オリンピック 亡命希望ベラルーシ選手 ポーランドが受け入れへ

東京オリンピックに出場するために来日し、1日に第三国への亡命を希望したベラルーシの陸上選手について、ポーランドが亡命を受け入れることが関係者への取材で分かりました。選手はNHKの取材に対し「SNSへの書き込みをめぐり政権批判だとして強制送還されそうになった」と話しています。

亡命を希望しているのは、陸上女子のベラルーシ代表、クリスチナ・チマノウスカヤ選手(24)です。

チマノウスカヤ選手は1日夜、東京の羽田空港で警察官などに対し「自分の国に帰りたくない」としてヨーロッパの別の国に亡命したいという希望を伝え、大会の組織委員会や関係機関が本人から話を聞くなどして詳しい状況を確認し、調整を進めていました。

関係者によりますと、チマノウスカヤ選手はベラルーシの隣国のポーランドへの亡命を希望し、ポーランドも受け入れることを明らかにしたということです。

東京 目黒区のポーランド大使館には、午後5時ごろ、本人を乗せた車が到着し、チマノウスカヤ選手は歩いて建物の中に入りました。

チマノウスカヤ選手はこれまでのNHKの取材に対して「もともと予定していなかった種目にほかの選手に代わって出場するよう指示され、不満をSNSに書き込んだところ『政権批判だ』として強制送還されそうになった」などと話しています。

ベラルーシではルカシェンコ政権に批判的な人物への弾圧が強まっていて、欧米などからは批判が高まっています。

ベラルーシのオリンピック委員会 コメントを掲載

チマノウスカヤ選手の処遇について、ベラルーシのオリンピック委員会はホームページ上にコメントを掲載しています。

この中では「陸上のナショナルチームのコーチ陣は、チマノウスカヤ選手の感情や心理状態に関する医師のアドバイスに基づき、大会から退かせることを決めた。その結果、200メートルと4×400メートルリレーの予選には参加しないことになった」と説明しています。

ポーランド政府 ベラルーシ反政権派を支援する姿勢示す

ポーランドはベラルーシの西の隣国で、ベラルーシのルカシェンコ政権の弾圧から逃れる反政権派の人々やジャーナリストらが集まり、情報を発信する場にもなっています。

ポーランド政府は、こうした人々を積極的に支援する姿勢を示しています。

去年8月に行われたベラルーシの大統領選挙のあと、不正を訴えて抗議活動を行う市民と治安部隊が衝突するなどして死傷者が出る事態になった際には、ポーランドのモラウィエツキ首相が「ベラルーシの当局は改革を求める市民に武力を行使した。自由を求める人々を支持すべきだ」と述べて、ルカシェンコ政権を批判しています。

今回の事態を受けて、ポーランドのプシダチ外務次官はみずからのツイッターで、チマノウスカヤ選手がポーランドへの亡命を希望すれば受け入れる用意があると表明していました。

ルカシェンコ大統領「メダルない なぜ勝てないのか」

ベラルーシのルカシェンコ大統領は先月29日、政府内の会議で「私たちにはメダルがない。なぜ勝てないのか」と述べ、ベラルーシがその時点でメダルをとれていないと不満を表していました。

そして「アフリカの国々などの選手はオリンピックで、勝てばすべてを手に入れられるが、負ければすべてを失う」と述べ、ベラルーシの代表団にはハングリー精神がないと指摘したうえで「責任を問われるべきはまずコーチにある」としったしていました。

ルカシェンコ大統領は、自国のオリンピック委員会の会長にみずからの長男を就任させていて、今回の大統領の発言と合わせて、コーチなどにはメダル獲得へのプレッシャーがあったとみられます。

一方、ベラルーシの国営通信社は、チマノウスカヤ選手について「非常識な行為をとり、国民の間に怒りを引き起こしている」として、国民の声だとするインタビューを動画で掲載しています。

この中で議員だという男性は「ベラルーシの人たちやアスリートへの裏切りだ。政治的に計画された行動だった可能性も否定できない」と述べています。

また、陸上競技の関係者も「競技の発展につながらず、国のイメージを高めることにもなっていない」と述べていて、ルカシェンコ政権としては、国民に向けて、チマノウスカヤ選手の行為が国家への裏切りだと印象づけたいねらいがあるとみられます。

反政権派 チハノフスカヤ氏 政権側の対応を非難

陸上女子のベラルーシ代表、チマノウスカヤ選手が第三国への亡命を希望していることに関連して、ベラルーシのルカシェンコ大統領の退陣を求めて抗議活動を続ける反政権派のチハノフスカヤ氏は、SNSの「テレグラム」で「オリンピックに送り出されたベラルーシの選手は誰であれ、勇気を出してことばを発すれば人質になる可能性があることを示している」と書き込み政権側の対応を非難しました。

一方、「チマノウスカヤ選手は今は安全な状況だ」としたうえで「IOC=国際オリンピック委員会と日本の当局の迅速な対応や本人に亡命の受け入れを申し出てくれた国々に感謝する」と述べました。