オリンピック スポーツクライミング 失意の楢崎智亜

東京オリンピックの新競技、スポーツクライミング。5日に行われた男子複合に金メダルの最有力候補として臨んだ楢崎智亜選手は、4位でメダルにも届きませんでした。戦いを終えたエースは「反省点だらけ。4年に1回というチャンスの少なさと、力を出し切ることの難しさを感じた」と声を落としました。

崩れたシナリオ

複合決勝は8人で争われる予定でしたが、スピードが圧倒的に強いフランスの選手がけがのため棄権し、7人で争われました。
これにより、スピードが得意の楢崎選手は、1位を獲得できる可能性が高まりましたが、楢崎選手は「対戦相手の持ちタイムが自分より全員遅いので、戦い方に迷いが生じた」と逆に戸惑ったと言います。
そのスピードの決勝では「欲が出て、『いいタイムを出して勝ちたい』と思ってしまった」と、心の内を語りました。
すると、スタート直後に足を滑らせるミスが出て、2位にとどまりました。それでも、楢崎選手は「最低限の2位は取れた」と、次に控える最も得意とするボルダリングで巻き返しを図りました。
しかし、3つの課題のうち楢崎選手が得意とするダイナミックな動きが求められる2つ目の課題を登り切ることができず、ここも3位と伸びませんでした。

「スピードとボルダリングを終えた時点で勝負を決めていたい」という戦前に描いていたシナリオは崩れました。
楢崎選手は「オリンピックで活躍すればクライミングの知名度が上がり、もっと注目されるようになる。自分のモチベーションも間違いなく上がる。活躍することが僕の使命」と、クライミング界を背負って初の大舞台に臨みました。

ただ、楢崎選手の関係者はオリンピックの1か月前、「本来は楽しく自由に登りたい選手なのに、最近の心理状態がよくない。『○○しなければならない』にはまっている」と使命感の強さを心配していました。

金メダルへの周囲からの期待と、自分自身への期待。そのいずれもがプレッシャーになっていたのではないか。決勝の後、そう尋ねると「自分でも今までの大会の成績から確実にいけると思っていた。そこは、少し慢心もあったのかな」とあくまで自分だけを責めました。

それでも、スピード、ボルダリング、リードと、使う筋肉も、求められる能力も全く異なる3種目をどれも手を抜かずに強化してきたことは、日本のエースにふさわしい姿勢でした。

初のオリンピックを苦い結果で終えた楢崎選手は「スポーツクライミングには、いろいろな動きの登りがあることを見せられたと思う。そのうえで次は、いいパフォーマンスを見せたい」と出直しを誓いました。