オリンピック 柔道 新井千鶴が金メダル 女子70キロ級

東京オリンピック柔道女子70キロ級で、新井千鶴選手が金メダルを獲得しました。日本はこの階級で、前回のリオデジャネイロ大会に続く金メダルとなりました。

オリンピック初出場の新井選手は初戦の2回戦、延長1分半に大外刈りで一本勝ちしました。

続く準々決勝は開始3分、体落としで技あり、そのまま「縦四方固め」で技ありを奪って、「合わせ技一本」で勝ち、準決勝に進みました。

準決勝では、ことし5月の国際大会で敗れているロシアオリンピック委員会のマヂナ・タイマゾワ選手と対戦しました。

新井選手は内股や寝技などで攻め続けましたが、相手に巧みに体を使われて防がれ決めきれず、この試合も延長戦にもつれ込みました。
新井選手は疲れの見えてきた相手に対し大外刈りや関節技などをねらって攻め続け、延長12分41秒、絞め技で一本勝ちしました。

新井選手は、今大会、男女を通じて最も長い、16分41秒の激闘を制して決勝に進みました。

決勝はオーストリアのミヒャエラ・ポレレス選手と対戦しました。

新井選手が序盤から技をかけ続け、開始1分すぎに小外刈りで技ありを奪います。
さらにその後も消極的な相手に対して、足技や寝技を次々に仕掛けて、そのまま優勢勝ちし金メダルを獲得しました。

勝利の瞬間に拳を高く突き上げ笑顔を見せた新井選手は、畳を降りたあとコーチと抱き合って涙を流していました。

新井選手は、初めてのオリンピックで金メダルを獲得しました。

日本はこの階級で、前回のリオデジャネイロ大会に続く金メダルとなりました。
この結果、日本の柔道は、今大会、競技初日から5日連続で金メダルです。

柔道女子70キロ級は、銀メダルがオーストリアのミヒャエラ・ポレレス選手、銅メダルがロシアオリンピック委員会のマヂナ・タイマゾワ選手とオランダのサンネ・ファンダイク選手でした。

新井「うれしい そのひと言」

金メダルを獲得した新井選手は「うれしいです。そのひと言です」と率直な喜びを語ったうえで「何度もくじけそうになったのですが、自分の信念を崩さずにここまでやってきて、結果が出てよかったです」と話しました。

そして、支えてきてくれた家族に対して「本当に家族が1番の味方で、どんなときも私に『強い』と言い続けてくれたので、両親や兄をはじめ、たくさんの方に感謝の気持ちでいっぱいです」と話していました。

笑顔で写真 そのあと涙「いろいろな感情が急に出てきました」

表彰式に臨んだ新井千鶴選手は、軽く一礼して表彰台に上りました。
プレゼンターから金メダルを受け取って、みずから首にかけた新井選手は、その後、笑顔で写真撮影に応じていました。

このあとインタビューで新井選手は「うれしいです。これが欲しかった」と心境を話しました。

この直後から涙があふれ「うれしいです。金メダルが取れて本当にうれしいのと、ほっとした気持ちと、いろいろな感情が急に出てきました」とことばを絞り出しました。

そして「喜んでくれる日本チームの皆さんの顔を見ることができて、よけいにほっとしました」と話していました。

また今大会、男女を通じて最も長い激闘となった準決勝については「準決勝の相手は簡単には投げられないなと思いましたし、受けもすごくうまい選手なのでなかなか決め所がないなと思っていました。長期戦になっても気持ちでは下がらないように、そういう気持ちで臨みました」と振り返っていました。

世界選手権 2連覇の実力者

世界選手権を2連覇した実力者の新井選手。海外勢から徹底したマークを受けて苦しんだ数年のスランプを乗り越えて、この階級で日本勢2大会連続の金メダルを獲得しました。

前回、2016年のリオデジャネイロオリンピック。新井選手は金メダルを獲得した田知本遙選手との代表争いで及ばず、出場を逃しました。
当時を振り返り「オリンピックに出るという覚悟を持てていなかった」と、みずから自覚の足りなさを要因にあげました。

その後、田知本選手が引退。新井選手は、この階級では海外勢にも勝るパワーと、長い手足を生かした内股、さらに大外刈りを持ち味に2017年の世界選手権を制覇。
翌年には2連覇を果たし、オリンピックの代表争いを大きくリードしました。

同時に海外勢からは、徹底してマークされることになりました。
左手で相手の襟、右手で袖を持つ左組みで、オーソドックスな柔道を展開する新井選手に対して、国際大会では相手が袖を持たせない戦略を取ることが多くなり、おととし、2019年の世界選手権では、3回戦で敗れるなど勝てない時期が続きました。

こうした状況に対して、新井選手も組み手のパターンを増やすなど対策を練りますが、試合での結果になかなか結び付かず「解決策もわからず、精神がぐちゃぐちゃ。自分のメンタルがおかしくなりかけた」と明かすほど、深刻な状況に陥りました。

それでも、ことし5月に行われたロシアでの国際大会のあとは吹っ切れた様子で取材に答えました。この大会で優勝はできませんでしたが、十分な組み手とならない場合でも、相手との間合いを詰めながら前に出て、勇気を持って技をかける戦略に手応えをえたからでした。

こうして復活への明るい兆しが見えてきた新井選手は、不振の理由を心理面と分析し積み重ねてきたものを信じて戦う覚悟を決めました。

「結局は気持ち。こうやって勝ちたいという軸をぶらさずに貫き通すこと。それが揺らぐと体勢も不安定になる」

迎えた初めてのオリンピックの舞台。徹底して組み手を嫌われても、ぶれずに前に出て攻める柔道を貫き、準決勝では16分を超える激闘を制しました。

新井選手は決勝でも勝ちきり、確かな技術に加え、精神的な成長も見せて海外勢の包囲網を突破し、オリンピックチャンピオンの称号を手にしました。