東京の感染者 2週間後に一日5000人超か 来月末には1万人超も…

29日は3865人の感染が確認され、3日連続で過去最多を更新した東京都。今後の感染状況はどうなるのか…?
専門家がシミュレーションしたところ、今のペースで感染が拡大し続けた場合、新規感染者の数は約2週間後の来月中旬には一日5000人を超えるという結果となりました。

東京都では29日、過去最多となる3865人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。

27日は2848人、28日は3177人の感染が確認されましたが29日はさらに多く、3日連続で過去最多を更新しました。また、3865人は1週間前の木曜日の倍近くに増えていて、これまでにないスピードで感染が拡大しています。

東京 今後の感染状況は…?

東京都の感染状況は今後どうなるのか。京都大学の西浦博教授らのグループがシミュレーションを行い、今のペースで感染が拡大し続けた場合、都内の一日の新規感染者の数は来月中旬には5000人を超えるという結果となりました。

試算. <新規感染者数>来月11日に5000人超

これは西浦教授が28日、厚生労働省の専門家会合で示したものです。

試算では、東京都の一日の新規感染者数を前の週の同じ曜日と比較して現状の水準を参考に1.4倍のペースで増え続けると仮定したところ、東京都では来月11日には5000人を超える一日5027人という結果になりました。その後も同じペースが続くと来月26日には1日1万643人に上る計算になったということです。

試算. <入院患者数>来月9日に6000人超

また、今月21日までのデータをもとに東京都の入院患者などの今後の推移についても試算を行いました。

試算では、1人が何人に感染を広げるかを示す実効再生産数を変異ウイルスの感染力の強さなどを考慮して今の時点で「1.5」と仮定し、今後、実効再生産数が10%しか減らなかったとすると東京都の入院患者数は来月9日の時点で6000人を上回るという計算になりました。

さらに、今後の実効再生産数がことし4月に出された緊急事態宣言の際と同じ程度の効果を想定して30%減少したとしても、入院患者数は減少傾向にまではならず来月10日には4000人を超える結果になったということです。

グループでは今の感染拡大のペースが続くと40代や50代の人たちの入院が増えて重症者病床より先に一般病床がひっ迫し、新型コロナ以外の医療との両立が難しくなるおそれがあると指摘しています。
西浦教授は「感染者数の増え方はデルタ株の影響で加速していて今までにない厳しさとなっている。現状、緊急事態宣言の効果も見えておらず早急に対策が必要な状況だ。ワクチンを接種していてもふだん会わない人とは会わないようにするなど、一人一人が協力してほしい」と話しています。

「経験ない爆発的感染拡大に向かう」東京都モニタリング会議

東京都のモニタリング会議が開かれ、専門家は「経験したことのない爆発的な感染拡大に向かっている」と指摘したうえで「入院患者はおよそ1か月で倍増しており、医療提供体制のひっ迫が始まっている」として強い危機感を示しました。
会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は28日時点でおよそ1936人とこの1か月たらずで4倍となり、専門家は「これまで経験したことのない爆発的な感染拡大に向かっている」と指摘しました。

そして今の増加比が継続した場合、7日間平均は
▽1週間後の来月4日には今の1.53倍のおよそ2962人にのぼると予測しました。

さらに
▽2週間後の来月11日には今の2.34倍のおよそ4532人にのぼると予測し
「医療提供体制が危機にひんするので、早急に回避しなければならない」と述べ、強い危機感を示しました。

専門家「尋常ではない増え方だ」

モニタリング会議のあと、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は記者団に対し「新規陽性者数の7日間平均は2000人でこれまで見たことがなく、経験したことがないような尋常ではない増え方だ」と述べました。

そのうえで「これだけの多くの患者が出ると自宅で療養する人もすごい数が出てくる。その中で医療がまわらなくなってくると、すぐに入院できない人や診断がついていない人が急に苦しくなったときに入院できないといったことにもなりかねない。そうならないように、とにかく増加比が伸びていくことをすぐに抑えなければいけない」と述べました。

