オリンピック コロナ不安で組織委用意宿泊先変更のバス会社も

東京オリンピックでは選手や関係者を輸送するため全国のバス会社から運転手が集まり、多くが大会組織委員会が用意した施設に宿泊していますが、施設の新型コロナウイルス対策に不安があるという声を受けて宿泊先を変えたバス会社があることが分かりました。

今回の大会では選手や関係者を競技場などに輸送するため、全国およそ600社のバス会社の延べ6万人以上の運転手が携わる見通しで、運転手の確保にあたった組織委員会が都内や近郊の研修施設などを手配し、多くの運転手が宿泊しています。

このうち、10人以上の運転手を派遣している西日本のバス会社が宿泊先をみずから用意した別のビジネスホテルに変えたことが分かりました。

会社によりますと当初、用意された都内の施設は洗面所やトイレ、浴室がない部屋が多く共同で利用せざるをえないことや、密の状況が生まれやすいことなど感染対策への不安の声が運転手から相次いだということです。

会社によりますと、組織委員会から運営を委託された旅行会社に感染対策の充実やトイレや風呂を備えた部屋への変更を求めたものの、全員に対応するのは難しいと回答されたということです。

運転手を別のビジネスホテルに宿泊させるために必要となるおよそ100万円の費用は会社が負担し、オリンピックの輸送業務にはこれまでどおりあたるということです。

このバス会社の会長は「海外の関係者を運ぶため厳しい感染対策が必要だが、施設に不安を感じざるを得なかった。コロナ禍でも仕事があることはありがたいが、運転手の感染対策が第一だ。別の宿泊先は確保できたが負担は大きい」と話しています。

組織委員会は「バスの輸送拠点への行き来のしやすさや、まとまった人数を受け入れる観点から施設を選定した。バス会社にはホテルではないことを説明し理解したうえでの利用をお願いしている。期間中、快適に過ごしてもらえるよう共用設備の毎日の清掃など適切な運営を行っていく」としています。

別の会社の運転手からも不安の声

西日本のバス会社の運転手が宿泊していた都内の施設をめぐっては、別の会社のバスの運転手からも感染対策への不安の声が上がっていました。

このうち関西地方から派遣されている男性運転手は今月19日、NHKの取材に対し「シャワールーム、トイレ、洗面所、冷蔵庫などすべてが共用で時間が重なると多くの人が並んでいて、密になると感じる」と話していました。

そのうえで「バスの利用者にマスクをつけていない人もいて輸送時にも感染のリスクがある中で、運転手が多く宿泊する施設で設備が共有になっているのは感染のリスクが大きい」と不安を語っていました。

そして「オリンピックをやる以上、安心安全な運転を心がけ世界の関係者によかったと思われるよう全力を尽くすつもりだ。ただ、心配する家族に『感染対策がしっかりしているから安心してほしい』と言って出てきたのに、実際の対応は不十分だ」と話していました。

また、関東地方から派遣されている別の男性運転手も今月18日、NHKの取材に対し「施設にある大浴場では運転手が10人程度利用し密になることもある。コロナで騒いでいるなかにこうしたところに泊まるのもどうかと思う。感染への不安から安全運転にも影響を及ぼしかねない。個室にトイレや浴室を完備するビジネスホテルなど別に施設を用意してほしい」と話していました。

そして「大会に協力しているのにこの対応はひどいと感じる。宿舎がこうした状況だと自分が感染する可能性もあり、家族に迷惑をかけてしまうのではと複雑な心境だ」と話していました。