全国の新規感染者 1週間前比 1.54倍 厚労省コロナ専門家会合

東京都だけでなく全国でも1日の感染者数の発表が過去最多となる中、新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれました。「これまでに経験したことのない感染拡大となっている」と分析し、特に東京の医療の状況について「このままの状況が続けば通常であれば助かる命も助からない状況になることも強く懸念される」と危機感を示しました。

今夜、開かれた専門家会合では、全国の感染状況について「東京を中心とする首都圏だけでなく、全国の多くの地域で新規感染者数が増加傾向となっており、これまでに経験したことのない感染拡大となっている」と分析しました。

地域別に見ると、最も感染状況が深刻な東京都では、夜間の人出は緩やかな減少にとどまっていて急速な感染拡大が続き、20代から40代が感染者の多くを占めています。

そして、本来であれば入院すべきであるものの自宅待機を余儀なくされている人や一気に多くの量の酸素を必要とする患者も増えているとしています。

また、東京の周辺の埼玉県、千葉県、神奈川県でも感染者が急速に増加し、夜間の人出も緩やかな減少にとどまっていることから当面は感染拡大が続くと見込まれるとしています。

緊急事態宣言が出ている沖縄県も急速な感染再拡大になっていて20代や30代のほか高齢者の増加も見られている一方、人出は大幅に減少し、感染者数の減少につながるか注視が必要だとしています。

関西でも大阪府などで、急速な感染拡大が続き、夜間の人出も多い水準が続いていることから感染拡大が続くことが懸念されるとしています。

専門家会合は、緊急事態宣言などによる人出の減少が限定的で、感染力が強い変異ウイルス、「デルタ株」への置き換わりも進む中、これまでにない急速な感染拡大になっていると指摘しています。

この中で、東京ではすでに一般医療への影響が起きているとして「このままの状況が続けば通常であれば助かる命も助からない状況になることも強く懸念される」としたほか、埼玉や千葉、神奈川など、感染が拡大している地域でも同様の状況が起きることが強く懸念されるとしています。

さらに「こうした危機感を行政と市民が共有できていないことが最大の課題だ」と危機感を示しました。

そのうえで、求められる対策について、マスクや手洗い人との距離の確保などの基本的な感染対策のほか、テレワークの徹底、少しでも体調が悪い場合や軽い症状でも早めの受診、積極的な検査につなげることが必要だとしたほか、各自治体は、感染拡大が一定期間続くことを前提に、宿泊療養施設の確保や自宅療養環境の体制整備を含めた医療体制の確保を進めておくことが必要だと強調しました。

会合で示された資料によりますと、
新規感染者数は、27日までの1週間では前の週と比べて、
▽全国では1.54倍と大きく増加していて、
緊急事態宣言が出されている
▽東京都では1.49倍、
▽沖縄県でも2.15倍と増加するペースが急激に上がっています。

また、首都圏の各県では、
▽埼玉県で1.58倍、
▽千葉県で1.48倍、
▽神奈川県で1.37倍と急増が続いています。

関西でも同様の傾向で、
▽大阪府で1.52倍、
▽京都府で1.71倍、
▽兵庫県で1.46倍などとなっています。

感染は各地で急拡大していて、
▽石川県で2.18倍、
▽福岡県で2.20倍などとなっています。
現在の感染状況を人口10万人当たりの直近1週間の感染者数で見ると、
▽東京都が88.63人、
▽沖縄県が82.59人、
▽神奈川県が45.44人、
▽埼玉県が42.57人、
▽千葉県が39.51人、
▽石川県が38.05人、
▽大阪府が36.33人、
さらに、
▽全国でも28.05人と
感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えています。

また感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」は、東京都ではすでに感染全体のおよそ77%を占めるに至ったと推定されていて、会合では感染の急拡大を止めるため、人出を大きく下げる新たな対策の必要性や、急速に拡大する「デルタ株」の広がりを前提とした対策などについて議論が行われました。

田村厚労相「デルタ株の影響 かなり大きい」

田村厚生労働大臣は、専門家会合の冒頭「東京はきょう感染者数が3000人を超え、大きく伸びている。首都圏の3県でも急激な伸びで、ここは、しっかりと受け止めていかなければならない。同時に、大阪でも急激な再拡大が起こっていて、全国的にかなりのエリアで感染者の増加が進んでいる」と述べました。

そのうえで「東京では、緊急事態措置を出してから2週間以上たち、夜の滞在人口は若干減ってはいる。ただ、この感染の伸びを見ると『デルタ株』の影響がかなり大きい。今までは人流がおさまれば、ある程度、感染の伸びが弱まることはあったが、そうではない状況だ。緊急事態措置を発令中であるにもかかわらず、この感染状況だということをどうしていくべきか、きたんのない意見をいただきたい」と述べました。

尾身会長「社会全体で危機感を共有することが大事」

厚生労働省の専門家会合のあと、政府の分科会の尾身茂会長が報道陣の取材に答え「きょうの会合では、危機感が必ずしも社会全体に共有されていないという、そういった、私たちの危機感がかなり強く共有された。きょうの会合は、それに尽きると思う」と話しました。

東京都で3000人を超える新規感染者数が確認されたことについて「緊急事態宣言が出てから、すでに2週間がたっていて、本来なら感染者数をもっと下げなければいけない状況だ。ここを逃すと、今後もずるずると感染者数が増えていってしまう。なるべく短期間にしっかりした危機感を社会全体で共有することが大事だと思う」と話していました。

脇田座長「市民に協力してもらえるようなメッセージを」

厚生労働省の専門家会合のあと会見した脇田隆字座長は「東京都は緊急事態宣言が出されてから2週間経過しているが、その効果が出ているとは言い難い。人流は減少しているが、前回の宣言時と比べると緩やかで減少幅も小さく、きょうの会合では、このままでは、なかなか感染者数を減らすまでには至らないのではという議論があった。今の状況は、単純に感染者数が増えているだけではなく、すでに一般医療への影響が始まっていて危機的な状況だということが十分に市民に共有されていないことが一番の問題だ。市民に協力してもらえるようなメッセージを発信することが重要だ」と話していました。

また、東京都以外の首都圏の3県に緊急事態宣言を出す必要があるかどうかについては「東京都ほどではないがかなりの感染拡大スピードで、過去最多の感染者数が報告されているという状況だ。東京都と千葉県、埼玉県、神奈川県の1都3県は生活圏を共有しているので同様の対策をしないといけない。ただ、仮に宣言が出されても東京都と同様になかなか効果が出てこない可能性も高いので、危機感を共有することが必要だと考えている」と話しています。