小池知事「ワクチン行き渡るまでが勝負」

小池知事は記者団に対し「ワクチン接種は道半ばという状況で特に若い方々にはまだ行きわたっていない。無防備でたたかうにはデルタ株は手ごわいという危機意識を共有したい」と述べました。

そのうえで「引き続き、人の流れの抑制と基本的な対策の徹底をお願いしたい。ワクチンが行き渡るまでが勝負だ」と述べました。

さらに小池知事は「対策の的はだんだん絞られてきている。50代の方にはワクチン接種をできるだけ早くしていただくと同時に、若い方々にはマスク着用の徹底など基本的な部分を守っていただくとともに、ワクチンを打っていただけるような体制を整えていく。これまでのいろいろな経験や知見などを重ねながらコロナ対策を進めていく最後の夏にしたいので、しっかり受け止めていただきたい」と呼びかけました。

一方、記者団が「開催中のオリンピックが『人の流れを減らさなければならない』と理解してもらうことの妨げになっていないか」と質問したのに対し、小池知事は「オリンピックは逆だと思う。ステイホームの率をとても上げている。テレビの視聴率が如実に示している。人流も下がっており、さらに協力いただきたい」と述べました。

分析. 繁華街 人出減少も前回“宣言”時より幅小さい

モニタリング会議では緊急事態宣言が出されてから都内の繁華街では人出が減少しているものの、前回・3回目の宣言の時より減少の幅は小さいとして、さらに人出を抑える必要があると報告されました。

東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、自宅や職場以外で都内7か所の繁華街に15分以上とどまっていた人の数を「滞留人口」として分析しました。

それによりますと今回・4回目の緊急事態宣言が出されて2週目の今月18日からの1週間では、宣言に入る前の週と比べて昼間は13.7%、夜間は18.9%、それぞれ減少しました。

しかし減少の幅は昼間、夜間ともに、ことし4月から先月までの前回・3回目の宣言の時の40%程度にとどまっています。

特に、西田センター長が「感染リスクが高まる」としている午後10時から午前0時までの深夜の時間帯の減少幅は前回の宣言時が48.5%だったのに対し、今回は12.7%でした。

西田センター長は「感染力の強いデルタ株の影響を考慮すると、少なくとも前回の宣言の時と同じ程度の水準を目指してさらに人流を抑制していく必要がある」と指摘しました。

分析. 感染状況

このほか、モニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

新たな感染の確認は28日時点で7日間平均が1936.4人となり、前回・今月20日時点の1170.0人よりおよそ766人増加しました。

専門家は「大きく増加し予測を超える感染状況だ。先月30日のおよそ503人から、わずか4週間足らずで2000人近くに及んだ」と指摘しました。増加比は前の週のおよそ153%で前回よりも4ポイント上昇しました。

専門家は「2週間後の来月11日の予測値のおよそ4532人は医療提供体制が危機にひんするので早急に回避しなければならない」と述べ、強い危機感を示しました。
今月26日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は
▽20代が33.3%と最も多く4週連続で30%を超えました。
次いで
▽30代が21.3%
▽40代が16%
▽50代が11.5%
▽10代が8.1%
▽10歳未満が4.7%
▽60代が3%
▽70代が1.3%
▽80代が0.6%
▽90代以上が0.2%でした。

先月中旬以降50代以下で全体の90%以上を占めていて、専門家は「新規陽性者の年齢構成は若年・中年層中心へと変化した。あらゆる世代が感染リスクがあるという意識をより一層強く持つよう啓発する必要がある」と指摘しています。

一方、65歳以上の高齢者は今週は309人で前の週より23人増えていて増加傾向にあります。

分析. 感染経路がわかっている人

感染経路がわかっている人では
▽同居する人からの感染が55.8%と最も多く
次いで
▽職場が15.4%
▽保育園や学校それに高齢者施設や病院といった施設での感染が9.3%
▽会食は6.1%でした。

今週は施設での感染が前の週から1.5ポイント増え、保育園や幼稚園、大学などでの感染が多く報告されていて、年代別では
▽10歳未満が前の週から0.5ポイント減って26.9%
▽10代では0.4ポイント減って19.3%でした。
また、会食での感染は10歳未満を除くすべての世代で発生しています。

