“爆発的感染拡大 2週間後には1万人超も” 都モニタリング会議

東京都のモニタリング会議で、専門家は「経験したことのない爆発的な感染拡大が進行している」としたうえで、今の増加ペースが続けば2週間後には新規陽性者の7日間平均が1万人を超えるおそれがあるという予測を示しました。また「入院患者や自宅療養者が急増していて医療提供体制がひっ迫している」として、緊急時の体制へ移行する必要があると指摘しました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

そして、新規陽性者の7日間平均は4日時点でおよそ3443人と、1か月余りで7倍近くに急増していると説明し、専門家は「これまで経験したことのない爆発的な感染拡大が進行している」と指摘しました。
また、今の増加比が継続した場合、7日間平均は1週間後の今月11日には1.78倍の6129人、2週間後の今月18日には3.17倍の1万909人に上ると予測し「危機感を現実のものとして共有する必要がある」と強調しました。

一方、4日時点で入院患者は3399人、重症患者は115人といずれも大きく増加し、専門家は「救急医療や予定手術などの通常医療の制限も含めて医療提供体制がひっ迫した状況にある」と指摘しました。

さらに、人工呼吸器などによる治療がまもなく必要になる患者も高い値で推移していることを説明し「急激な重症患者の増加は医療提供体制の危機を招く」と述べました。

また、入院患者だけでなく自宅療養者と入院か療養かなどを調整中の人も急増していることから「体調の悪化を早期に把握し速やかに受診できる仕組みなどのフォローアップ体制をさらに強化し、自宅療養中の重症化を予防する必要がある」としています。

そして「入院医療、宿泊療養および自宅療養の体制を緊急時の体制へ移行する必要がある」と指摘しました。

小池知事「限られた医療資源を最大限活用」

モニタリング会議のあと小池知事は記者団に対し、都内の医療提供体制について「緊急対応として入院重点医療機関を重症・中等症と軽症・中等症に役割を明確化する。ホテルでの宿泊療養施設も重点化し、大変増えている自宅療養者のフォローアップ体制をしっかり拡充していく」と述べました。

そのうえで「これからも医療機関や東京都医師会、保健所など関連するすべての方々と強固な連携を図る。医療資源は限られているので、それを最大限活用して医療提供体制の充実を図っていく。真に医療ケアが必要な方々に入院していただけるような体制をとっていく」と述べました。

専門家「この状況は有事そのもの」

モニタリング会議のあと国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は記者団に対し「新規陽性者数は本当に増加が急激で、われわれも未経験というぐらいの数を見ている。広がり自体も本当に爆発的な感染拡大の状況だ」と述べました。

そのうえで「この状況は健康危機と言うか有事そのもので、現実のものとしてみんなで共有する必要がある。この病気は、かかって苦しい目にあわないとつらさがなかなかわからないが本当に大変だ。われわれの身の回りに『自分も感染する』というリスクが来ており、いかにかからずに済むのかその方法をいま一度確認して身を守っていただきたい」と述べました。

都医師会副会長「療養者数増え続ければ持たなくなる」

モニタリング会議のあと東京都医師会の猪口正孝副会長は記者団に対し、都内の医療提供体制について「東京の医療機関のいろいろな特徴を生かしながら自宅療養をいかに安全に見ていくかや、宿泊療養とうまく連携しながら東京ならではの体制をとっていこうと考えている」と述べました。

一方で「この体制も療養者数が増え続ければいずれ持たなくなると思う。その時にわれわれが対応できるかというのは甚だ不安があり、ぜひ新規陽性者数を減らすことをお願いしたい」と述べました。

人工呼吸器などの治療必要の可能性高い人が最多に

都内では、入院患者のうち、人工呼吸器などによる治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人が、これまでで最も多い318人に上っています。

都の専門家は、毎週、行われるモニタリング会議で、医療機関で集中的な管理が行われている「重症患者に準じる患者」の人数を公表しています。

このうち、人工呼吸器またはECMOによる治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者は、4日時点で318人となりました。

1週間前の先月28日から58人増加し、これまでで最も多くなりました。

318人のうち、およそ半数の154人は鼻から高濃度の酸素を大量に送り込む「ネーザルハイフロー」という装置を使った治療が行われているということです。

専門家は、こうした患者が高い水準で推移していることから、重症患者がさらに増加するおそれがあるとしています。

専門家は「人工呼吸器の離脱までは長期間を要するため、ICUなどの病床の不足が危惧される」と述べ、危機感を示しました。

都内感染状況と医療提供体制 専門家の分析結果

5日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

【感染状況】
新たな感染の確認は、4日時点で7日間平均が3443.3人となり、前回・先月28日時点の1936.4人よりおよそ1500人増加しました。

専門家は「大きく増加し、予測を上回る値だ。6月30日のおよそ503人から、わずか5週間で7倍近くに急増した」と指摘しました。

増加比は前の週のおよそ178%で、およそ153%だった前回よりも25ポイント上昇しました。

専門家は「感染拡大がさらに勢いを増している。2週間後の今月18日の予測値は1万909人だ。この危機感を『現実のもの』としてみんなで共有する必要がある」と述べました。

