五輪選手たちと交流の飲食店 コロナ感染急拡大で複雑な思い

東京オリンピックで活躍する選手たちと交流を持ってきた東京 板橋区の飲食店では、新型コロナの感染が急速に拡大し、通常の営業に戻れる見通しが立たない中、複雑な気持ちでオリンピックを見つめています。

板橋区の「板橋イナリ通り商店街」では、代表選手などの練習施設「ナショナルトレーニングセンター」が近くにあることから、訪れた選手たちと交流を持ってきました。
このうち、競泳や体操などの代表選手が食事に訪れた飲食店には28日、競泳の女子200メートル個人メドレーで今大会2つ目の金メダルを獲得した大橋悠依選手など、多くの選手たちの寄せ書きや写真が飾られています。
店長の越前由記久さん(53)は、選手たちの活躍についてはうれしく思う一方で、都内の感染者数が連日のように過去最多を更新し、通常営業に戻れる見通しが立たない中、複雑な気持ちでオリンピックを見つめています。

店では東京都の要請に従い、緊急事態宣言を受けて酒類の提供をやめ、午後8時には閉店していて、売り上げは感染拡大前と比べておよそ8割減り、28日も夜の営業時間には来店した客2人とテイクアウトの弁当2人分の注文があっただけでした。

越前さんは「選手が金メダルを取るのはうれしいのですが、夕方に感染者数の発表を見て現実に引き戻されます。売り上げはかつてない厳しさで、お酒の提供でも営業時間でも、どこからでもいいから徐々に元に戻してほしいです」と話しています。
また、53年前に店を立ち上げた父親の武さん(80)は、少しでも客に安心してもらおうと、ワクチン接種を終えたことを知らせるバッジを身につけて店にたっています。

武さんは、過去に経験のない新型コロナの影響に不安を募らせていて「これまでも売り上げが厳しいときは休みを減らしたり出前をやったりと、工夫して何とか乗り越えてきましたが、今は何をやってもだめです。なかなか元のようには戻らないと思いますし、先の見通しが立たないことが不安でしかたありません。お店に来てくれた選手も頑張っていて応援したいのですが、オリンピックも生活があって初めて成り立つと思うので、何と言っていいか分かりません」と複雑な胸の内を明かしました。