「第3波はるかに超える危機的状況も」東京都モニタリング会議

東京都のモニタリング会議で、専門家は第3波を上回るペースで感染が急拡大していると指摘したうえで「増加比がさらに上昇すると2週間を待たずに第3波をはるかに超える危機的な感染状況になる」と述べ、強い懸念を示しました。

週に1度、開かれている都のモニタリング会議は21日が55回目で、東京オリンピックの開幕前、最後の会議です。

このなかで、専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は、20日時点でおよそ1170人でこの1週間で1.5倍になり、専門家は、「第3波を上回るペースで感染が急拡大していて、拡大の速度が上がり続けている」と説明しました。

そして、今の増加比が継続した場合、7日間平均は、
▽7月27日にはおよそ1743人、
▽8月3日にはおよそ2598人となり、
第3波でのピークでこれまでで最も多い1月のおよそ1816人を大きく上回るとしています。

専門家は、「変異ウイルスへの置き換わりが進み、増加比がさらに上昇すると感染拡大が急速に進み、2週間を待たずに第3波をはるかに超える危機的な感染状況になる」と述べ、強い懸念を示しました。

一方、専門家は20日時点で、
▽入院患者は2388人とおよそ1か月で倍増したほか、
▽重症の患者が60人と高い値で推移していると説明しました。

そして、「新規陽性者が増加し続ければ、医療提供体制がひっ迫の危機に直面する。入院医療、宿泊および自宅療養の危機管理体制の準備が急務だ」と指摘しました。

専門家「医療側は恐怖感」

モニタリング会議のあと東京都医師会の猪口正孝副会長は医療提供体制について、「第3波を超えるような感染状況になってくると、入院患者数も第3波を簡単に超える。そのときには、重症患者があとから遅れて増えてくる」と述べました。

そのうえで「中等症の患者をみている医師と重症患者をみている医師は重なっているため、重症患者も増えると非常に厳しくなる。医療側は、第3波の前の去年12月半ばをイメージするくらいの恐怖感を持っている」と述べ、医療のひっ迫に強い危機感を示しました。

小池知事「事態はより切迫 強い危機感を共有」

モニタリング会議のあと、小池知事は記者団に対し、「きょうから多くの学校で夏休みを迎え、あすからは4連休で、オリンピックも始まる。例年だと旅行や帰省のシーズンだが、感染力の強い変異株に置き換わりつつあるという局面で、事態がより切迫する中で、これまで以上に強い危機感を皆さんと共有しなければならない」と述べました。

そのうえで「『危機だ、危機だ』と聞き飽きたかもしれないが、極めて重要な状況にある。皆さんがどういう行動をとり、人の流れがどうなるのかが重要で、この夏を最後のステイホームにしていきたい」と呼びかけました。

また、21日のモニタリング会議では、4回目の緊急事態宣言に入ってから、都内の繁華街の滞留人口が減少しているという専門家の分析が示されました。

これについて小池知事は「雰囲気的には『もう協力しない』というイメージが報道されているように私は受け止めているが、実際は皆さんに協力いただいている」と述べました。

そして、「デルタ株の影響などを考慮すると、少なくとも前回の緊急事態宣言時と同じように夜間滞留人口を減少させる必要がある。酒についても飲食店に協力いただき、利用客にもいろいろと自粛いただいており、そういったこともこれからの数字にあらわれてくると思う」と述べました。
また小池知事は、モデルナのワクチンについて20日、田村厚生労働大臣が、早ければ来年はじめから、追加で5000万回分の供給を受ける契約を結んだと明らかにしたことについて、「来年のごちそうよりも今のごはんがほしいというのが率直なところだ」と述べ、自治体に対して速やかに十分な量のワクチンを供給するよう引き続き国に要望していく考えを示しました。

インドで確認「L452R」変異ウイルス陽性率拡大も

インドで確認された「L452R」の変異があるウイルスかどうかを調べるスクリーニング検査の結果、今月11日までの1週間で都内の陽性率は前の週より9ポイント上昇して30.5%となりました。

4週連続で上昇しています。

また、今月18日までの1週間では速報値ながら陽性率は39%を超えていて、さらに拡大しています。

専門家は、イギリスで見つかった「N501Y」の変異があるウイルスの陽性率の推移と比較すると、「L452R」の変異があるウイルスは、3週間ほど早いペースで30%を超えたと指摘しました。

そのうえで「陽性率の上昇ペースから見てもL452Rの変異があるウイルスが市中に広がりつつある。このウイルスへの置き換わりが急速に進んでいる状況のため引き続き十分警戒する必要がある」と指摘しました。

都内のコロナ病床 5967床に

都内で新型コロナウイルスの入院患者数が増加する中、東京都は中等症の患者向けの病床を85床新たに確保し、都内全体の新型コロナの病床は5967床になったと明らかにしました。

これで中等症向けの病床は5575床に増え、重症患者向けは変わらず392床となっています。
21日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

専門家の分析 感染状況は

新たな感染の確認は、20日時点で7日間平均が1170.0人となり、前回・今月14日時点の817.1人よりおよそ352人増加しました。

専門家は、「先月21日の387人から、わずか1か月で1000人の大台を超えていて第3波を上回るペースで感染が急拡大している」と指摘しています。

増加比は前の週のおよそ149%で、前回よりも18ポイント上昇しました。

今月19日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、20代が31.9%で、3週連続で30%を超え、最も多くなりました。