今月2日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、20代が35.9%と最も多く、5週連続で30%を超えました。

次いで、
▽30代が21.5%、
▽40代が15.2%、
▽50代が10.4%、
▽10代が8.5%、
▽10歳未満が3.6%、
▽60代が2.9%、
▽70代が1.1%、
▽80代が0.7%、
▽90代以上が0.2%でした。

6月中旬以降、50代以下で全体の90%以上を占めていて、専門家は「若年層を含めたあらゆる世代が感染リスクがあるという意識をより一層強く持つよう啓発する必要がある」と指摘しています。

一方、比較的抑えられていた高齢者の感染者数が再び増加し始めていることが報告されました。

具体的には、65歳以上の高齢者は今週は596人で、309人だった前の週の2倍近くに増えています。

感染経路が分かっている人では、
▽同居する人からの感染が61%と最も多く、
次いで
▽職場が13.7%、
▽保育園や学校、それに高齢者施設や病院といった施設での感染が5.6%、
▽会食は5.2%でした。

専門家は「感染に気付かずにウイルスが持ち込まれ、職場、施設、家庭内など多岐にわたる場面で感染が確認されている」と述べました。

また、「新宿の複数の大規模商業施設で数十人規模のクラスターが発生していて、多くの人が集まる施設での感染防止対策を今まで以上に徹底する必要がある。オリンピックの競技場の周辺や沿道に大勢の人が集まり、応援する姿が見られている。屋外であっても密集、密接して大声で応援することは感染リスクが高いことを啓発する必要がある」と述べました。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路が分からない人の7日間平均は4日時点で2240人で、前の週からおよそ1000人増え、8週連続して増加しています。

また、増加比は、4日時点で179.8%と前回から22.4ポイント上昇し9週連続で増加しました。

専門家は「さらなる拡大を防ぐためには人流を十分に減少させ、これまで以上に徹底的に感染防止対策を実行する必要がある」と警戒を呼びかけました。

感染経路が分からない人の割合はおよそ66%で前の週より3ポイント上昇しました。

感染経路が分からない人の割合は40代では60%を超えていて、さらに、行動が活発な20代と30代では70%を超えています。

専門家は「感染経路が追えない潜在的な感染拡大が生じている。基本的な感染防止対策を徹底して行うことが必要だ」と指摘しています。

医療提供体制

検査の陽性率の7日間平均は4日時点で20.7%となり、前の週の先月28日時点の16.9%から大きく上昇しました。

専門家は「新規陽性者の急激な増加に伴い検査体制の強化が必要だ」としたうえで「検査を受けていない潜在的な陽性者が増加している可能性がある」として、症状がある場合は早期に検査を受けるよう呼びかけました。

入院患者は4日時点で3399人でした。

先月28日の時点より404人増加しました。

専門家は「医療提供体制がひっ迫する状況になっている」と強い危機感を示しています。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ87%と上昇傾向にあるとしています。

年代別にみると、40代と50代が合わせておよそ43%、30代以下も全体のおよそ35%を占めています。

専門家は「若年、中年層を中心とした入院患者が急増している。遅れて、この年齢層の重症患者も急速に増加している」と指摘しました。

また、保健所から都の入院調整本部に調整が依頼された件数は新規陽性者数の急増にともなって非常に高い値で推移していて、4日は450件ありました。

専門家は「翌日以降の調整への繰り越しや、自宅での待機を余儀なくされる事例が多数生じていて、調整が難航している」と指摘しています。

また、都の基準で集計した4日時点の重症患者は先月28日の時点より35人増えて115人となり、専門家は「大きく増加した」と指摘しました。

男女別では、男性95人女性20人です。

年代別では、50代が最も多く48人、次いで40代が22人、60代が19人、70代が15人、30代が6人、80代が3人、20代が2人でした。

専門家は「40代以上が重症患者全体の93%を占めている。それらの世代に対して、ワクチン接種は重症化の予防効果が期待されていることを啓発する必要がある」と指摘しています。

そのうえで「今週は10歳未満と20代、30代でも新たな重症例が発生している。肥満や喫煙歴がある人は若年であっても重症化リスクが高い」と指摘しました。

このほか、人工呼吸器かECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は4日時点で318人で、先月28日時点より58人増えました。

4日時点で陽性となった人の療養状況を先月28日時点と比べると、自宅で療養している人は7435人増えて1万4783人となり、2倍以上になったほか、都が確保したホテルなどで療養している人は16人減って1813人でした。

また、医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は5536人増えて9708人とおよそ2.3倍に増えました。

入院患者を含めた「療養が必要な人」全体の数は2万9703人で、先月28日時点の1.8倍に増加しました。

専門家は「自宅療養者と調整中の療養者が急増していて、今後もさらに増加することが予測される。体調の悪化を早期に把握し、速やかに受診できる体制をさらに強化し、自宅療養中の重症化を予防する必要がある」と指摘しました。

一方、今月2日までの1週間で新型コロナウイルスに感染した16人が亡くなりました。

このうち9人は70代以上でした。