アストラゼネカワクチン 公的接種に追加 40歳未満は原則対象外

新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、厚生労働省はアストラゼネカのワクチンを公的な予防接種に加えることを決めました。極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘されていることを踏まえ40歳未満には原則、接種しない方針です。

アストラゼネカのワクチンはことし5月に承認されましたが、極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘されていることから、公的な予防接種には使用されてきませんでした。

厚生労働省は対象年齢などを慎重に検討してきましたが、原則40歳未満に接種しないことを条件に公的な予防接種に使うことを30日、専門家の分科会に提案しました。

理由として、イギリスでも40歳未満にはほかのワクチンを推奨したうえで公的な接種に使用していることに加え、接種が進んでいない40代や50代の重症者が東京都を中心に増えていることや国内の関連学会が6月、治療の手引を公開したことなどを挙げています。

ファイザーやモデルナのワクチンの成分にアレルギーがある人が接種を希望する場合や、ほかのワクチンの流通が停止した場合など必要性がある場合は40歳未満への使用を認め今後、国内外の状況を踏まえて対象年齢を再度検討するということです。

分科会では「選択できるワクチンが増えることは重要だ」とか「ネガティブな印象が先行しているがイギリスで接種されている実績があり、期待できる」などと賛成する意見が出て提案は了承されました。

一方、自治体側の一部の委員からは「ほかのワクチンよりリスクが高いと住民の接種に使う気持ちになれない」とか、「急にワクチンが変わると住民に伝えるのが難しい」といった意見もあり、今後どう接種を進めるか、国が自治体の意見を聴いたうえで検討していくことになりました。

国が公的な接種への使用を提案した背景には、全国の自治体に希望するワクチンが届かず、接種の予約を停止する動きが相次いでいることなどもあるとみられます。

また、分科会では、モデルナのワクチンについて、公的な接種の対象年齢を現在の18歳以上から12歳以上に拡大することも提案され、了承されました。

海外でも年齢制限 国によって対応ばらつく

アストラゼネカのワクチンをめぐっては、海外でも接種を推奨する年齢を制限する動きなどが見られます。

このうちイギリスは、40歳未満の人に対してアストラゼネカ以外のワクチンを接種するよう勧めています。

カナダでは、30歳以上の人に限って早い接種を望む場合に推奨するほか、フランスでは55歳以上に限って接種を勧めるなど国によって対応にばらつきが出ています。

いずれの保健当局も、接種を受けることで重症化や死亡を防げるためほとんどの人では接種による利益がリスクを上回るとしています。

一方、オーストリアやクロアチア、台湾やインドなどは年齢制限などを設けていません。

日本政府 海外に3000万回分めど 無償提供の方針

厚生労働省によりますと、アストラゼネカとは年内に1億2000万回分のワクチンの供給を受ける契約を結んでいます。

日本政府は国内でのワクチンの使用を見合わせていた一方、ワクチンを分配する国際的な枠組み「COVAXファシリティ」などを通じて海外に3000万回分をめどに無償で提供する方針を表明しています。

厚生労働省によりますと、これまでに台湾におよそ237万回分、ベトナムにおよそ300万回分、インドネシアにおよそ200万回分、マレーシアにおよそ100万回分、フィリピンにおよそ100万回分、タイにおよそ100万回分が提供されたということです。

このほか、イランやバングラデシュなど15か国に対して合わせておよそ1100万回分を提供することにしています。

厚労省「接種による利益 リスクを上回る」

厚生労働省によりますと、イギリスでは、アストラゼネカのワクチンの接種後に血小板の減少を伴う血栓症が疑われる症状が先月14日までに合わせて411件報告されています。

年齢が判明している人では、
▽18歳から29歳が7%
▽30代が13%
▽40代が27%
▽50代が25%
▽60代が15%
▽70代が10%
▽80代以上が2%となっています。

1回目の接種後は100万回あたり14.8件、2回目では100万回あたり1.9件の割合で報告されているということです。

また、死亡した人は71人で、症状が報告された人の17%、接種100万回あたりでおよそ1.5人の割合でした。

一方海外の研究では、2回の接種を受けた場合発症を予防する効果は、
▽イギリスで確認された変異ウイルスの「アルファ株」に対して75%
▽インドで確認された「デルタ株」に対して67%だったということです。

また、入院を予防する効果は2回の接種を受けた場合、
▽「アルファ株」で86%
▽「デルタ株」で92%
確認されたということです。

厚生労働省は「血栓症が疑われる症状が報告される頻度は低く、死亡する人も少ない。接種による利益がリスクを上回っている」としています。