次いで30代が20.8%、40代が17.0%、50代が11.7%、10代が7.6%、10歳未満が4.5%、60代が3.8%、70代が1.5%、80代が1.0%、90代以上が0.2%でした。

先月以降、50代以下で全体のおよそ90%を占めています。

一方、65歳以上の高齢者は、今週は286人で前の週より73人増えましたが、割合は0.4ポイント減って3.7%でした。

感染経路がわかっている人では、
▽同居する人からの感染が54.1%と最も多く、
次いで
▽職場が18.7%、
▽保育園や学校、それに高齢者施設や病院といった施設での感染が7.8%、
▽会食は6.2%でした。

今週は、施設での感染が前の週から1.6ポイント増え、特に、保育園や小学校、塾などでの感染が複数報告され、年代別では
▽10歳未満が前の週から4.7ポイント増えて27.4%、
▽10代では6.4ポイント増えて19.7%でした。

また、会食での感染は今週も60代以下のそれぞれの世代で発生していて、専門家は「友人や同僚との会食による感染は職場や家庭内での感染のきっかけとなることがある。連休や夏休み、それにオリンピック観戦などでの飲み会は、オンラインを活用するなどの工夫が求められる。特に、ふだん会っていない人との会食は避ける必要がある」と指摘しています。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は20日時点で720.7人で、前の週からおよそ218人増え、6週連続して増加しています。

また、増加比は、20日時点で149.7%と前回から18.9ポイント上昇し7週連続して増加しました。

専門家は「第3波のピーク直前のころと同じ速度で感染が拡大している。さらなる拡大を防ぐためにはこれまで以上に徹底的に人の流れの増加を抑制し、感染防止対策を実行する必要がある」と警戒を呼びかけました。

感染経路がわからない人の割合はおよそ62%で前の週と比べて横ばいでした。

年代別では、20代から60代で50%を超えていて、特に、行動が活発な20代と30代では60%台後半と高く、専門家は、「保健所の積極的疫学調査でいつ、どこで感染したのか分からないとする陽性者が増加している。速やかに濃厚接触者の検査を行う体制の強化が必要である」と指摘しています。

入院患者 約1か月で倍増

検査の陽性率の7日間平均は、20日時点で10.2%となり、前の週の今月14日時点から3ポイント上昇しました。

10%を超えるのは、半年前の1月20日以来です。

入院患者は、20日時点で2388人と今月14日の時点より365人増加しました。

専門家は、「およそ1か月で倍増した」と指摘したうえで、「今後、さらなる人流の増加や変異株の影響などで新規陽性者が増加し続ければ、医療提供体制がひっ迫の危機に直面する」と指摘しています。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ86%を占めていて、専門家は、「先月上旬の65%前後から上昇傾向だ」と分析しています。

年代別にみると、
▽40代と50代がそれぞれ全体のおよそ21%、
▽30代以下も全体のおよそ34%を占めています。

専門家は「先月以降、若年、中年層を中心とした新規陽性者数の急速な増加に伴い、入院患者も急増している。この状況が続けば若年・中年層の中等症患者が増加し、遅れて重症患者が増加する可能性がある」と指摘しました。

そのうえで、「人との接触の機会を減らし、基本的な対策を徹底し、ワクチン接種は予防効果が期待されることを啓発する必要がある」としています。

都の基準で集計した20日時点の重症患者は、今月14日時点より6人増えて60人で、専門家は「高い値で推移している」と指摘しました。

男女別では、男性48人、女性12人です。

また、年代別では、60代が17人と最も多く、次いで、50代が16人、70代が14人、40代が10人、30代が2人、80代が1人でした。

専門家は「重症患者の75%は60代以下だ。今週は10歳未満と30代でも新たな重症例が発生している。肥満や喫煙歴がある人は若年であっても重症化リスクが高い」と指摘しました。

このほか、人工呼吸器かECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は20日時点で203人で、今月14日時点より20人増えました。

また、今月19日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した14人が亡くなりました。

このうち10人は70代以上でした。

「自宅療養患者が非常に増えている」強い危機感

モニタリング会議では、20日時点で陽性となった人の療養状況が報告されました。

今月14日時点と比べると、
▽自宅で療養している人は1816人増えて3657人と、倍近くに増えています。

また、
▽都が確保したホテルなどで療養している人は73人増えて1769人、
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は367人増えて1671人でした。

入院患者数も含めた療養状況を示す4つすべての項目が増加していて、これらをあわせた「療養が必要な人」全体の数は9485人で、今月14日時点の6864人のおよそ1.4倍になりました。

モニタリング会議に出席した東京都医師会の猪口正孝副会長は「入院だけでなく、ホテルもなかなか厳しい状況になってきているほか、自宅で療養する患者が非常に増えてきている。宿泊療養、自宅療養を全部、医療として見ていかなければいけない状況だ」と述べ、強い危機感を示しました。

「強い警戒感で緊密に連携し対応」官房長官

加藤官房長官は午後の記者会見で「東京都のモニタリング会議では、専門家から、新規陽性者数の増加比が継続すると第3波のピーク時を大きく上回るとの機械的な試算も紹介されたと承知している。東京都とは、感染状況や医療提供体制のほか、すでに実施している対策の効果なども含め、認識の共有化を図っており、引き続き、強い警戒感を持って、感染状況などを注視し、専門家の意見も踏まえつつ、緊密に連携して対応していく」と述べました。