専門家は「会食による感染は職場や家庭内での感染のきっかけとなることがある。夏休みやオリンピック観戦などでの飲み会はオンラインを活用するなどの工夫が求められる。家や借りた会場に集まっての飲み会やテレビ観戦はマスクを外す機会が多く、感染のリスクが高いことを繰り返し啓発する必要がある」と述べました。

分析. 感染経路がわからない人

「感染の広がりを反映する指標」とされる感染経路がわからない人の7日間平均は28日時点で1246人で、前の週からおよそ525人増え7週連続して増加しています。また、増加比は28日時点で157.4%と前回から7.7ポイント上昇し8週連続で増加しました。

専門家は「第3波のピーク直前と同じ速度で感染が拡大している。さらなる拡大を防ぐためには人流を十分に減少させ、これまで以上に徹底的に感染防止対策を実行する必要がある」と警戒を呼びかけました。
感染経路がわからない人の割合はおよそ63%で前の週と比べて横ばいでした。

20代から60代の中では感染経路がわからない人の割合は60%を超えていて、特に行動が活発な20代と30代では70%前後と高い割合になっています。

専門家は「保健所の積極的疫学調査でいつ、どこで感染したのかわからないとする陽性者が増加していて、保健所業務への多大な負荷を軽減する支援策が必要だ」と指摘しています。

分析. 入院患者

検査の陽性率の7日間平均は28日時点で16.9%となり、前の週の今月20日時点の10.2%から大きく上昇しました。すでに年明けの第3波の時の最も高かった値を超えていて、さらに上昇しています。

入院患者は28日時点で2995人でした。今月20日の時点より607人増加しました。また、先月下旬からのおよそ1か月で倍増しています。

専門家は「医療機関はおよそ1年半にわたり新型コロナの患者の治療に追われるとともに ワクチン接種にも多くの人材を充てていて、疲弊している」と訴えました。
入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ88%と継続して上昇傾向にあるとしています。

年代別にみると
▽40代と50代が合わせておよそ42%
▽30代以下も全体のおよそ36%を占めています。

専門家は「若年、中年層を中心とした入院患者が急増していて、遅れてこの年齢層の重症患者が増加することが予測される」と指摘しました。

分析. 入院調整

また、保健所から都の入院調整本部への依頼は28日時点で270件で、新規陽性者数の急増に伴い非常に高い水準で推移しています。

先週の4連休中は入院の調整が極めて厳しく翌日以降に繰り越し自宅待機を余儀なくされる事例が多数生じたとして、専門家は「今後さらに難航することが予想される」としています。

分析. 重症患者

また、都の基準で集計した28日時点の重症患者は今月20日時点より20人増えて80人で、専門家は「大きく増加した」と指摘しました。男女別では男性65人、女性15人です。年代別では50代が30人と最も多く次いで40代が17人、60代が15人、70代が14人、30代が3人、20代が1人でした。

専門家は「重症患者のおよそ83%は60代以下だ。今週は20代と30代でも新たな重症例が発生している。肥満や喫煙歴がある人は若年であっても重症化リスクが高い」と指摘しました。

このほか、人工呼吸器かECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は28日時点で260人で今月20日時点より57人増えました。

分析. 療養状況

28日時点で陽性となった人の療養状況を今月20日時点と比べると
▽自宅で療養している人は3691人多い7348人と倍以上増えたほか
▽都が確保したホテルなどで療養している人は60人増えて1829人でした。

また
▽医療機関に入院するかホテルや自宅で療養するか調整中の人は2501人多い4172人と、およそ2.5倍に増えました。

療養状況を示す4つすべての項目が増加していて、入院患者を含めた「療養が必要な人」全体の数は1万6344人となりました。これは今月20日時点の9485人の1.7倍余りの増加です。

専門家は「著しく増加し、極めて高い水準にある」と指摘しました。

一方、今月26日までの1週間で新型コロナウイルスに感染した7人が亡くなりました。このうち4人は70代以上でした。