オリンピック バドミントン 桃田賢斗 予選敗退 響いた実戦不足

交通事故による大けがや新型コロナの感染など、いくつもの困難を乗り越えて大会に臨んだ、日本バドミントンのエース、桃田賢斗選手は、予選リーグ敗退というまさかの結末で、東京オリンピックのコートを去ることになりました。
その要因には、大会前にみずから語っていた実戦経験の不足がありました。

本来であればオリンピックイヤーの幕開けとなるはずだった2020年1月、桃田選手は遠征先のマレーシアで大きな交通事故に巻き込まれ、右目の下、眼窩(か)底骨を折る大けがを負いました。

桃田選手の緻密なプレーを支える生命線ともいえる右目のけがは全治3か月の診断で、懸命のリハビリが続きました。

ようやく試合に臨めるようになったところで、こんどは新型コロナの影響で大会は軒並み中止や延期になりました。

さらにことし1月にはみずからが感染し、結局、事故のあとの1年7か月で出場できた大会はわずかに2つにとどまりました。

いわば“ぶっつけ本番”に近い形で東京オリンピックに臨むことなった桃田選手は、大会前の取材でめずらしく不安を口にしていました。

「実戦経験を積めないのが、難しかった。もしメダルにすら届かなかったとしても、コートの中であきらめない姿勢は見せたい」

今まで見たことがないほど不安げな表情に

コートの上では絶対王者であり続けた桃田選手がずっと感じてきた「実戦経験の不足」。それが28日の試合で現実のものとなりました。

相手は世界38位でこれまで一回も負けたことがない選手です。
桃田選手は立ち上がりから力強いスマッシュを打って先制のポイントを奪うと、続けざまにサイドラインの際にショットを決めて、順調な立ち上がりを見せました。

しかし、5ポイントをリードしたあと、流れが変わります。
相手が一転して積極的に強力なスマッシュを打ちはじめ、その勢いに押され始めます。

それでも代表コーチをはじめ周囲はさほど気にする様子を見せませんでした。
これまでも桃田選手の試合ではこういう場面がたびたびあったからです。
試合の中で相手が一時的にペースを握っても、桃田選手が鉄壁のディフェンスで相手のスマッシュを拾い続け、途中で得意の「ヘアピンショット」などを織り交ぜて流れを取り戻すというシーンを何回も見てきました。
コート上にはいつも自信みなぎる桃田選手の姿がありました。

しかし、この日は違いました。
相手のスマッシュを拾いきれず「ヘアピンショット」でもミスを連発し、まさかの10連続失点で逆転され、第1ゲームを失います。
コートを見ると桃田選手の表情は、今まで見たことがないほど不安げでした。

このとき、桃田選手が話していた「実戦経験の不足」ということばが何度も頭をよぎりました。

第2ゲームに入っても桃田選手の表情は変わらず、最後まで流れを取り戻すことができないまま、桃田選手の東京オリンピックは終わりました。

「本当にいろいろなことがあり 皆さんに感謝」

桃田選手は試合後「本当にいろいろなことがあり、それでも多くの人に支えられて、こうやって元気に戻ってきて、コートの中でプレーができた。満足のいく結果は出せなかったが、本当に皆さんに感謝したい」と、これまでに見たことのない悔しそうな表情で涙をこらえながら話しました。

そのことばの先には「“絶対王者”桃田賢斗は必ず戻ってくる」そう信じて支えてきた、たくさんのファンや関係者がいます。

桃田選手の競技人生はこれで終わりではありません。
これだけ悔しい思いをした敗戦もまた、桃田選手が経験した貴重な実戦です。
次そしてまた次と実戦を重ねて再び自信を取り戻したとき、桃田選手がどんなプレーを見せてくれるのか。
負けたその瞬間から次へのスタートは切られています。