“攻めて攻めて競り勝つ” なでしこジャパン準々決勝へ

東京オリンピック、サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」は、予選リーグ第3戦でチリとの試合に臨み、持ち味の高い技術を生かした攻撃を徹底して繰り返して競り勝ち、準々決勝進出を決めました。

東京オリンピックのサッカー女子は、予選リーグ2試合を終えて1敗1引き分けで、最終戦のチリ戦に臨みました。

負ければ大会が終わる崖っぷちの試合で、高倉麻子監督は、2戦目のイギリス戦から先発を5人入れ替えて、フォワードには2戦目で出番のなかった菅澤優衣香選手を起用しました。

前半はその菅澤選手がポストプレーで攻撃の起点となり、エースの岩渕真奈選手などが立て続けにチャンスを作りました。攻守の切り替えも素早く、ボールを奪われたあとは複数の選手でしつこくプレッシャーをかけて、相手に自由にプレーさせず、流れを渡しませんでした。

後半に攻撃的な選手を相次いで投入しながらも無得点の時間が続きましたが、それでも選手たちは、持ち味の高い技術を生かしたパスワークを駆使した、自分たちのサッカーで攻め続けました。

その攻撃が実を結んだのが後半32分でした。ペナルティーエリア内でボールを受けた岩渕選手のパスに、途中出場の田中選手が抜け出し、待望の先制点を獲得しました。
「キーパーが見えていたので、冷静にボールを浮かせた」と田中選手が振り返った、この1点を守り切って、今大会初勝利をあげたなでしこジャパン。

グループ3位ながら、わずかなチャンスをつかみとって、準々決勝へ進みました。

ただ、この試合では課題も浮き彫りになりました。

試合を通して日本が打ったシュートの数は21。しかし、得点はこの1点だけにとどまりました。
強豪との試合で勝利を収めるには、数少ないチャンスをものにする決定力が求められます。

準々決勝の相手は高倉監督が「今、最も調子がいいチーム」と警戒感を示すスウェーデン。予選リーグでは世界ランキング1位のアメリカに圧勝しました。
チリ戦のような積極的な守備と細かくパスをつなぐ得意の攻撃を貫いたうえで、そこにさらに高い精度が加われば、勝機は見いだせるはずです。

決勝ゴール導いた岩渕 応えた田中

チリ戦での決勝ゴールを決めたのはフォワードの田中選手。
そしてラストパスを出したのはエースの岩渕選手。
この1点には、東京オリンピックへの2人の知られざる思いが込められていました。

田中選手は4年連続で女子の国内リーグ得点王に輝くなど、日本代表での活躍が期待されていましたが、おととしのワールドカップフランス大会では最終メンバー入りを逃しました。

「東京オリンピックには何としても出場したい」
田中選手はその一心で、国内リーグを5連覇していた所属チームからの移籍を決意し、当時、岩渕選手が所属していたINAC神戸レオネッサに移籍しました。

「エースのぶちさん(岩渕選手)との連係を高めることができれば」
岩渕選手から効果的にパスを引き出し、得点につなげられる実力を養って「日本代表で活躍できる選手になる」と考えました。

この田中選手の心意気を買ったのは、ほかでもない岩渕選手でした。
先月のメキシコとの強化試合で田中選手へアシストした際には、自分がゴールを決めたとき以上の笑顔を見せたのが印象的でした。

その後、2人がそろって東京オリンピックのメンバーに選ばれた直後に尋ねると、岩渕選手は「美南(田中選手)がどんな思いで移籍を決めたか分かっていたから、結果を出せてうれしかった」と目に涙を浮かべて明かしました。
2人の活躍が期待されたオリンピック。しかし、この大舞台に厳しい現実を突きつけられます。

21日の予選リーグ第1戦。岩渕選手から送り出されたペナルティーキックを田中選手は失敗。チームは勝利に届かず引き分けました。
それでも田中選手は試合後「決められなかったのは自分の実力。自分はもう背負うことしかできない。残りの試合を全力でやりたい」と、涙と悔しさをこらえて必死に前を向きました。

そして迎えた27日の予選リーグ第3戦。後半から途中出場した田中選手は、交代早々にシュートを打つなど躍動感のあるプレーを続けました。

そして32分。「絶対に自分を生かしてくれると信じていた」と岩渕選手からのラストパスを受けると、ゴールキーパーの動きを冷静に見透かしたうえで、シュートの軌道を決めました。

屈辱の代表落選から2年。日本代表への思いと鍛えあげた技術が詰まったゴールは、日本の2大会ぶりの準々決勝進出へとつながりました。

岩渕選手は「いいところに美南が走ってくれた。決めてくれてよかった」と、このときも涙を浮かべながら笑顔を見せました。
田中選手も「ぶちさんは自分を見てくれている。これからも粘り強く成長した姿を見せたい」と話しました。

導いた岩渕選手とそれに応えた田中選手。
2人の活躍が続けば、日本の2大会ぶりのメダルも見えてくるのではないでしょうか。