新型コロナ感染拡大 ベトナムの6割超の日系企業「帰国を検討」

東南アジアでは新型コロナウイルスの感染拡大が続き、現地で働く日本人の間で不安が高まっています。ベトナムにある日本の商工会議所が、現地の日系企業にアンケートを行ったところ、6割を超える企業が帰国を検討していることがわかりました。

ベトナムではことし4月末以降、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、日系企業が集中する南部のホーチミンでは、外出の禁止など厳しい感染対策がとられています。

こうした中、ホーチミンの日系企業でつくるホーチミン日本商工会議所が、会員の日系企業を対象に、駐在員やその家族の帰国に関する緊急アンケートを行ったところ、半数近い475社から回答が寄せられ、その66%に当たる314社が「一時帰国」、または将来も現地に帰任する予定のない「本帰国」を検討していることがわかりました。

帰国の理由については、回答した駐在員や家族の5割が「日本でワクチンを接種するため」と答えたほか、3割は「日本に退避するため」としています。

アンケートでは、現地の医療施設について「衛生環境やサービスの質が日本とは比較にならず、当局によって強制的に連れて行かれることに心理的抵抗がある」とか「子どもの命の危険を感じる」といった不安の声が多く寄せられました。

ホーチミン日本商工会議所の水嶋恒三会頭は「グローバルサプライチェーンの一翼を担うベトナムの製造拠点が停止することをおそれ、残る人も多かった。しかし、状況がさらに悪化すれば帰国せざるをえなくなり、世界のメーカーの操業にも悪影響が出る」と懸念を示しています。

東南アジアの感染拡大

東南アジアでも、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の感染が拡大し、各国で、過去最悪の感染状況が続いています。

東南アジアで最も感染状況が悪化しているのはインドネシアで、連日、3万人から5万人の新たな感染者が確認されているほか、1日当たりの死者も1500人を上回る日が続き、8月4日には累計の死者数が10万人を超えました。

また、在留邦人の数がおよそ8万人と東南アジアで最も多いタイでは、今月に入って1日当たりの新たな感染者が初めて2万人を超え、首都バンコクとその周辺では、夜間の外出を原則禁止とする厳しい規制が続いています。

さらに「感染対策の優等生」と言われてきたベトナムも、7月中旬から連日、7000人を超える感染者が確認されるようになりました。

東南アジアで感染状況が急速に悪化している要因には「デルタ株」の感染力の強さにくわえて医療体制がもともとぜい弱なことがあげられ、インドネシアやベトナムでは「すでに医療現場は崩壊し、大勢の重症患者が放置されている」といった指摘もあります。

また、ワクチン接種率の低さも大きな課題で、イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、今月4日の時点で、ワクチン接種を終えた人の割合は▽インドネシアが8.0%、▽タイが5.9%、▽ベトナムは0.8%にとどまっています。