし、自分がそうなってしまったら…

新型コロナウイルスの急速な感染拡大で東京都では10日、新たに2000人を超える感染が確認され、重症者は過去最多となりました。
自宅療養の患者も増加していて、都内では重症化して救急搬送されたものの100を超える医療機関に受け入れを断られるケースも起きています。
もし、自宅療養を余儀なくされたら…。家族への感染防止策や症状悪化の兆候に気付くポイントを、専門家に聞きました。

東京 重症者が過去最多

東京都内では10日、新たに2612人の新型コロナウイルスへの感染が確認され、1週間前の火曜日より1097人減りました。

一方、都の基準で集計した10日時点の重症の患者は176人でした。第3波のことし1月20日の160人を上回り、これまでで最も多くなりました。

このほか、緊急事態宣言が出ている地域では
▽神奈川県で1572人
▽埼玉県で1166人
▽千葉県で860人
▽大阪府で697人
▽沖縄県で332人の
感染が新たに確認されました。

約120の医療機関に受け入れ断られるケースも

都内では症状が悪化しても入院先がすぐに見つからないケースも起きています。自宅で療養していた50代の患者が重症化して救急搬送された際、およそ120の医療機関に受け入れを断られていたことがわかりました。

都内に住む50代の男性は、今月上旬に発熱の症状が出て陽性と判明したあと自宅で療養していました。

しかし2日後には呼吸の状態が悪くなるなど重症化し救急搬送されましたが、およそ120の医療機関に受け入れを断られたということです。

「感染者数減らさないかぎりずっと続く」

そして搬送開始から5時間余りたって日本医科大学付属病院で受け入れが決まり、入院しました。

この病院は緊急性の高い重症患者に対応する3次救急の指定病院ですが、満床の状態が続いていて、消防などから要請が入っても断らざるをえないケースが相次いでいるということです。

日本医科大学付属病院高度救命救急センター 横堀將司センター長は「こんなにも収容の依頼が多く来るというのは今までに経験がなかったこと。助かる命が助からなくなってくる可能性は十分に考えなければいけない。感染者数を減らさないかぎりずっとこれは続く」と話しています。

自宅療養が急増 緊迫する保健所

都内では自宅で療養する人が9日の時点で1万7356人に上り、1か月前の11.4倍になりました。保健所では容体に変化がないか確認に追われています。

東京 江戸川区の保健所ではほかの部署から応援を集め、通常の3倍の80人態勢で、体調の変化がないかや濃厚接触者がいないか確認しています。
職員が一人一人に電話をかけ、体温や症状の変化とともに区が貸し出した「パルスオキシメーター」を使って体内に酸素をどの程度、取り込めているか測定してもらい数値を聞き取っていました。

それでも容体が悪化する人が相次ぎ、およそ1週間、自宅療養を続けていた60代の男性が血液中の酸素の数値が急激に悪化していることが分かり、保健師が医師と相談しながら受け入れ先の病院を探す場面もみられました。都に入院調整を依頼した結果、男性は入院できたということです。

江戸川区では、さらに感染が拡大すればこうした健康観察が難しくなり、容体が急激に悪化した人を察知できるか危機感を強めています。

江戸川区健康部の天沼浩部長は「(療養者に)なかなか連絡がつかないケースもあり、容体が悪化したのではないか、部屋で倒れているのではないかと非常に緊張した状況になっている。急に容体が悪化することがあってはいけないので毎日健康状態を確認している。重症化してから入院となると非常にリスクが高く、これ以上、感染が増えてしまったら入院先がないという事態になりかねない」と話していました。

自宅療養 8つのポイント

もし、自宅での療養を余儀なくされた時、個人で何ができるのか。

家族への感染を防ぐための対策や症状の悪化に気付くのに必要なことについて、感染症対策に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉教授に聞きました。

