広島 松井市長「核兵器と共存ありえない」禁止条約参加求める

広島に原爆が投下されて6日で76年となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大で例年どおりの追悼が難しくなっていますが、被爆地 広島では犠牲者を追悼し、核兵器のない世界の実現に向けた訴えを国内外に発信する一日が続いています。

広島市の平和公園で行われた平和記念式典には、被爆者や遺族の代表をはじめ、菅総理大臣のほか83の国の代表などが参列しました。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、去年に引き続き式典の規模が縮小され、参列者は例年の1割に満たない751人となりました。

式典ではこの1年に亡くなった人や死亡が確認された人、合わせて4800人の名前が書き加えられた、32万8929人の原爆死没者名簿が原爆慰霊碑に納められました。
そして、原爆が投下された午前8時15分に参列者全員で黙とうをささげました。
広島市の松井市長は平和宣言で「人々を無差別に殺害する核兵器との共存はありえない」と述べたうえで、日本政府に対し、被爆者の思いを誠実に受け止めて、ことし1月に発効した核兵器禁止条約に参加し、核保有国と非保有国の橋渡し役をしっかりと果たすよう求めました。

そして「黒い雨」をめぐる裁判で国が上告を見送ったことを踏まえ、原告以外の黒い雨体験者を早急に救済するよう求めました。
これに対し菅総理大臣は「核軍縮を進めていくためには、さまざまな立場の国々の間を橋渡ししながら、現実的な取り組みを粘り強く進めていく必要がある。核兵器不拡散条約体制の維持・強化が必要だ」と述べ、核兵器禁止条約には直接触れませんでした。

一方、黒い雨については「原告の皆様と同じような事情にあった方々についても救済できるよう早急に検討を進める」と述べました。
式典に参列した「黒い雨」の裁判で原告団長を務めた高野正明さん(83)は「黒い雨を浴びて亡くなった人がたくさんいる。命あるかぎり実相を伝えていきたい」と話していました。

また、原告の高東征二さん(80)は「手帳を取得できたという意味で去年とは違う式典だった」としたうえで、式典前に菅総理大臣とことばを交わし、まだ手帳の交付を受けていない人に対して速やかに手続きを進めてほしいと要望したことを明らかにしました。

被爆者の平均年齢はことし84歳に迫り、高齢化が一層進む中、若い世代がSNSで式典の様子を発信するなど、被爆の記憶を次の世代につなごうという動きも出ています。

被爆地 広島では犠牲者を追悼し、核兵器のない世界の実現に向けた訴えを国内外に発信する一日が続いています。

菅首相 あいさつ一部読み飛ばし 陳謝

菅総理大臣は平和記念式典に出席したあと記者会見し「先ほどの式典のあいさつの際、一部を読み飛ばしてしまい、この場をお借りしておわびを申し上げる」と陳謝しました。

菅総理大臣のあいさつの文案には「わが国は核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要です」などと記されていました。

菅首相 原爆資料館を視察

菅総理大臣は平和記念式典に出席したあと原爆資料館を訪れ、熱線と爆風で街が一瞬にして破壊された様子を再現した展示などを視察しました。

この中で菅総理大臣は、広島の市街地の模型にコンピューターグラフィックスで制作した映像を映すことで、熱線と爆風で街が一瞬にして破壊された様子を再現する「ホワイトパノラマ」という展示を視察しました。

また、亡くなった子どもたちが着ていた衣服や、やけどを負った人の写真などを見て回り、資料館を訪れた各国の元首や首脳たちがメッセージを記載する芳名録に「内閣総理大臣 菅義偉」と記しました。

立民 枝野代表「核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を」

立憲民主党の枝野代表は、平和記念式典に出席したあと記者団に対し「日米同盟と唯一の戦争被爆国であることの両面をしっかり踏まえるなら、まずは核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を一日も早く実現すべきだ。そこで戦争被爆の実態などを世界に発信していくことが、条約の実効性を高め、核保有国と非保有国の橋渡しにつながっていく」と述べました。

公明 山口代表「核軍縮への橋渡し役 あらゆる努力すべき」

公明党の山口代表は、平和記念式典に出席したあと記者会見し「いわゆる黒い雨の訴訟が確定したことで原告と同様の状況にある人たちも救済される道が開かれた。政府や広島県、広島市は救済の範囲や基準などについて可能なかぎり早く確定し救済すべきだ」と述べました。

一方で、ことし1月に発効した核兵器禁止条約について山口氏は「わが国政府は直ちには批准しないという立場だが、核保有国と非保有国の対話を促して軍縮につなげていく橋渡し役を目指しているので、その方向であらゆる努力をすべきだ。締約国会議にオブザーバーとして参加することも重要なステップだ」と述べました。

共産 田村政策委員長「菅政権 日本の役割全く理解していない」

共産党の田村政策委員長は記者会見で、核兵器禁止条約への参加に否定的な政府の姿勢について「日本の役割を全く理解していないのが菅政権だ。核兵器廃絶の具体的プロセスを議論して決めていく必要性を、唯一の戦争被爆国が率先して主張しなくてどうするのか」と批判しました。

一方で、菅総理大臣が式典のあいさつの一部を読み飛ばしたことについて「あまりにも不誠実で情けない。何より『被爆者のことばや願いにちゃんと目を見開いて向き合いなさい』と言いたい」と述べました。