まん延防止等重点措置 8県を追加 今月8日~31日 政府が決定

新型コロナウイルス対策で、政府はまん延防止等重点措置の適用地域に福島、茨城、栃木、群馬、静岡、愛知、滋賀、熊本の8県を追加し、期間は今月8日から31日までとすることを決めました。

政府は5日夕方、総理大臣官邸で新型コロナウイルス対策本部を開き、菅総理大臣のほか西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣らが出席しました。

そして感染状況の悪化を受けて「まん延防止等重点措置」の適用地域に福島、茨城、栃木、群馬、静岡、愛知、滋賀、熊本の8県を追加し、期間は今月8日から31日までとすることを決めました。

これによって重点措置の適用地域は北海道、石川、兵庫、京都、福岡の5道府県から、13道府県に拡大されることになります。

政府は、重点措置の適用地域では飲食店での酒の提供を原則、停止するなどの対策を徹底するとともに、医療提供体制の確保に取り組むことにしています。

そして、変異ウイルスの広がりに危機感をもって対応する必要があるとして、国民に対し基本的な感染対策の徹底のほか不要不急の外出の自粛や、お盆の時期の帰省や旅行は極力控えることなどを粘り強く呼びかけることにしています。

菅首相「経験したことのない感染拡大」

菅総理大臣は政府の対策本部で「首都圏をはじめ多くの地域でこれまでに経験したことのない感染拡大が進んでいる。感染力の強い『デルタ株』への置き換わりが急速に進み、東京では9割に達し、多くの地域で7、8割に達していると言われている。感染者数の急速な増加に伴い、これまで低く抑えられていた重症者数も増加しつつある」と指摘しました。

そのうえで、まん延防止等重点措置の適用地域では飲食店での酒の提供を原則停止し、テレワークの実施や不要不急の外出自粛を徹底する考えを強調しました。

そして菅総理大臣は「『デルタ株』は従来と比較にならない感染力を持つと言われており、国民の皆様には感染リスクに特に注意して行動し、夏休み期間も不要不急の外出や帰省、旅行は極力控えていただくようお願いする」と述べました。

前週との比較で分かる急拡大

新型コロナウイルスの新たな感染者は、5日に全国で1万5000人を超えて1日の発表としては過去最多となるなど、連日、過去最多を更新しています。

4日までの1週間の全国の新規感染者数は、前の週と比べて1.96倍と、急激に増加しています。

今回、新たにまん延防止重点措置の対象地域に追加される8県でも、
▼福島県で2.28倍
▼茨城県が2.28倍
▼栃木県で2.16倍
▼群馬県で3.40倍
▼静岡県で1.72倍
▼愛知県で1.97倍
▼滋賀県で2.53倍
▼熊本県で2.65倍と
1週間前の2倍前後、なかには3倍を超えているところもあり、感染が急拡大していることが分かります。

人口10万人あたりの感染者数は

また、現在の感染状況を人口10万人あたりの直近1週間の感染者数でみてみると、
▼福島県が33.42人
▼茨城県が49.69人
▼栃木県が45.86人
▼群馬県が43.31人
▼静岡県が25.41人
▼愛知県が23.56人
▼滋賀県が29.56人
▼熊本県が32.15人となっていて、
感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えるか、それに迫る数字となっていて、感染状況が悪化していることを示しています。

西村経済再生相 “全国で経験ない桁違いの感染拡大”

西村経済再生担当大臣は5日午前に開かれた「基本的対処方針分科会」のあと記者団に対し「全国に緊急事態宣言を出すくらい非常に厳しい状況にあるというご意見をいただいた。これまで経験したことのない桁違いの感染拡大であり、対策を徹底していく必要があるという強い危機感を共有した」と述べました。

そのうえで「まん延防止等重点措置になる地域では、地域をかぎってではあるが酒類やカラオケの停止など緊急事態宣言と同等の厳しい措置をお願いすることになる。新規陽性者の数を抑えないと医療提供体制の負荷が高まっていくので、都道府県と連携して対策を徹底していきたい」と述べました。

尾身会長「全国に緊急事態宣言の意見も」

「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は会合のあと報道陣の取材に応じ、まん延防止等重点措置の適用地域に8県を追加するとした政府の方針を了承したと述べました。

そのうえで「基本的に賛成はしたが一部の委員からは感染状況が下火にならない今の危機的な状況で、多くの市民に危機意識を共有してもらうためにも全国を対象にした緊急事態宣言を出すべきという意見もあった。ただ、宣言が出ている地域でさえ必ずしも接触の機会が減ったり人出が下がっていたりするわけでもなく十分な効果が出ていない。しっかりとメッセージを出し、対策をしなければ単に宣言の対象地域を拡大してもしかたがないという考えもあった」と説明しました。

また、尾身会長は取るべき対策について「ワクチン接種を進めることには議論の余地がない。また、少しでも具合が悪くなったら遠慮せずに検査をできる体制をつくるため、検査のキャパシティーを徹底的に強化することも重要だ。さらに医療関係者にもう一歩の努力をしてもらい、訪問診療の強化などを進めてもらう必要がある。こうした対策を進め政府にはわかりやすく納得感のあるメッセージを出してもらわなければいけない。感染がどんどん拡大している状況に歯止めをかけないと、ロックダウンのような対策を可能にする法整備さえ議論しなければならなくなってきてしまう」と述べ、強い危機感を示しました。

公明 山口代表 “医療体制保持など政府を挙げ対応を”

公明党の山口代表は党の中央幹事会で「デルタ株が猛威をふるいつつある状況なので、医療体制をしっかり保持しワクチン接種も着実に進めていけるよう政府を挙げて対応にあたってもらいたい。政府・与党として国民の不安を解消し、期待に応えられるよう全力を挙げていきたい」と述べました。

西村経済再生相 福岡の要請「厳しい措置でなんとか頑張って」

西村経済再生担当大臣は記者会見で、福岡県が緊急事態宣言を出すよう政府に要請したことについて「感染者が急激に増えている状況を共有しており、病床も、じわじわと厳しくなってきているが、福岡市や北九州市などで、午後8時までの飲食店の営業時間の短縮や、酒の提供停止といった、緊急事態宣言と同等の厳しい措置をとっている。この厳しい措置で、なんとか頑張っていただきたい。状況を日々、分析して共有しながら、専門家の意見も聴きながら、必要ならば、機動的に対応していきたい」と述べました。