松本教授は、東京都が作成した自宅療養者向けのハンドブックで紹介されている基本的な8つのポイントを最低限、守ってほしいと指摘しました。
▽部屋を分けること
▽感染した人の世話をする人はできるだけ限られた人にすること
▽感染した人や世話をする人はお互いにマスクをつけること
▽こまめに手を洗うこと
▽日中はできるだけ換気をすること
▽手のよく触れる共用部分を掃除・消毒すること
▽汚れたリネン・衣類を洗濯すること
▽ゴミは密閉して捨てることです。

すべて行うことが難しい場合、例えば「部屋を分けること」が難しい場合は、同じ部屋でも仕切りを置いたり過ごすエリアを分けて距離をとったりするなど、できるだけ工夫をしてほしいとしています。

症状悪化の兆候に気付くには

自宅療養中に症状が悪化し、治療が間に合わずに亡くなるケースも相次いでいます。こうした最悪の事態を防ぐためにどういったことに気をつければいいのか。

松本教授は「肺炎の悪化に伴って呼吸状態が悪くなる兆候を見逃さないことが大事だ」と指摘します。

兆候を読み取るためにできることとして「パルスオキシメーター」で血液中の酸素飽和度をこまめにはかり、急激に下がったり90%を切ったりした場合、すぐに保健所に相談することをあげています。

「パルスオキシメーター」がない場合でも、肩で息をしていたり顔色が悪く唇が青ざめていたりする場合には呼吸状態が悪化している可能性があるとして、そうした状態を家族に気付いてもらうことなどが大事だとしています。

1人暮らしの療養では

1人暮らしで自宅での療養を余儀なくされた場合、どうすればいいのでしょうか。

松本教授は「遠く離れている家族でも友人でもいいので、こまめに連絡を取り、連絡がなければ悪化したと早めに気付いてもらえる状態を築いておく必要があると思う。直接保健所に電話してもつながらず我慢している人もいるかもしれないが、さらに悪化すると救急車も呼べない状態になりかねないので、助けてもらえる人をある程度決めて事前に連絡しておくことが大事だ」と指摘しています。

さらに松本教授は「自分が自宅療養することを想定して解熱鎮痛薬や飲料水、食料品などを蓄えておいてほしい」と、ふだんからの備えが大切だとしたうえで、備えがない場合には家族や友人に玄関の外まで食料品を届けてもらうことなどを勧めています。

ワクチン 50代以下への接種加速求める 知事会

こうした感染拡大を防ぐ切り札とされるのがワクチン接種。河野規制改革担当大臣は全国知事会とのオンラインの会議で、感染力の強い「デルタ株」の影響で感染が拡大しているとして、接種の推進に連携して取り組む考えを強調しました。

この中で、河野規制改革担当大臣は「先月末に高齢者への2回のワクチン接種をおおむね完了することができた。高齢者が重症化しているケースが目に見えて減っているのは、皆様のおかげで接種がかなり速やかに行われたからだ」と述べました。

そして「『デルタ株』の感染力が強く感染が拡大しているが、しっかりとワクチンを打って何とか重症化を抑えていきたい」と述べ、さらに接種を進めるため知事会と連携して取り組む考えを強調しました。

これに対して全国知事会の飯泉会長は「経験したことのない『感染爆発』と言ってよく、まさに正念場を迎えている。なるべく早く希望する国民へのワクチン接種が進むよう、感染状況を踏まえてさまざまな工夫を凝らしてほしい」と述べ、50代以下への接種の加速化を求めました。

1回目接種は全人口の46%余

政府が10日に公表した最新の状況によりますと、国内で少なくとも1回、新型コロナウイルスのワクチンを接種した人は合わせて5962万9433人で全人口の46.9%となっています。2回目の接種を終えた人は4328万3582人で、全人口の34.0%となりました。

また、高齢者で少なくとも1回ワクチンを接種した人は3109万6194人で高齢者全体の87.6%となりました。

2回目の接種を終えた高齢者は2895万6774人で81.6%と、8割を超えています。

全人口にはワクチン接種の対象年齢に満たない子どもも含みます。
また、実際はこれ以上に接種が進んでいる可能性があり、今後、増加することがあります。