タイ 感染者1日2万人超 過去最多 規制強化も歯止めかからず

タイでは、新型コロナウイルスの1日の感染者が2万人を超え、これまでで最も多くなりました。夜間の外出が原則禁止されるなど、厳しい規制が続いていますが、感染の拡大に歯止めがかかっていません。

タイでは、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の感染が拡大し、4日発表された新たな感染者は2万200人と初めて2万人を超え、死者も188人と、いずれもこれまでで最も多くなりました。

7月中旬から首都バンコクとその周辺で夜間の外出が原則禁止されるなど厳しい規制が続き、3日からは対象地域も拡大されましたが、感染拡大に歯止めがかかっていません。

タイの保健省の担当者は「感染が収束する見通しが立たない中、規制を続けていても生活が苦しい人が外出して働くなど、市民の協力が得られなくなっている」と指摘しています。

バンコク周辺では、医療体制がひっ迫していて、タイ政府は、軽症や無症状の人は、自宅で療養することができるとしていますが、自宅で療養する人からは医薬品などの支援が届いていないという声もあがっています。

こうした中、日系企業の中には、駐在員やその家族を一時的に帰国させる動きも出ていて、影響が広がっています。

経済成長率を下方修正 通貨バーツを売る動きも

タイでは感染拡大に歯止めがかからないことで、経済の先行きへの懸念も高まり、中央銀行は、プラス1.8%としていたことしの経済成長率について、4日発表した最新の見通しで、プラス0.7%に下方修正しました。

感染の拡大と経済活動の制限によって、主力の観光業や個人消費への影響がさらに大きくなるとみられるためだとしています。

タイは、去年1年間の成長率がマイナス6.1%と記録的な落ち込みとなり、その後の回復も大きく遅れています。

さらに、外国為替市場では、経済の先行きへの懸念が高まっていることで、タイの通貨・バーツを売る動きが急速に広がっています。

3日は、1ドル=33バーツと去年4月以来のバーツ安の水準となり、この1か月余りで、バーツはドルに対しておよそ5%値下がりしています。

金融市場では、景気が回復するアメリカが今後、大規模な金融緩和策の転換に向かえば、景気回復が遅れる新興国での一段の通貨安や資金流出につながるおそれも指摘されていて、新興国経済の先行きに警戒感が出ています。