東京オリンピック 靴磨き職人 人出減り「三重苦の状態」

21日から競技が始まった東京オリンピック。東京駅で半世紀にわたって路上で靴磨きをしている男性は、暑さとコロナ禍、そして多くの人が自宅で観戦するオリンピックに「三重苦です」と苦しい状況を漏らしていました。

東京駅にある東京オリンピックの開会式までを示すカウントダウンの掲示板。

あと2日と書かれた掲示板の周辺では、多くの人が記念に写真に収める姿が見られました。
そこから数十メートル離れた路上には都から許可を受けた最後の路上の靴磨きという男性がいて、炎天下の21日も客用の日傘を準備して路上に座っていました。

「オリンピック、始まりますね」と言葉をかけたところ、「いつからだっけ? 来週からじゃなかった?」と話していて、暑さの厳しい時期はもともと客足が遠のく傾向にあるのに加えて、緊急事態宣言の中、外出する人が減っているうえ、これからオリンピックを自宅で観戦する人が多くなるため出歩く人がさらに減り「三重苦の状態です」と漏らしていました。

多い時は1日に30人ほどの靴を磨いていましたが、今は10人も訪れないということです。
10年近く、週に1回のペースで靴磨きに訪れているという会社員の男性も「会社ではオリンピック期間中は出勤する人を7割削減するのでこれからはなかなか来られなくなります」と話していました。
今、70歳の靴磨きの男性は、1964年の前回の東京オリンピックのときは中学生で、近所でテレビがあったのが自分の家くらいだったので、近所の人たちが家を訪れて、オリンピック観戦をした思い出があるそうです。

男性は「当時はオリンピックで景気もよく、自分と同じように靴磨きをしていた両親は、それなりにもうかっていて近所でいちばん最初にテレビを買ったんです。今回はコロナ禍と、人出のないオリンピックですから、客足も遠のいていて、ボディーブローのように、この仕事にはこたえています」と話していました。