オリンピック出場 ベラルーシの陸上選手 第三国への亡命希望

東京オリンピックに出場しているベラルーシの陸上選手が、東京の羽田空港で第三国への亡命を希望したことが分かり、関係機関が本人から話を聞くなどして確認を進めています。
NHKの取材に対し、選手は「SNSへの書き込みをめぐり政権批判だとして強制送還されそうになった」と話しています。

関係者によりますと、第三国への亡命を希望しているのは、陸上女子のベラルーシ代表 クリスチナ・チマノウスカヤ選手(24)です。

チマノウスカヤ選手は、1日夜、東京の羽田空港で警察官などに対し「自分の国に帰りたくない」と話し、ヨーロッパの別の国に亡命したいという希望を伝えたということです。

空港内の交番などで関係機関の担当者が本人から話を聞くなどして、詳しいいきさつの確認を進めています。

旧ソビエトのベラルーシでは、ルカシェンコ政権に批判的な人物への弾圧が強まっていて、亡命を支援する団体も選手本人と連絡を取っているということです。

チマノウスカヤ選手はNHKの取材に対して「もともと予定していなかった種目にほかの選手に代わって出場するよう指示され、不満をSNSに書き込んだところ、『政権批判だ』として強制送還されそうになった」などと話しています。

チマノウスカヤ選手「助けを求めている」

チマノウスカヤ選手は7月30日、自身のインスタグラムに「ヘッドコーチなどが事前に私の状態を知ろうとしたり、400メートルを走る準備ができているか、尋ねたりすることもありませんでした。上に立つ人たちは、アスリートの私たちに敬意を払い、時には私たちの意見を聞く必要もあると思います」と書き込み、一方的に予定していなかった種目に出場するよう指示されたと不満をあらわにしていました。

また、チマノウスカヤ選手は1日、動画でメッセージを発信し「私は、国際オリンピック委員会に助けを求めています。私に圧力がかけられ、同意もなく国外に連れ出そうとしています。国際オリンピック委員会はこのことに関わってほしい」と訴えていました。

一方、ベラルーシの国営通信社はチマノウスカヤ選手について「選手の感情的、心理的な状態に関して医師が判断した結果、出場をとりやめることになった」と選手が亡命を希望したことには触れず、短く伝えています。

IOC チマノウスカヤ選手と直接話「協力していきたい」

IOC=国際オリンピック委員会のマーク・アダムス広報責任者は、2日の記者会見で「IOCと東京大会組織委員会は、ベラルーシのクリスチナ・チマノウスカヤ選手と直接話をした」と述べました。

そのうえで「彼女は羽田空港で保護され、組織委員会の職員が同行した。彼女からは『安全だ』ということばをもらった。現在は空港のホテルに滞在していて引き続き彼女とのやり取りを続け、彼女が求めるものが手に入るよう協力していきたい」という声明を発表しました。

そしてIOCとして、ベラルーシのオリンピック委員会に対して、書面での報告を求めていることを明らかにしました。

さらに「私たちは、今後について数日以内に決めるため、彼女や当局とのやり取りを続ける」としています。

加藤官房長官「関係機関と連携し適切に対応」

加藤官房長官は2日午前の記者会見で、選手は安全な状況に置かれているとしたうえで、政府として関係機関と連携して適切に対応する考えを示しました。

この中で、加藤官房長官は「きのう、ベラルーシの陸上選手である、クリスチナ・チマノウスカヤ氏が亡命希望をみずから公表したと承知している。現在、組織委員会、IOC=国際オリンピック委員会などの関係機関で、本人の意向確認などの対応が行われていると聞いている」と述べました。

そのうえで「現時点で把握している状況としては、チマノウスカヤ氏は、関係機関の協力を得て安全な状況に置かれているということで、今後、関係機関と協議されると承知している。政府としても、関係機関と連携して適切な対応を図っていく」と述べました。

ベラルーシの政権は

ベラルーシは30年前の1991年、ソビエト連邦の崩壊に伴い独立しました。

現在、国を率いるルカシェンコ大統領は1994年以来、27年にわたって大統領を務めています。

ルカシェンコ大統領は、政府や議会の主要なポストをみずからに近い人物で固めつつ、メディアへの統制も強めて反政権派を徹底的に弾圧するなどし、その強権的な統治手法に対して、欧米から「ヨーロッパ最後の独裁者」と批判されてきました。

去年8月に行われた大統領選挙では、ルカシェンコ氏の6回目の当選が確実になったことを受けて、市民が選挙の不正を訴えて大規模な抗議活動を展開し、治安部隊と衝突するなどして、死傷者が出る事態となりました。

ルカシェンコ大統領に対して国際社会からの批判が強まる中、ことし5月には、政権側がベラルーシの領空を通過していた国際線の旅客機を強制的に着陸させ、反政権派のジャーナリストを拘束したため、アメリカやEU=ヨーロッパ連合などは、ルカシェンコ大統領の側近などに新たな制裁措置を行うなど圧力を強めています。

これに対してルカシェンコ大統領は、後ろ盾となっているロシアのプーチン大統領と会談を重ねて支持を取り付け、欧米の批判に対抗する強気の姿勢を崩していません。