専門家会合 重症化患者の入院体制確保 自宅待機患者の往診強化

新型コロナウイルスの感染者数が連日、各地で過去最多を更新する中、対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれました。
現在の状況について「全国の多くの地域でこれまでに経験したことのない感染拡大が続き、これまで低く抑えられていた重症者数も増加が続いている」として、重症化リスクの高い患者が確実に入院できる体制を確保しながら、自宅待機をしている患者への往診の強化など、重症化に迅速に対応できる体制を早急に整備するよう求めました。

4日開かれた専門家会合では、全国の感染状況について「首都圏だけでなく、全国の多くの地域で新規感染者数が急速に増加し、これまでに経験したことのない感染拡大が全国で続いている」と分析しました。

東京都など首都圏

地域別にみると、東京都では、過去最大規模の感染拡大で入院患者や重症者の増加が続いていて、自宅待機を余儀なくされている人や入院調整中の人が急増しているとしています。

また、東京都では、夜間の繁華街などでの人出が先週後半に増加に転じたほか、埼玉県や千葉県でも夜間の人出の減少がみられず、当面は首都圏での感染拡大の継続が避けられないと指摘しています。

沖縄県

沖縄県も、感染の再拡大で入院者数が急速に増加し、病床使用率が厳しい状況となっているほか、夜間・昼間の人出が再び増加し、感染拡大が続くことが避けられない状況だとしています。

大阪府

8月2日から緊急事態宣言の対象地域に追加された大阪府でも、急速な感染拡大が続き、入院者数や重症者数も増加していて、夜間の人出が依然多いため、感染拡大が続く可能性が非常に高いとしています。

感染力強い変異ウイルス デルタ株への置き換わり進む

専門家会合は、感染力が強い変異ウイルス、デルタ株への置き換わりが進む中、緊急事態宣言などによる人出の減少は限定的で、これまでにないスピードで感染が拡大し、重症者数も急速に増えているとしています。

さらに亡くなる人の数が今後増加に転じる可能性があるとして、急速な感染拡大を速やかに抑えることが必要だと訴えました。

「助かる命も助からない状況になること 強く懸念」

また、東京都ではすでに一般の医療の制限も起きていて、熱中症での搬送など、一般の医療への負荷も高まる中で「通常であれば助かる命も助からない状況になることも強く懸念される」と強い危機感を示しています。

そして、感染が急拡大する地域では、重症者や、中等症でも重症化リスクの高い患者が確実に入院できる体制を確保しつつ、自宅で待機する患者への往診の強化や、宿泊療養施設での医療の提供など地域の医療資源を活用して重症化にすぐ対応できる体制を早急に整備するよう求めました。

“商業施設や職場 学校の部活などでも感染 急速に拡大”

このほか専門家会合は、飲食店だけでなく、商業施設や職場、学校の部活などでも感染が急速に広がっているとして、改めてマスクや消毒、人との距離の確保や換気といった基本的な対策を行うことや、テレワークの推進や症状のある人の出社自粛を徹底すべきだとしています。

また、飛まつが飛ぶのを防ぐ効果の高い不織布マスクを使うことや、今後の3連休やお盆休みなどでふだん会わない人と会うことによって感染リスクが高まるため、県境を越えた移動を控えるよう呼びかけました。

脇田座長 自宅療養の政府方針「重症化リスク見極める体制必要」

専門家会合のあと脇田隆字座長が会見し、重症患者などを除いて自宅療養を基本とする政府の方針について「重症化リスクの高い患者さんをしっかりケアできる体制を作るのは重要で、きょうの会合でも議論された。重要なのは医療資源を最大限活用することだ。自宅療養や宿泊療養もうまく活用し、訪問や往診、リモート診療、自宅で酸素の投与ができる仕組み、それに重症化のリスクを見極める体制などが必要になる。重症化のリスクは医師の判断が必要なので、保健所や病院、地域のクリニックの医師が協力できるような体制を作ることが重要であると考えている」と話していました。

また、百貨店などの商業施設でクラスターが発生していることについて「感染がかなり市中に広がり、ウイルスの密度が高まっている状況なので、混雑するような場面で近距離で会話すると感染リスクが高まる。マスクをつけていても混雑は避け、飛まつの対策が重要で、店舗の状況にもよるが、飲食店などと同様に換気をよくしたり、アクリル板や二酸化炭素モニターを活用するなど感染対策やガイドラインを徹底してもらうことが重要だ。また、訪問する人もなるべく少人数で短時間にして、混雑を避けてほしい」と話しました。

そして、脇田座長は「オリンピックが開かれていて高揚感があり、みんなで見たいという気持ちもわかるが、東京都を含む首都圏ではかなりのスピードで感染が拡大していて、医療のひっ迫も進んでいるため、そうしたことをなるべく理解して行動していただくことが重要だ」と話していました。